「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

播州揖保川・室津みち Long Good-bye 2024・11・08

2024-11-08 06:57:00 | Weblog

 

 

  今日の「 お気に入り 」は  、司馬遼太郎さん の

 「 街道をゆく 9 」の「 播州揖保川・室津みち 」。

  今から50年ほど前の1976年の「週刊朝日」に

 連載されたもの 。

 備忘のため 、数節を抜粋して書き写す 。

  引用はじめ 。

 「 播州については『 播磨灘物語 』を書いている
  ころ 、あちこちとあるいた 。
    もっともこの小説は 、主として東播の三木や西
  播の姫路付近が舞台だったので 、歩くについて
  も 、ついそのあたりにかぎられた 。たとえば
  因幡(いなば)とのさかいにつづく宍粟(しそう)郡
  の山崎までは行っていない 。
   そのころ 、山崎に行っていないことが絶えず気
  になっていた 。」

 「 山崎は 、三木や姫路のように播州平野の真只中
  にある集落ではない 。因幡や但馬(たじま)の山
  なみが播州の宍粟郡にまで南下し 、山崎で尽き
  る 。山崎という地名は 、京都府の山崎もそうだ
  が 、おそらく山なみの先端という地勢から出た
  ものに相違ない

  『 播磨灘物語 』という小説は 、西播の土豪だっ
  た黒田官兵衛が主人公になっている 。かれは 、
  父祖以来の城として姫路城を持っていたが 、その
  後徳川期にできた姫路城からみれば 、屋根なども
  わらや板などでふき 、石垣もほとんど用いず 、
  堀を掘った土を掻きあげて土塁にした程度の 、い
  わば小屋同然といっていいほどに規模が小さかっ
  た 。
   織田勢力が播州まで伸びたときに 、播州の大小
  の勢力はこれをきらい 、毛利・本願寺方についた
  が 、官兵衛は四面ことごとく敵という政治的惨境
  のなかにあって織田方に与(くみ)し 、信長の代官
  である羽柴秀吉に属するという思いきったカード
  を選んだ 。中世末期の人としての官兵衛のおもし
  ろさはこのことにすべてを賭けて 、たじろがなか
  ったことである自分の個人的信念をあくまでも
  持しぬくという点では 、日本の歴史のなかではめ
  ずらしい存在といっていい 。かれは自分の累代の
  居城である姫路城まで秀吉にくれてしまい 、かれ
  自身は住まいがないまま 、家族と家臣をひきい 、
  姫路の北方十里の山里である山崎に移った 。自分
  の賭けに対するこれほど思いきった忠実さとか 、
  あざやかな見きわめといった感覚は 、ひとつには
  官兵衛の祖父が商人( 目薬の委託販売 )であった
  ことからも来ているといってよい 。この点 、かれ
  は江戸期の武士や文人よりはるかに強烈な合理主義
  をもっていたといっていい 。」

 「 私は官兵衛が一時期居城とした山崎の土地に行っ
  てみねばと思いつつ 、ついに行かなかった 。か
  つて姫路へ行ったとき今度こそは行ってみようと
  想い 、タクシーの運転手に所要時間を聞いてみる
  と 、思ったより長い時間だったため 、どうも体
  力に余裕がないと思い 、やめた 。そういうまわ
  りあわせになっている土地が 、私には幾つかある 。
   この須田画伯との旅で 、播州山崎へ行ってみよ
  うとおもった 。」

 「 山崎の盆地には 、北方の山間部から幾筋かの川
  が流れこんでいる 。それが盆地で合流して揖保(い
  ぼ)川になり 、大きく南流して播州平野を沾(うる
  お)しつつ播磨灘にそそぐ 。途中 、脇坂氏の旧城
  下町の龍野を洗ってゆくのだが 、海へそそいでい
  るあたりに 、日本でもっとも古い舟泊(ふなどまり)
  である室津(むろつ)がある 。このために 、この稿
  の道中は 、山崎から出発することにした 。以下 、
  川に沿って龍野の古格な町を経 、室津に出 、その
  あたりに鄙(ひな)びた宿でもあれば泊ろうとおもっ
  た 。」

  引用おわり 。

  語りの名人の達意の文章 。

  (⌒∇⌒) 。。

 ( ついでながらの

   筆者註:「『播磨灘物語』(はりまなだものがたり)は 、
       司馬遼太郎の歴史小説 。1973年5月から1975年
       2月にかけ 、『 読売新聞 』に連載された 。

        豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛( 孝
       高 、如水 )の生涯を描く。友人として竹中半兵
       衛も描かれる 。」

       以上ウィキ情報 。)

 

 

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