前回のつづきで、ドングリ類は重力散布、クルミ(オニグルミ)・トチの実(トチノキ)は水散布を行うということを書きましたので、今回は、この点をもう少し詳しくお話ししたいと思います。
まず、重力散布。
童謡でお馴染み、どんぐりコロコロ、どんぐりこ~のとおり、樹から落ちてコロコロと移動させる方法です。
しかし、この方法では、あまり遠くに種子を散布することは難しいと思います。
本命は動物散布で、重力散布は保険・・・といったところでしょうか。
まず、重力散布で種子を散布し、その後、動物散布でさらに遠くへ・・・。
動物に拾われなかった種子は、遠くに運ばれなくとも、親木から離れたその場で発芽できます。
動物に拾われた種子は、さらに遠くへ運ばれるものの、食べられる可能性があり、食べ残された種子だけが、発芽できます。
一応、樹木としては、すぐに食べられないように、ドングリに渋みを持たせるという戦略を持っています。(シイとか渋みが少ないものは、数で勝負・・・てとこですかね。)
このことから重力散布の種子は、ある程度の重量がないと行えません。
次に、水散布。
水に流されて、たどり着いた場所で発芽するという散布方法です。
ヤシの実がプカプカしているイメージですね。
オニグルミやトチノキの実は、水にプカプカと浮くことが出来ます。
水散布も動物散布の保険と考えられます。(両樹種とも種子に重量があるので、重力散布も行われていると思います。)
山を歩いていると、谷筋でオニグルミやトチノキをよく見かけます。
そして、生えている場所は水が流れていたり、岩が多かったり、過去に土壌が動いた形跡のある場所と、いずれも「水が流れる」ことと関係しています。
余談ですが、作業道や林道を作設する時の指標として、谷筋にオニグルミやトチノキが多い場所は避けたほうがいいと考えられます。
特にオニグルミは陽樹で、攪乱が起こった場所に生える傾向があります。
地域でクルミ谷とかトチ谷とかの名前がついている谷も、過去にオニグルミやトチノキが生えていたからその名がついた可能性もあるので、クルミやトチという言葉がついた谷も避けたほうがよいと考えられます。
実際、山や現場を見た限り、そう感じたというものなので、あまりあてにならないかもしれませんが、まったくの的外れではないと思っています。
この手の話は別の機会にしたいと思います・・・。