「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

一陽来復 Long Good-bye 2022・12・22

2022-12-22 04:44:00 | Weblog



  冬至の 今日の「 お気に入り 」は 、最近 読み始めた 小説 の一節 、親子の対話 。
  この頃 、すっかり " Kンドル " に慣れて 、紙の本から遠ざかっている 。
  この小説も 紙の本は出てないみたい 。そんなわきゃないか 。
   主人公は 、団塊二世 ( 団塊ジュニア ) か ポスト団塊ジュニア の 、
  40代の 、「 意識低い系 」の 男性 。作家の分身 。

   ちょっと長いけど 、引用はじめ 。

  「 『 とりあえず 』という冠のついた言い回しが嫌いだ
   とりあえずビールとか 、とりあえず大学ぐらいは出ておけよ
   とか 、とりあえず三年働いてみろよ 、だったり 。とりあ
   えず結婚して 、とりあえず子どもは作れよ 。マンションの
   ローン 、養育費 、とりあえずそうだな 、貯金はだいたい 、
   これくらいはあった方がいい 。そう言って父は左手でピース
   を作った 。『 二千万円 』ということらしい 。
    ちょっと待ってくれ 。そうやって 、なんでもかんでも
   『 とりあえず 』を押しつけないでほしい
。ボクは心の
   中でそう思いながら 、苦笑いを浮かべ 、数センチだけ
   残っていたビールに口をつけるフリをした 。もう正月に
   実家に挨拶に行くのはやめようと心に誓った 。その誓い
   は 、無宗教のボクの唯一の戒律として 、ここ三年破ら
   れていない 。

    『 アンタね 、親も歳を取って先に死ぬのよ 』

    知人の結婚式に着ていく黒いフォーマルスーツが実家
   にあったはずだと電話をかけたら 、電話口に出た母が 、
   ここぞとばかりに溜まりに溜まった小言を言ってきた 。

    『 いつまでそんな朝も夜もないような仕事をつづける
   つもりなの? いまから子どもが出来たら 、アンタ 、
   子どもが成人するとき 、いくつになるか計算したこと
   ある? とりあえず最初にそういうのを計算して生きて
   いくのが 、大人になるってことでしょ 』

    『 大人にもそれぞれの生き方があんの 』

    『 県庁に入った同級生の林くん 、上の子が高校生
    だって 。この間 、東急ストアで林くんのお母さん
    にたまたま会ったら 、ビックリ 。みんなちゃんと
    してるの 。そんな生活してたら絶対病気するわよ 。
    塩分 、気にしてる? 人はね 、塩分の摂りすぎで
    病気になるの 。ミヤネ屋で言ってたんだから 。あの
    コメンテーターの人なんだっけ 、お母さんと同い歳
    くらいの大学教授 。髪の毛 、真っ黒だったわ 。そ
    したら黒酢を飲んでるんだって 、ビックリ 』

   『 了解 、黒酢は飲むよ 』

   『 黒酢の話じゃないでしょ! 昨日の報道スペシャル
    観た? 孤独死特集 。ああいうのちゃんと観なさ
    いよ 。いつまでもお母さんみたいに 、言ってく
    れる人いないわよ 。みんな 、他人のことなんて
    どうでもいいと思ってるんだから 。最後に頼れる
    のは家族なのよ 。アンタがいまのまんまだとお母
    さん 、恥ずかしくて東急ストアへ買い物にいけな
    いわ 』

     母はいつも通り 、しっちゃかめっちゃかに話を
    取っ散らかして 、嘘みたいに大きなため息を電話
    口に吹きかけてきた 。ボクは『 了解 』を繰り返
    し 、『 スーツだけ頼むよ 』と念を押した 。」

    ( 中 略 )

   「 『 普通でいい 』『 普通がいちばん 』『 普通になりなさい 』

     これは母の口癖で 、初めてはっきり意識したのは 、高校三年生
    のときの三者面談だった 。進路に何の希望も展望もなく 、担任
    の教師は『 三者面談の前にご両親と話し合って 、志望校と将来
    やりたいことを考えておくように言っておいたんですが 、息子
    さんは何もないらしく 、積極性も低くて …… 』とボヤいた 。
    母は『 普通でいいって 、うちでは昔から言っているんですけど
    ねえ 』と小突くような視線をボクのほうに向ける 。

    『 普通って 、なに? 』

     ボクは疑問に感じて 、ぶっきらぼうに訊いてみた 。母はこれ
    が模範解答よ 、と言わんばかりに淀みなく答える 。

    『 ちゃんとした大学に行って 、潰れない大きな会社に就職する
    か公務員になって 、ちゃんとした家のちゃんとした女の人と
    結婚して 、子どもを作って 、健康で幸せに暮らすこと 。いま
    挙げたのはどんな親でも子どもに願うことで 、これが普通って
    ことなの


    公務員である都立高の担任は模範解答を実現し 、持ち上げられ
   てうれしかったのか 、ニヤついていた 。

     何ひとつあのとき母が列挙した『 普通 』を実現していない 。 」

    引用おわり 。
    
    ここに出てくる「 父 」「 母 」は 、日本人の多くが 信じるつもりはないのに
    信じてしまっている 、「 拝金教 」「 受験教 / 偏差値教 」「 出世教 」三教の
    隠れ信者で 、「 旧統一教会 」や 10種類の「 特殊詐欺 」の餌食になった 人たち
    を 笑えない「 普通 」の人たち 。

    話しはどう展開するんだろうか 、・・・ 、興味津津 ( しんしん ) 。






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