天然更新は、「天然下種更新(てんねんかしゅこうしん)」と「萌芽更新(ぼうがこうしん)」に大きく分けられます。
天然下種更新は、立木から落下した種子が発芽し、その稚樹を利用して行う更新を言います。
萌芽更新は、樹木の伐採後、残された根株の休眠芽の生育を利用して行う更新を言います。
一般的に使われている「天然更新」という言葉は、「天然下種更新」を指していることが多いかと思います。
天然下種更新を行う場合は、森林を伐採し、林床に陽光が当たる環境を作る必要があります。
ただし、立木の種子を利用した更新なので、全ての立木を伐採するのではなく、種子を生み出す樹木「母樹」を適切に配置するような形で残す必要があります。
風で散布するタイプの種子は、小さくて羽毛の様な構造を持ち、種子の飛散距離が長い。
落下して散布するタイプの種子は、種子自体が大きく、重量もあるので、種子の飛散距離が短い。
種子の飛散距離に違いがある、種子の散布方法に違いがあるといった点を理解した上で、母樹を配置しないといけません。
このような種子の飛散距離の違いから、天然下種更新を「側方天然下種更新」と「上方下種更新」に分類します。
「側方天然下種更新」は、飛散距離が長い種子を利用した天然下種更新で、造林をしようとする場所に隣接するよう母樹を配置します。
←造林をしようとする場所に隣接する母樹が、風を利用して種子を散布する。
アカマツ、クロマツ、カエデ類、ハンノキ、ニレ類、カンバ類の樹種は、風を利用して種子を散布するタイプで、種子の飛散距離も長いので、「側方天然下種更新」に適した樹種といえます。
「上方天然下種更新」は、飛散距離が短い種子による天然下種更新で、造林をしようとする場所に母樹を配置します。
←種子の飛散距離が短いので、造林をしようとする場所に母樹を残す必要がある。
ナラ類、カシ類、ブナ、トチノキなどの樹種は、落下して種子を散布するタイプで、種子の飛散距離が短いので、「上方天然下種更新」に適した樹種といえます。
天然更新を行う場合は、下図のようにすべての立木を伐採すると、更新が成立しない可能性が高まります。
天然更新を行う場合、伐採する前に、
どれを母樹として残すのか。
残そうとする母樹の種子タイプは?
種子のタイプによって、側方天然下種更新に適した母樹と上方天然下種更新に適した母樹の配置。
と、ある程度の計画を立てておく必要もあります。
ちなみに、更新の補助作業というのも、状況に応じて2つほど必要になります。
1つ目は「落葉層の除去」。
落葉層が厚いと、発芽した稚樹の根が土壌まで届かず、成長が阻害され、枯れる可能性があります。
2つ目は「下刈り」。
陽樹や陽樹と陰樹の中庸樹は、生育に陽光が必要です。
なので、陽光を阻害するつる植物や雑草等を除去し、更新を促すことで、遷移が進み、より早く更新を完了することが可能となります。
天然下種更新は、伐採後、そのまま放置すれば成立する・・・というものではありません。
母樹を適切に配置するよう残したり、更新を早く成立するために補助作業を行ったりと、更新しようとする場所の条件や状況に応じた対応が必要になります。
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