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ウェルズ 恵子 (著
人間ではない恋人、語るなの掟、開けてはいけない部屋――幸せな人が、幸せを求めて旅に出るでしょうか。むかしむかし、死の恐怖におびえる人々が夢みて語り継いだ物語が、アニメやゲームのモチーフになって現在にも生き続けています。なぜおとぎ話はあり、私たちに何を語るのでしょう。闇と光の物語の、深層に触れてみませんか。
目 次
まえがき
序 章 おとぎ話はなぜあるのだろう
おとぎ話のモヤモヤQ&A1 なぜ主人公はいつも美しいのか
第1章 話してはならない呪い――白雪姫か竈門禰豆子か
1『ざくろ姫』――悲しみを聴いて破裂する石
2『くるみ割りのケイト』――もの言わぬもう一人の自分
3『十二羽の野鴨』――物語りによる回復
おとぎ話のモヤモヤQ&A2 主人公と悪役以外はどんな人なのかもわからないのはなぜ?
第2章 異世界から来た恋人――『美女と野獣』のルーツ
4『キューピッドとプシケー』――愛のおとぎ話の原型神話
5『太陽の東、月の西』――優しい獣に愛されて
6『美人娘イブロンカ』――悪魔を呼んでしまった娘
おとぎ話のモヤモヤQ&A3 悪役が残酷に殺されても、ハッピーエンド?
第3章 暴力と奇跡――絶望から立ち上がる
7『腕のない娘』――おとぎ話のヴァイオレットたち
8『自分の手を切った王女』――強制される悪を避けるために
9『カルカヨナ姫の物語』――おとぎ話の中の奇跡と宗教
おとぎ話のモヤモヤQ&A4 つじつまが合わなかったり途中で話がずれるのはなぜ?
第4章 開けてはいけない部屋―青ひげ公の花嫁たち
10『ミスター・フォックス』――知る恐怖にどう立ち向かうか
11『青ひげ』――好奇心は罪か
12『血だらけの部屋』――孤独と疑惑を超えて
おとぎ話のモヤモヤQ&A5 おとぎ話の語り手にとって「幸せ」とは
終 章 おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか
読書案内
あとがき
引用・参考文献一覧
ウェルズ恵子(ウェルズ・ケイコ)
詩、歌、物語(=声の文学)の研究者。立命館大学名誉教授。「声」や「音」と関係が深い文学と、文学が成り立つ環境としての文化についても広く研究。歌や物語が人間を苦しみから救う力を文学研究として立証したいと考えている。専門は英米文学・比較文化。おもな著書に、『フォークソングのアメリカ』(南雲堂)、『黒人霊歌は生きている』(岩波書店)、『魂をゆさぶる歌に出会う―アメリカ黒人文化のルーツへ』(岩波ジュニア新書)、『狼女物語』(編・解説、工作舎)など。
おとぎ話では、主人公につらい困難がふりかかります。
物語が多く語られた過去には、戦争や飢餓、感染病の流行といった恐怖や、階級制度の抑圧といった悩みが庶民の生活につきまとっていました。
その中で、現実で発散しようがない社会への不満や欲望を、物語の悪役や巧みな物語展開を通して発散していたのだと思います。
物語の残酷さには、現実と人の心の複雑さが投影されています。
その上で、主人公は必ず困難を乗り越え、物語は「めでたし、めでたし」と幸せに締め切られくくられます。
何事も思い通りになりにくかった社会では、困難を乗り越える主人公に自分を重ね合わせて、自分の中に希望の光を持たなければ生きていけなかったんのかもしれません。
古いものは1000年を超えて、変遷しつつ今日まで伝わっています。
道徳的な教訓や人間関係の悩みといった、時代を超えて共感できるリアリティ-が描かれているからだと思います。
おとぎ話には、悪役が欠かせません。
主人公をギリギリまで悩ませます。
そして、多くの物語では、悪役が退けらハッピーエンドになります。
立場を置き換えてみれば、悪役もそれなりの理由があって行動しているかもしれない。
それぞれの立場を想像すると、社会や人間心理の影が見えてきます。
現実の複雑さを知っている大人だからこそ、物語をより深く読み取れるのだと思います。
おとぎ話は、読者それぞれの読み方ができるから、面白いのです。
丁寧で読みやすい
読みやすくて、面白かったです。
昔の一般庶民が考えていたことについては、史料が残っていないという制約から、なかなか把握しにくいと聞きます。
人々が語り継いできたおとぎ話やその類話について見ていくと、当時の社会状況が庶民の視点からどう見えていたのかがわかり、面白かったです。
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