「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2012・09・18

2012-09-18 06:00:00 | Weblog



 今日の「お気に入り」は、佐野洋子さん(1938-2010)のエッセー「死ぬ気まんまん」から。

「 根が貧乏性の私は物欲がないのである。
 食欲もないのである。
 性欲もないのである。
 もう物をふやしても困るのである。
 もう男もこりごりである。七十でこりごりと言うと笑われる。今からお前、
 男つくれるのか?はい、つくれません。
 私はガンになっても驚かなかった。
 二人に一人はガンである。
 ガンだけ威張るな。もっと大変な病気はたくさんある。リューマチとか、
 進行性筋萎縮症とか、人工透析をずっとずっとやらねばならぬ病気とか。
 ガンは治る場合も大変多い。治らなければ死ねるのである。
 皆に優しくされながら。
 私はウツ病と自律神経失調症の方がずっと苦しくつらかった。
 ウツ病は朝から死にたいが、死んではいけない病気である。自殺は周りに
 迷惑をかける。私は息子がいなかったら、ウツ病で死んでいたと思う。親
 が自殺した子供にしたくなかった。あの時は子供に命を助けてもらった。」

  (佐野洋子著「死ぬ気まんまん」光文社刊)



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