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『令和のコメ騒動』(1)コメ高騰の歴史に学ぶ、今後の見通し
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日本人は海外より高いコメを買っている。根本原因は買占め業者の存在!食料自給率と安全保障 第10回2024年はコメ価格の高騰に注目が集まった。総務省「小売物価統計調査」によると、「コシヒカリ5kg」の2024年12月の店頭小売価格(東京都区部)は4,018円であった。前年同月(2,422円)比で1.68倍と、2024年産の出荷が始まっても高止まりの傾向が続く。この傾向はいつまで続くのだろうか。
2024年の『令和のコメ騒動』の発生経緯を読み解く
2022年2月のロシア・ウクライナ紛争の勃発以降、国際的な穀物価格ははっきりと上昇傾向に入った。食料価格が全般に切り上げていく中で、コメの価格だけは2023年夏ごろまでむしろ低位安定傾向を示しており、「国内自給ほぼ100%を達成しているからこその、価格安定だ」という声も聞かれていた。
この地合いが変わったのが、2023年の秋以降である。2023年産のコメの作況指数は101と平年並みだったものの、北陸東北地方を中心に、酷暑の影響でコメの品質が大きく低下した。先行きのコメ不足の懸念が発生し始め、徐々に小売価格の上昇傾向が明らかになり、2024年の春以降、メディアで報道されることも増えてきた。
決定打となったのは、気象庁による2024年8月8日の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表と、お盆前後の台風被害の頻発である。これらの報道をきっかけに、買いだめと店頭での品切れの連鎖が始まり、コメ価格が急上昇した。コメ価格決定の背景となる需給バランスを確認しよう。2023年産の日本全国の計画供給量は約670万トンであったのに対し、前述のとおり作況指数は101と計画どおりの生産量が確保されていた。ただし、この計画自体、対前年比10万トン減(約1.5%減)の供給量であった。一方で、農水省発表によれば2023年7月から2024年6月までの1年間のコメ需要量は702万トンであり、前年比1.6%増(11万トン増)と約10年ぶりに需要増に転じたという。一部では「インバウンド効果だ」などの意見もあったが、農水省によればその影響は3万トン程度に過ぎないという。前述した酷暑による品質低下への対応として、コメ卸が精米時の歩留まり低下を見越して多めの調達を行ったことが、コメ需要増の主因と見られている。
問題は、その後である。秋以降、2024年産が出回れば価格は安定するかと思われたが、供給が安定してきた9月以降も、コメ価格は低下傾向を見せていない。むしろ、8月の2,871円(前年同月比1.23倍/前月比1.07倍)に対して、9月3,285円(前年同月比1.42倍/前月比1.14倍)、10月3,787円(前年同月比1.60倍/前月比1.15倍)、11月3,985円(前年同月比1.65倍/前月比1.05倍)と価格上昇に拍車がかかった。12月は4,018円(前年同月比1.68倍/前月比1.01倍)と、対前月比こそ落ち着く傾向をようやく見せたものの、価格の高止まり傾向は変わっていない。2度のコメ価格高騰に学ぶ、今後の推移と中期見通し
過去30年間でコメ価格高騰が大きく社会問題化したのは、1993年(平成5年)と2003年(平成15年)の2回だ。特に1993年は前年比で30%以上供給が減り(約1,050万トンから約780万トンまで減少)、減少量が当時の備蓄量を大きく上回った結果、消費者小売価格は前年比1.23倍となった。「平成の米騒動」と言われ、タイ米の緊急輸入を余儀なくされるなど大きな社会問題となった。2003年も、冷夏の影響で前年比約15%、110万トンの供給減となった(890万トンが780万トンに減少)。当時の政府米在庫量約150万トンに迫る減少量で、2004年の消費者小売価格は前年比1.14倍となった。
2回のコメ価格高騰のその後だが、1994年の生産量は約1,200万トンまで大幅に改善した。2004年もおおむね2002年並みの生産を確保した。結果、1994年・2004年ともに小売価格はコメ価格が高騰した前年(1992年と2002年)並みの水準に沈静化した。
過去2回と比べ、今回のコメ価格高騰の背景にある需給ギャップはそれほど大きくはない。2023年産の作況指数は平年並みだったが、酷暑による品質低下の影響で、700万トン程度の需要に対し約30万トン程度の供給不足が発生したと見られる。不足量も在庫量に比べて3分の1程度でしかない。このような状況にもかかわらず、消費者小売価格は、年間平均で前年比1.27倍となった。
過去2回の経験を踏まえると、今後の生産量が安定的に推移すれば、いずれ価格は沈静化していくと予想できる。2024年産は作況指数、品質ともに問題なく、需要量は十分満たす生産量が全体としては確保されている。2025年産の生産も需要量を十分満たす水準で推移し、流通の混乱が沈静化していけば、2025年の秋以降には高騰前の価格水準に落ち着いてくる可能性が高いと考えてよいだろう。価格安定に向けた「必要条件」とは?
ただし、2025年後半にコメ価格が低下・安定するためには、絶対的に必要な条件がある。それは、前述の文章のうちの「2025年産の生産も需要量を十分満たす水準で推移していけば」という部分である。当たり前のことだが、市場で取引される商品の価格は、需要と供給のバランスで決定される。「足元の高価格がこのまま維持されるのか」「それとも過去2回のように元の価格に戻るのか」については、今後の需給バランスがどういう水準で実現されるのか次第である。
さらに言えば、その見通しを検証する前に、そもそも、コメの価格はどのように決定されているのか、その実態を確認しておく必要がある。もし、「市場で取引されている」と言えないのであれば「需給バランスで価格が決定する」とは言えない。コメについては、一般的に「なんとなく、コメって普通の市場取引ではないんじゃないか」という印象を持たれている場合も多いように推察される。次回以降のコラムでは、この点について具体的に検証することとしたい。
なお、本稿脱稿後、江藤拓農林水産大臣が1月24日の閣議後記者会見で、政府が備蓄するコメを放出し、全国農業協同組合連合会(全農)などの集荷業者を対象に販売できるように運用を見直す方針を表明した。昨年夏ごろからの価格高騰にあわせて、一部からその必要性を指摘する声もあったが、政府・農水省はその必要性を否定してきた。ここにきての方針転換である。次回以降のコラムでは、なぜ、これまで備蓄米放出に踏みこまなかったのか、現時点での備蓄米放出の意味や意義がどこにあるのか、についても考えてみることとしたい。著者紹介
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