小さい頃から料理が好きで一時は「シェフ」を志したこともあったけれども、今毎日の食事を三度三度作る生活の中で常にこの「医食同源」ということばが頭の中を舞っている。
当たり前のことを言っているに過ぎないと思う。
でも、真理とはきっとそういうことなのだろうと思う。
世の中の普遍的なことって、とてつもなくシンプルでとてつもなく当たり前。
だから人間の生きる基本(真理)になるのだろうと思う。
人間は食べなきゃ生きていけない。
でも、問題は何をどう食べるのか。
毎日の食事を作るたびに考えるのは栄養のバランスと味のバランス、そして気持とのバランス。
恵子が病気になって病院に入院している時、彼女の病院食をいつも観察していた。
もちろん栄養士、調理師さんが作った食事だから栄養のバランスが取れているのは当たり前のこと。
味もそこそこ。
でも、あまりワクワク感はない。
だから、彼女が退院して以降、家での食事には「栄養のバランス」プラスこのワクワク感をどうやったら作り出せるかいつも考えている。
彼女の大好きなパンを手作りする(恵子は、パンさえあれば生きていけると言う)。
週に1回はケーキを焼く。
パンもいろいろ。
ライブ麦パンはうちの定番だが、全粒粉や米粉のパンも作る。
クロワッサンやバターロールも時々作るけどこちらはバターが多いのであまり頻繁には作らない。
その点ライ麦パンや全粒粉のパンは身体に優しい(と私は思っている)。
家庭菜園で野菜も作るけど、そんなに凝る方でもないので、「買った方が安いや」と思えばスンナリと日和ってしまう(ここら辺、農家の直営野菜も多いし)。
要は、そんなに「自然派」というわけでもないのだ。
すべては、恵子の身体のため。
自分の食事よりもまず恵子の食事だ(母親が自分の食事よりもまず子供の食事や栄養のことを考える気持に似ているかもしれない)。
恵子の身体も心もまだ完全には回復していない。
だからこそ「食事」が一番大事だと思っている。
一時は太ってもらうために栄養補助食品も医師から処方してもらったけど、それを飲むと食事が細くなるので(この食品、滅茶滅茶カロリー高いのだがまずくてチョー飲みにくい!)、それじゃあ「本末転倒だ!」とすっぱりとこの補助食品はやめた。
おかげで、彼女の食欲はどんどん増している(でも、そう簡単に太れるわけじゃない)。
基本的に歩けないし身体もあまり動かせないので身体のエネルギー代謝が悪いから食べているわりには筋肉や脂肪には転化していかない。
でも、「食欲」は大事。
人間は「食べたい」という意志さえあれば生きていかれる。
そして、その「生きたい」という意志が病気を治してくれるわけで、病気を治すのはけっして医者でもクスリでもない。
「お腹すいた」という恵子のことばが私には一番嬉しい。