2018年の台風・・・。
今も風倒木処理に追われている地域もあるかと思います。
僕自身も、近所の方に「薪にしてエエで。」と・・・、裏を読めば「伐っといて。」ってことなんですが・・・。
とにかく風倒木処理はおっかないので、出来ないモノのには手を出さないようにしています。
と言うわけで、今回は風による林業被害「もめ」について。
林業を営む上で、気象による自然災害、特に台風や豪雨の発生は、ホントに嫌なものです。
台風が進行する中、現場の様子を思い浮かべながら、早く治まることを願わずにはいられません。
木材を何十年と育てる林業にとって、風をはじめとする気象害は、避けては通れないものですが・・・。
林業現場において、風による被害と言えば「もめ」。
樹木が瞬間的に強くねじられたり、強く曲げられたりすると、木材の繊維が細かく断裂することを「もめ」と言います。
もめは、部分的に発生することもあれば、幹全体に及ぶ場合もあります。
盛り上がった部分が、断裂された箇所です。
幹全体に及んでいると、いくつもの凸凹の盛り上がりができます。
断裂された部分は損傷した部分なので、樹木はその傷を修復しますが、表面の凸凹は残ります。
年月が経てば、表面上の変化は分かりにくくなるかもしれませんが、材部に受けたダメージは修復されないなので、木口面にはその傷痕がハッキリと残っています。
また、断裂された部分から腐朽菌が侵入してしまうと、材部が腐朽する可能性もあります。
(上の写真は断裂した部分から樹液が漏出)
断裂具合にもよりますが、伐採中に、断裂部分から幹が折れることあります。
「もめ」がひどい現場では、作業中に幹折れが発生するリスクがあると知っておくことも重要です。
また、表面上の修復が完了していても、内部の断裂がひどければ、強風が吹いた時、伐採の時に幹が折れる場合もあります。
風害が激しいと、上の写真の様に、年輪に沿うように材が剥離されることがあります。
断裂した部分は、修復されますが、それは、表面的な修復であって、樹幹内部の断裂までは修復されません。
なので、樹幹内部の断裂が激しいと、上記の写真のように、幹が裂けることがあります。
図はシンプルに表現していますが、実際は、何か所でいくつも断裂していると思います。
「もめ」は、幹が曲げられたとき、圧縮の力が働いて発生します。
風によって、幹が左右に揺さぶられます。
下の図で言うと、左に揺さぶられたときに圧縮されて、盛り上がります。
(圧縮されたイメージ)
盛り上がった部分は、圧縮された部分の細胞が押しつぶされたり、切断されて生じたものです。
風が吹いて、引っ張る力が働いて、ブチブチっと断裂したと、いうわけではありません。
表面上、もめが発生していなくても、「ヤニ壺」や内部の材が剥離する「目回り」が発生している可能性もあります。
「目回り」をイメージするとこんな感じで、赤いラインが損傷した部分になります。
スギやヒノキを造林するとき、普段から風が通りやすい場所という情報も重要です。
そういう場所に造林する場合は、長伐期施業は風害リスクが高まり、不利になる可能性が高いですし、風の影響で、あまり樹高が伸びず、材積の蓄積も望めない可能性も考えられます。
元々、林縁部のスギやヒノキは、枝を残して、風から守る工夫もしていました。
深根性の広葉樹を植えて、風の力を緩和するという方法もアリかなと思います。
あと、個人的な考えになりますが、風の影響が受けやすい環境下では、獣害対策の単筒は、あまりオススメできません。
高い可能性で、単筒が飛ばされたり、倒れると思います。
過去の被害情報や気象情報をもとに、風の影響を受けやすい森林エリアを抽出する事が出来れば、風害リスクの高い/低いを加味した上で、どのような林業経営を目指すべきか、判断できるツールになるかもしれません。
特に長伐期を目指す場合は、心強いツールになるなと思いますし、災害対策を視野に入れた森林整備の着手にも必要な情報だと思います。
個人的な考えですが、過去の被害や気象情報を取り入れて、森林GISなどのシステムとマッチングさせ、林業経営の判断できるツールを作成できないかな~って妄想しています。
って、どこかで実践してる事例ないですかね?