がじゅまるの樹の下で。

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『百十踏揚』続編、『走れ思徳』読了

2018年01月25日 | ・和心な本、琉球な本


琉球史題材の小説を読み始めて、
もうすぐ10年になるけど、
マイフェイバリット小説は

相も変わらず、更新されることもなく
『琉球王女 百十踏揚』と『テンペスト』。

 

その『百十踏揚』の続編、
『走れ思徳』が
琉球新報で連載スタートし、

50回分を一気読みした後は
やっぱり細切れではなく
本としてまとまった状態で読みたい、

ということで新聞では読んでいませんでした。

 

時は流れ、
いつの間にか連載は終了していたらしく、

じゃあ、単行本が出るのを待とうかと
こまめにチェックしていたのですが、

これまたいつの間にやら先月に発行されていたようで、
年が明けて、
発行日より
3週間遅れで
本土のフォロワーさんのツイートで知りました(不覚)。

夜でしたが、そっこーで買いに行って、
翌日、祝日だったのをいいことを読書タイム。


2日で読了しました。

 

読了から2週間以上たってしまいましたが
レビューを書いておこうと思います。
(※ネタバレ注意)

 


前半はこれぞ与並節!という
人物描写や史実の背景描写(史実とフィクションの融合)
が絶妙ですごく面白い。


なるほどそう来るかー!
ってなったり。
これをこう持ってくるかー!
って腑に落とされまくりで悶えました(笑)



帯にも書かれていたので言っちゃいますが、


実は阿摩和利が生きていた!

という部分を新聞の50回一気読みで読んだときは


本当に

ぶはぁっ゛;:゛;`(;゜;ж;゜; )!!

てなりましたもんね。



「百十踏揚」の時よりもワイルドになっててカッコイイ。


また「百十踏揚」では
黒幕一辺倒だった金丸についても
それなりにフォローも入り、
クーデターに関しても「なるほど」と思えるような
単なる悪役ではない金丸像が語られていて良かったです。

 

もちろん百十踏揚や主人公の思徳、
思徳の世話係の田場大親や
安慶名、
そしてまさかの
御茶当真五郎再登場!
そしてまさかの
メインキャラ入り!!
にはテンションが上がりました


金丸の密偵・真五郎と、
御茶多理山の真五郎の墓(それに伴うマジムン的な真五郎)
の伝説のイメージの差異も
まさかそういう感じでつなげるのかと、
読んでて「ぬあーーーっ!?Σ(゚Д゚;)」ってなったし、

尚真の正妃が尚宣威の娘である事の理由とかも唸った。

オギヤカも登場し(セリフもあり)
芥隠とのやりとりでは新たな彼女像が
ちらりと見えたところがすごい良かったです。 


あいかわらずうんちくは多いですが、
想定内でもあるし、

「百十踏揚」を読んだ時よりは私も琉球史の知識は増えてきているので
それなりに苦になることなく読むことができましたよ(´∀`*)

 


 

ところが。

 

 

主人公たちが琉球を離れ、

物語の舞台がシャム(タイ)に移り、
更にそこで彼らが定住し始めると、
とたんに

読者おいてけぼり状態

に。

 

南蛮の政治情勢や歴史のうんちくが
わんさか出てくる、出てくる。
もちろん物語の背景として
ある程度の説明は必要なのかもしれませんが、
それはもう、うんちくがメインという勢いで、
淡々と、そして延々と、延々と続き、
正直辟易しました。


え、思徳たちは一体どこへ…???


例えば、
新たにシャム人の主要登場人物が出てきて
思徳たちと絡んで一緒になって
なにかしらのドラマが繰り広げられる…
というのなら分かりますが、
そう
いうわけでもないので全然ついていけない。


琉球の南蛮貿易についてのアレコレ、
南蛮貿易における琉球人のアレコレについては

実は去年、ある琉球史講座を作るために
少し集中して知識を入れてて
それなりに分かってはいたのですが、
シャムやマラッカ内だけの、
いわば世界史だけで、
しかも物語としてではなく
説明文だけとなるとお手上げ状態だよ
 


最初は理解できなくても流し読みはしていたのですが、
正直、最後らへんはもうページごと飛ばしてました


うーーーん、
そんなこともあってシャムでの
思徳たちは印象は薄く、
出世はするけどなんかあまりにも都合もよすぎてて
リアリティと
魅力に欠ける感じがしました。

晩年に琉球に帰ってきた時は、
お、もしかして…?と少し期待したんですが、
なんとなく消化不良な感じ…。

 

ただ、
御茶当真五郎は
最後の最後までかっこよかった。

個人的には
主人公・思徳よりもキャラも印象も濃く、
魅力的だと思いました。

 



 

というわけで、
私の感想をまとめると、


前半は「百十踏揚」の続編らしいが
後半は別物で、置いてけぼりを喰らう


かなぁ…。

 

やっぱりフェイバリット小説は
『百十踏揚』と『テンペスト』のまま
更新されず、ですね。

 

 

+ + +

 

 

ところで。

百十踏揚の子って実は謎で。

大城賢雄の子孫はいるけど、
それが百十踏揚との子によるものかどうかは
夏氏の家譜が残っていないので
確かはっきりしてなかったはず。

伊波普猷の『阿麻和利考』には
鬼大城と百十踏揚のあいだにできた子の末裔云々…
っていう記述がありはするけど。

戦前まで家譜が残っていて伊波が実際にそれを見ての記述であれば
確かにそうなんだろうけど、
『阿麻和利考』にそうと書いてあるわけではないので
やっぱり根拠ははっきりとは分からない。

個人的には、
もし百十踏揚に子があったのであれば
(相手が阿摩和利であれ、賢雄であれ)
それは伝承なり言い伝えなり、
何らかの形でもっとたくさん伝わっていると思うんだけど
そういう話は全く聞かないし。

だから賢雄の子孫というのが百十踏揚との子経由なのかは
個人的にはどうかな?と思ってはいます。

(賢雄は百十踏揚と結婚する前に既に奥さんはいたようなので、
子孫はその奥さんとの子経由と言う可能性も大いにある)

 

この件に関してはこの記事のコメント欄もどうぞ

 

でも、実は本当に賢雄と百十踏揚には子がいて、
でも、現在はその存在ははっきりとしてなくて。

でも、それは小説『百十踏揚』で描かれているように
百十踏揚が思徳との縁を切ったから、かもしれないし、

小説『走れ思徳』で描かれているように、
思徳が琉球を離れシャムに帰化したから、かもしれない、

と考えると…。

 

そういう「賢雄と百十踏揚の子」という存在の謎についても、

『走れ思徳』の世並節で、私はまた一つ、

府に落とされるわけです。

 

 

 

+ + +

 

 

おまけ。

この本の最後に出てくる
シャムの琉球人の像、写真で見たことあります。

これが琉球人???と思えるようなビジュアルで
八の字困った眉毛の表情が漫画みたいで面白いです( ̄m ̄*)

カタカシラでも琉装でもないので
見るだけでは100%琉球人だと分かりません(笑)


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