初夏である。
自転車を走らせる。
半袖シャツでも、汗ばんでくる。
自転車専用のブルーの直線を気持ち良く走り抜ける。
上も向いてもブルースカイ。
所々に雲はあっても、明るい空色に混色されている程度だ。
見通しのよい直線道路。
前方を見る限り、他に自転車を走らせてる人は見当たらない。
少し先の左側に、自転車を止めているご婦人がいる。
走りだしそうな気配は感じられない。
スピードを緩めることなく通り抜けようとした。
が・・・
横切る手前で、ご婦人は発進してきた。
私の自転車側面に突っ込んできたかたちだ。
けっこうなスピードが出ていたため、避けきれなかった。
幸いに転ぶ事はなかったが、スマホが道路に放り出された。
スマホカバーはつけてなく、
道路に叩きつけられた衝撃で、フタが取れ中の充電池も外れた。
たぶん、この事故は私の側に非はないだろう、と瞬間的に判断した。
そして、スマホを替えるチャンスになると目論んだ。
前々からスマホの調子は悪かった。
それは以前ブログでも書いてある通りだ。
ブログ 23%
↑その時の記事
予想通り、ご婦人は「私の不注意でした」と言ってきた。
「体は大丈夫ですが、ケータイが無事がどうか…」
と、私は不安を煽るような言葉を口に出す。
ご婦人も、道路に放り出されバラバラになったスマホを見ている。
たぶんあの姿をみれば、壊れてしまっていても仕方ないように思うだろう。
プラス、自分がそうしてしまった罪悪感も加わっている。
こんな状況であれば、こっちの要求は通りやすい。
そこで私は考えた。
あえてその場で、スマホの状態を確認しない。
今無事なことを確認してしまうと、後々交渉が不利になりかねない。
その場で確認していないと、後々文句をつけることはいくらでもできる。
なんたって、相手は自分に非があると思い込んでいる状態だから。
理不尽な要求でも、ある程度は容認するだろう。
悪意満々である。
「ちょっと時間がないので」
と、急いだふりをして
「何かあったら後で連絡しますので、連絡先を教えてください」
そして、私が先に名刺を差し出す。
そうすれば、相手だって拒否することはできなくなるだろう。
名前と連絡先と、会社の従業員カードを見せてくれた。
君子さん、だった。
「君子危うきに近寄らず」
あらら、近寄っちゃったねぇ。
続く・・・