晴れた秋の日、
ひさしぶりに豪徳寺の商店街を散歩したら、
『辣上帝(らしゃんてぃ)』というカフェ風の店があった。
日本で唯一の酸辣粉(サンラーフン)の専門店らしい。
初めて聞く料理だ。
面白そうなので入ってみた。
酸辣粉というのは四川の春雨料理だという。
注文してから出来上がりまで20分かかるそうで、
せっかちな僕としては普段なら「…」となるところだが、
その日はいくつかの会議が休止になり、時間に余裕があった。
これも何かの縁だろう。
家人はもっともスタンダードなものを頼み、
僕はその1つ上の辛さのものを頼んだ。
「かなり痺れますけど大丈夫ですか」
と心配されたが、なんとなく引くに引けずそのままでお願いした。
20分後。
酸辣粉が出てきた。
肉味噌の上に僕の方だけ真っ赤な粉が大量にかかっている。
予想以上の量じゃないか!
これは、唐辛子?山椒?
混ぜながら食べる。
その名のとおり辛酸っぱい。
でもそれほど辛いわけでもない…と思っていたら、
だんだん舌が痺れてくる。唐辛子ではない。山椒の痺れ。
アドバイスに従って頼んだマンゴーラッシーに救われる。
ラッシーをひと口飲むと、痺れはすぐに消える。
すごいよ、ラッシー。
そうそう、春雨についても書かなければ。
太い。かなり太い。さぬきうどん並みの太さだ。
そしてすごい弾力。噛み切れない。
れんげに少しずつとって食べるのがいいようだ。
ラッシーのおかげで口の中の痺れは苦ではなかったが、
気がつくと、首筋に汗、額に汗、汗、汗。
けっこうボリュームがあって満腹。
僕にはちょっと多かったかと思ったが、
別に胃にもたれる感じはなかった。
そして店を出てしばらくすると、胃が軽くなっていた。
その日はちょっと風邪気味だったのだが、
酸辣粉を食べた後、風邪も去ったようだった。
なんとも不思議な料理だった。