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今日の「お気に入り」は、稲垣栄洋さんの著書「生き物の死にざま」の中に出てくる
「冬を前に現れ、冬とともに死す ”雪虫” ― ワタアブラムシ」から。
「 多くの生き物が死に絶えてしまう冬。
ところが、そんな冬の訪れを告げる風物詩として親しまれている生き物がいる。
この生き物は、井上靖(やすし)が自らの幼少時代を描いた自伝小説のタイトル
でも知られている。『しろばんば』というのが、この生き物の呼び名だ。小説
『しろばんば』では、こんな風景が描かれている。
『 いまから四十数年前のことだが、夕方になると、決まって村の子供たちは
口々に ” しろばんば、しろばんば ”と叫びながら、家の前の街道をあっちに
走ったり、こっちに走ったりしながら、夕闇のたちこめ始めた空間を綿屑でも
舞っているように浮遊している白い小さい生きものを追いかけて遊んだ。』
『しろばんば』とは白い老婆という意味である。老婆のような白髪を見せな
がら浮遊するこの生き物の正体は、ワタアブラムシというアブラムシの仲間
である。
ワタアブラムシは俗に、雪虫とも呼ばれている。まるで粉雪が舞うように飛
んでいるのでそう名付けられたのである。地方によっては『雪ん子』や『雪蛍』
などロマンチックな呼ばれ方をすることもある。
雪のように見えるワタアブラムシは、白いワックス状の物質を綿のようにまと
っている。そのため、白く見えるのだ。
ワタアブラムシが飛ぶようすは、本当に雪が舞っているように見える。ワタア
ブラムシには飛翔するための翅があるが、飛ぶ力は弱く、むしろこのふわふわし
た綿で風に乗って舞っていく。まさに、雪の妖精のようだ。」
「 堀口大學の詩の中に、春が近づいて解けゆく雪をわが身にたとえた『 老雪 』
という詩がある。
北国も弥生半ばは
雪老いて痩せたりな
つやあせて 香の失せて
わが姿さながらよ
咲く花は 見ずて消ゆ 」
( 稲垣栄洋著「生き物の死にざま」草思社刊 所収 )
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稲垣栄洋さんのご本の中では29種の生き物の生態や死にざまが紹介されており、どれも興味深いが、
就中「チョウチンアンコウ」の「進化」というか「退化」が壮絶ですさまじい。
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