はぐくみ幸房@山いこら♪

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樹木医学 × 自然観察

2020年06月27日 | 樹木医・森林インストなどの活動のお話

 自然観察会のイベントや自然観察の指導者養成研修などの講師として、お呼びいただくことがあります。

 樹木の名前、見分け方、特徴、利用などのお話をさせていただくんですが、実は・・・個人的にそっち系の話を重要視していません。

 参加者や受講者の中には、樹木の同定や見分け方の方法を要望される方が多いのですが、やっぱり、観察そのものを楽しんで欲しいし、楽しみ方も知っていただきたいと思っています。

 なので、僕の自然観察は、「樹木医学 × 自然観察」をテーマに取り組んでいます。

 

 簡単に言うと、樹木診断を取り入れた自然観察です。

 樹木診断は、徹底的な樹木の観察なので、これを自然観察にも応用しただけで、樹木に限らず森林の観察にも活用できるし、森林づくりにも応用できます。

 もちろん、「樹木と森林の基礎知識」と「場数・経験」は必要ですが、コツを得れば、樹木の名前を覚えるより簡単ではないのかなと、僕は思っています。

 というのも、街路樹でも何でもいいので、身の回りにある樹木や道路の隙間に芽生えた小さな樹木などが定期的に観察できれば、山や森の中でなくても、学習することが出来ます。

 

 森林インストラクターなどの指導者が「教える」というスタンスで観察するよりも、「一緒に楽しむ」というスタンスの方が、自然観察は断然面白い!

 指導者も参加者も受講者も含めて、たくさんの目で、たくさんの視点で、自然に向き合った方が、色々なものが発見できます。

 そのためには、自然を観察しながら、参加者や受講者の観察力が高まるよう誘導しないといけません。

 そのためには、観察することの楽しさを実感してもらうこと。

 そして、主役は森林インストラクターなどの資格を持つ指導者ではなく、自然そのもの。

 「この樹木の名前は○○で、こういう使い方があって、万葉集ではこう歌われていて、葉っぱのここが特徴で、樹皮の特徴はあれこれで・・・」のようなお話よりも、樹木をじっくり観察して、「この樹木は、今、こういう悩みを抱えている。」とか、「この樹木とこの樹木は、いがみ合ってるなー」とか、擬人化した表現で観察した方が、人と樹木の距離が縮まるような気がしませんか?

 

 と言うわけで、一例ですが、これまで、森の中・山の中を歩いた中で、楽しく観察させていただいた樹木達をご紹介します。

 

 樹幹が割れたタブノキ。

 その割れ目の隙間に、クスノキが生えている!

 タブノキの樹幹内部は腐朽が進んで、イイ感じの湿気り具合に。

 そこに、鳥(たぶん)に種を落とされたクスノキが発芽し、根を広げ、成長し、今に至ったと思われます。

 身動きできない樹木は、発芽した場所で一生を過ごし、育たなければなりません。

 タブノキとクスノキの共生?

 タブノキに寄生したクスノキ? その解釈はお好みです。

 写真だけでは伝わりませんが、ジロジロ観察して、どうなっているのかなーと考え、この2種の将来や今後を想像するのも楽しいです。

 同時に、タブノキの幹が、なぜ、損傷したのか。その点を考えながら観察し、タブノキの過去の巡る(想像する)のも楽しいです。

 

 何かを嫌がるウバメガシ(笑)。

 右側の幹が左側の幹に寄りかかっています。

 写真では分かりにくいですが、幹が少しずつ結合しています。

 二又右側の幹。

 若い時に、元々の主幹が何かしらの損傷を受けて、二又の形になったのかも・・・。

 右端の雑木(何の樹種だったかな?)に梢端部を抑えられ、光が差し込む左側に逃げたのかも・・・、後ろにあるリョウブも同じような樹形だし。

 そもそも、なんで2又に分かれたのかな?

 もしかしたら、最初は右側の幹がメインだったけど、何かしらの損傷を受けて、左側の幹がメインに変わったのかも。

 そして、再び、右側の幹が主力になるべく、果敢に左側の幹に勝負を挑んでいるのかもしれない!!

