ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

うつくしき野生

2008-11-27 18:12:05 | 日記・エッセイ・コラム

山陰から松葉蟹の大きいのが送られてきたので
高原山に住んでいる知人宅(
猫たちの移住先)へおすそ分け。

辺りがうす暗くなりかけた日暮れどき
山道から小径へ入ったところで
巨大な塊りがフロントガラスを横切った。

鹿だ!
みごとな角をした牡鹿である。

あっと叫んだまま驚きが固まってしまったぼくを
林の中からじっと見つめている。
夕闇に、すっくと立つその姿の神々しさに
忽ち村野四郎の詩の一編が脳裏をよぎった。

         鹿
    鹿は 森のはずれの
    夕日の中に じっと立っていた
    彼は知っていた
    小さい額が狙われていることを
    けれども 彼に
    どうすることが出来ただろう
    彼は すんなり立って
    村の方を見ていた
    生きる時間が黄金のように光る
    彼の棲家である
    大きい森の夜を背景にして

なんと! 時間帯もロケーションも
村野のこの作品とそっくりではないか。
違いは、ぼくが銃で狙っていないことだけであって
こんな風に同じ体験に出会えるなんて感動ものである。

興奮気味のぼくに、山の住人は
一昨日、上の方に雪が降りつもったので
餌を求めて中腹まで下りて来たのだろうと 穏やかに笑っていた。

帰りがけ、軒に吊るしてある干し大根を2本所望する。
---------ピクルスにしようと思う。

     
 燃ゆるものの終り馨し夕焚き火