引き続き、種子散布のお話です。
今回は、ネズミやリスなど「貯食」を利用した種子散布についてです。
「貯食」とは、簡単にいうと、ネズミやリスが越冬のために貯蔵する食糧のことです。
貯食の対象となる木の実は、ドングリ類・クルミ(オニグルミ)・トチの実(トチノキ)など種子に養分が多く含まれている木の実です。
ネズミやリスは、集めた木の実を土の中に貯蔵します。
そして、食べ残された木の実や食べ忘れた木の実が発芽します。
つまり、食べられることを前提に種子を運搬し、食べ損ないが発芽するという戦略です。
運搬のほかに、もう1つメリットがあります。
ドングリ類は、種子に栄養分が多く、発芽や成長する能力が高い反面、乾燥に弱いため、土壌中に保存されるということは、最高の乾燥避けになります。
樹木としては、種子の豊富な栄養を提供することで、種子を運んでくれるネズミやリスの生息数減少を抑えているのではないかと思います。
もし、栄養分をケチって、リスやネズミの生息数が減少し、結果的に種子の運搬者が減少してしまうと、樹木の生育域拡大が難しくなるわけですから。
(生物多様性という観点からも、ドングリ類の樹木が重要視されるわけもここにあるというわけです)
ちなみに、アリ散布という方法もあります。
アリが好む栄養分(エライオソーム)に種子が含まれています。
身近な植物で言うと、「オオイヌノフグリ」。
ちなみに、ドングリ類・クルミ(オニグルミ)・トチの実(トチノキ)は、動物散布以外の方法でも種子を散布します。
ドングリ類は重力散布、クルミ(オニグルミ)・トチの実(トチノキ)は水散布という方法です。
このお話は次回。
ネズミやリスなど貯食による動物散布を行う樹種は、上方天然下種更新の母樹となりえる樹種が含まれています。
上方天然下種更新を行う場合は、こうした樹木に絞り込んで、母樹の調査を行うといいかと思います。
といっても、ほとんどがドングリ類の樹木になると思いますけどね・・・・。
※以下、「上方天然下種更新」に関する記事、関連記事です。