 ・・・などなど、周囲の樹木と併せて観察し、このウバメガシが今に至った経緯を想像する。

 

 さっきのウバメガシと同じ森で出会った「ドーナツ型のウバメガシ」。

 さっきのウバメガシとは異なり、右と左の幹が仲良く、一体化している途中。

 これも、何かしらの理由で元々の主幹(梢端?)が損傷し、右と左に分かれた感じ。

 右側の幹は、左側の幹と比べ、圧倒的に小さいので、右側の幹は損傷した後に出てきたのかも。

 両者とも、そのまま素直に上に伸びているので、取り合いが必要な光環境では無かったのかも。

 いつか、真ん中の穴が無くなってしまうんでしょうね・・・・

 

 次はブナ。

 上に伸びる幹をよーく見ると2本の幹が重なった痕跡があります。

 元々の主幹は、右側のブナに抑制されたのか、それとも損傷したのか・・・

 無くなった主幹に変わって、成長した2本の幹が結合し、今に至った感じ・・・かな。

 もしかすると、右側のブナと同期(同じ年)で、主幹が損傷したことで、一時離脱・・・。

 遅れを取り戻そうと再生したけど、右側のブナには追いつけず・・・なんか、サラリーマンの業務実績に似ていて、切ない・・・。

 樹木をじっくり観察すると、人間生活に類似しているところがたくさんあります。

 樹木観察を擬人化してお話しすると、その木に共感を覚え、出会った木に感情移入したり、大切にしたいという想いが芽生える方もいらっしゃいます。

 

 モミの稚樹。

 なぜか、葉っぱが曲がっている・・・。

 樹木の葉は、日当たりの良い場所に適した陽葉と日陰に適した陰葉という2種類があります。

 日陰でひっそりと暮らしていたモミJr。

 ある日、上層の木々が伐採され、突如、日当たりの良い環境に変わる!

 突然、強い光を受け、驚くモミJr。

 その強い光を避けるように葉っぱを伸ばし、急変した環境に対応しようとしている。

 人で例えると、急遽、海外勤務を命じられ、日本と異なる環境に対応する・・・って感じですかね。

 

 ヒメシャラに何があったの?

 

 若いとき、主幹が途中で折れてしまったんでしょう。

 そして、傷付いた主幹に代わって、右側の幹が上へ伸びた。

 でも、折れた主幹も、残った枝が頑張って、再生し、主幹に代わって、上へ伸びた。

 残念ながら、元々の主幹は枯れてしまった・・・

 激しく折れたヒメシャラ。

 でも、諦めることなく、そこから再生しようと頑張った努力が伝わってきますね。

 

 樹種を忘れちゃったけど(^_^;)、この木も主幹が折れたけど、枯れずに再生!

 全体を撮影していなかったので、何がどうなっているのか(*_*;

 でも、2本とも幹が折れた部分が結合しているので、肥大成長していることは間違いないでしょう。

 なので、枯れていないことは確かですね。

 

 諦めず、何度も何度も、立ち上がろうとしたアカガシ

 岩の上で芽生え、成長していくアカガシ。

 でも、ある日、風なのか、原因は定かでは無いけど、倒れてしまう・・・。

 この時、主幹が損傷したのか、光環境が良くなかったのか、残った枝が、谷に向かって成長。

 そして、ある日、周りの木が倒れたのか、光環境が改善され、谷に向かって伸びていた幹が上方へ。

 おそらく、元々枝だった部分が、光環境の改善で優位になって、主幹に代わって、新たな主幹になったのかも。

 そして、左側の幹も光環境の改善で伸び出す!

 しかし、悲劇は続く・・・

 右側の主幹が再び、損傷(したと思われる)・・・。

 そこから3又に分かれて成長する右側の幹。

 一方、一度倒れて山みたいになっている真ん中の幹の陽当たりが良くなり、情報に向かって伸びる。

 と言う感じかなー。

 とにかく歴史を感じさせてくれるアカガシ。

 

 と言う風なお話をメインに、観察会では山や森の中を歩かせていただいています。

 樹木の姿を見て、過去を想像し、未来を想像するという観察をしていると、樹木の過去と未来が見えてきます。

 そして、この観察の一番良いところは、「正解がない」ということ(^o^)。

 ひたすら観察して、想像し、想像力を働かせ、みんなでワイワイ過去や未来を一緒に描くのが楽しいです。

 

 これが「樹木医学 × 自然観察」をテーマにした観察です。

 森の中には、本当に面白くている魅力的な樹木達がたくさん生育しています!

 

 さて、最後にヤマモモ。

 いったい何があったのでしょう(゚o゚;

 どんな過去が想像できますか?

 どんな未来が想像できますか?

 このヤマモモに何があったのか、気になりません? 



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