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埋土種子

2016年10月17日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 前回の「遷移」に続き、天然更新の話に入ろうと思いますが、その前に、天然更新に必要なもう1つの大切な知識を。

 それは「埋土種子(まいどしゅし)」についてです。

 森林内の土中には、樹木のタネがたくさん含まれています。

 そこに生育している植物から落下した種子(重力散布)、鳥やネズミ等が運んできた種子(動物散布)などがあります。

 ある種子は林内で発芽し、ある種子は発芽する事なく死んでしまします。

 その中で、落葉の下や土の中で休眠し、何年も生き続ける種子があり、台風などの自然災害や伐採等による攪乱によって、環境が変わると発芽する種子があります。

 このような種子を「埋土種子」といいます。

 埋土種子も寿命があるので、古くなった埋土種子は死にますが、それまでに新しい埋土種子が供給されるため、森林内の土中には、常にある埋土種子が蓄えられていると考えられます。

 このように埋土種子が蓄えられていることを「シードバンク(タネの貯蔵庫)」と呼びます。

 複数種類の樹木の埋土種子がたくさんあると、伐採後の天然更新も多種多様な環境でスタートできると考えられます。

 

 では、どうすれば、豊富な埋土種子を森林の土中に蓄えられることができるのか・・・。

 多くの埋土種子は、鳥によって運ばれます。

 樹木は、果肉質など栄養分が含まれる実をつくり、鳥に食べてもらい、その鳥が糞とともに種子を排出し、その場で発芽(もしくは休眠)します。

 

 鳥は飛びながら糞をすることができません。

 必ず、樹木などの上で止まらないと糞をすることが出来ません。

 鳥に種子を運んでもらう樹木は、「種子の散布先は樹木の下」であることを想定しています。

 

 なので、陽樹の場合、上層木がなくなるまで種子を休眠させるという方法をとるものが多いです。

(上層木が伐採されると発芽)

(上層木が枯死すると発芽)

 そして、陰樹の場合、日当たりが悪くても発芽できるので、その場で発芽し、少しずつ成長するものが多いです。

 樹種で例えると・・・

タブノキ。

 

 陽樹は日当たりが良くなるまで待機、陰樹は日当たりが悪くても影響が少ないので発芽する・・・という風に、陽樹の種子と陰樹の種子で、その戦略が異なります。

 埋土種子を作る陽樹は・・・・

 アカメガシワ、カラスザンショウ、タラノキ、イイギリ、ミズキ、クマノミズキなど。

   

 種子の寿命も樹種によって異なるようですが、少なくとも2年間は休眠できるようです。

 

 天然更新には、種子の供給源となる母樹はもちろん、埋土種子をたくさん蓄えることも重要です。

 そのためには、鳥が集まる森林環境を整えることが大切です。

 鳥は果肉質など栄養分が含まれる実を好むので、ヤマザクラなどが林内にあると、鳥は集まりやすく、多様な埋土種子を運んでくれます。

 ちなみに、ヒノキ林やマツ林では、埋土種子が広葉樹林より少ないという研究データもあります。

 その理由として、ヒノキ林やマツ林では、鳥が好む実を付ける樹木がない(少ない)ため、ほとんど集まらないから。

 

 植栽をせず、森林を再生させる「天然更新」は、種子による樹木の発生環境を整えることが重要です。

 特に、萌芽更新が期待できない場合は、その場所に十分な量の種子が存在しているのか、または、運ばれてくるのかが重要になってきます。

 そして、それらの種子が発芽できる適切な環境であることも重要です。

 なので、「埋土種子」の特性を理解することは、適正に天然更新や人工林の林種転換を進めるうえで、必要な知識だと思います。

 

※記事「天然下種更新 側方天然下種更新/上方天然下種更新」へ続きます。※

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