今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「昭和十六年十二月八日日米英開戦の朝、寝すごした山本七平は『オイはじまったぞ戦争が』『エッどことどこが』。
若くても七平さんは知識人である。それが『まさか』と思っていたのだから他は推して知るべしである。人は来(きた)るべき戦争におびえて十五年も戦々兢々としていたというのはウソである。皆さんまさかと思って寝ていたのである。初めて空襲がある日まで東京人は寝ていたのである。」
「戦前まっくら説はインテリが言いふらした。社会主義は正義だからこれにかぶれぬインテリはなかったが逮捕されるとすぐ転向した。それをうしろめたく思って非転向の一群が米軍に釈放されると忽ち追随してまず読売新聞を乗っとった。組合をつくってそれを支配した。最も成功したのは教員組合の組織化で、いま文部省新聞社諸官庁にいる働き盛りはみなそれで育った日教組の申し子である。」
(山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)
「昭和十六年十二月八日日米英開戦の朝、寝すごした山本七平は『オイはじまったぞ戦争が』『エッどことどこが』。
若くても七平さんは知識人である。それが『まさか』と思っていたのだから他は推して知るべしである。人は来(きた)るべき戦争におびえて十五年も戦々兢々としていたというのはウソである。皆さんまさかと思って寝ていたのである。初めて空襲がある日まで東京人は寝ていたのである。」
「戦前まっくら説はインテリが言いふらした。社会主義は正義だからこれにかぶれぬインテリはなかったが逮捕されるとすぐ転向した。それをうしろめたく思って非転向の一群が米軍に釈放されると忽ち追随してまず読売新聞を乗っとった。組合をつくってそれを支配した。最も成功したのは教員組合の組織化で、いま文部省新聞社諸官庁にいる働き盛りはみなそれで育った日教組の申し子である。」
(山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)