熊澤良尊の将棋駒三昧

生涯2冊目の本「駒と歩む」。ペンクラブ大賞受賞。
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訃報

2009-08-27 19:23:43 | 文章
英国人社長が「日本の悪しき伝統には、これ以上耐えられない」と言って、1年あまりで自ら退職したニュースの続きです。

この場合の日本の悪しき伝統とは「単身赴任」です。
単身赴任は、ある程度以上の規模の会社なら、結構普通の事として、社員の何パーセントかの該当者が居ると思います。

単身赴任は、江戸時代の武家では普通のことでありました。
参勤交代が始まったのは江戸時代初めですが、妻を帯同して江戸に行けるのは、殿様のみ。お付の家老以下は皆、単身赴任でした。
単身赴任は、その頃からかと言えば、そうではありません。日本人は辛抱強いのですね。
平安時代、否、奈良時代の頃からあった訳です。

「防人(さきもり)」の制度は、664年に作られたと言います。
防人は、国土防衛のために東国や近畿など各地から、北九州の地へ送られて任務に当たる人たちのことですが、万葉集には防人が詠った歌が沢山残っています。
こんな歌もあります。

ーーー藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君ーーー

これを詠ったのは大伴四綱と言う人。多分、今で言う官僚の一人でしょう。

「今、ここでは藤の花がたわわに咲き誇っているのを見るに付け、都に残したあなたのことを思ってばかりいる。寂しいことです」ということ。

遠く単身赴任の地で、3年間交代で帰れる日を待ちわびる切ない歌です。

辞任した英国人社長は、日本の悪しき伝統のこんなこともご存知だったのかどうか。若し知っておられたのなら、大変な日本通ですネ。


訃報です。
石川県の塩井さんと泉野さんから、電話とブログのコメントで連絡を戴きました。

陶芸の人間国宝・徳田八十吉(正彦)さんがお亡くなりになりました。
大変な将棋ファンで、何年か前までは石川県で行われる将棋タイトル戦の盤駒は徳田さんが提供されることが多かったそうです。

以前、お持ちになっていたタイトル戦用の「静山作・錦旗書」でしたか、漆が飛んでしまって、ご指名で修理を頼まれたことがありました。

飛んでいたのは4枚ほどでしたが、1つでも漆の飛んだ駒は、多かれ少なかれほかの駒も漆が次々と飛んでしまうので、一旦、全部の古い漆をはがすところからやり直しました。
従って、駒の漆は全部、新しくなりましたので、文字も小生流に変わっています。

「玉将」の側面には、そのときの年号と小生が修理した旨の文字を、直ぐには分らないけれども、読めば読めるように彫り付けておきました。
そんな思い出があります。

数年前に体調を崩されて、一時は元気になられてお会いしたのですが、昨年からまた調子を崩されているとの話を聞いていました。
ご冥福を祈ります。
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駒の写真集

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