今日の「お気に入り」は、養老孟司さんの「バカの壁」から。
「そもそも教育というのは本来、自分自身が生きていることに夢を持っている教師じゃ
ないと出来ないはずです。突き詰めて言えば、『おまえたち、俺を見習え』という話な
のですから。要するに、自分を真似ろと言っているわけです。それでは自分を真似ろと
いうほど立派に生きている教師がどれだけいるのか。結局のところ、たかだか教師にな
る方法を教えられるだけじゃないのか。
そいう意味で、教育というのはなかなか矛盾した行為なのです。だから、俺を見習え
というのが無理なら、せめて、好きなことのある教師で、それが子供に伝わる、という
風にはあるべきです。
私は、学生に人間の問題しか教えない。これは面白いことだ、と自信がある。解剖は
解剖で面白いから、教えろと言われれば教えるけれど、二の次。いずれにせよ、自分が
面白いと思うことしか教えられないことははっきりしている。
解剖から学べるのは、自然の材料を使ってどうやって物を考えるかというノウハウで
す。そこの部分は講義じゃ教えられない。学問というのは、生きているもの、万物流転
するものをいかに情報という変わらないものに換えるかという作業です。それが本当の
学問です。そこの能力が、最近の学生は非常に弱い。
(中略)
情報ではなく、自然を学ばなければいけないということには、人間そのものが自然だ
という考えが前提にある。ところが、それが欠落している学生が多い。要するに、医者
なんていうのは、逆に言えば、そういうヒトそのもの、自然そのものを愛する人じゃな
きゃ出来ないのに、現状はそうではない。
東大病院で研究者が臨床へ出てくると、『一年間懲役だ』なんて言っている。要する
に、患者と接するのがとんでもない苦痛、苦役だという。これでは本末転倒です。」
かの吉田松陰先生も仰っています。
「学は人たる所以を学ぶなり」と。
学問は、人間とは何か、いかにあるべきかを知る為にするものであると。