面識はないが
あるソプラノ歌手より手紙が届く。
埼玉と弘前でのコンサートに
私の詩「雲」を演奏したいとのこと。
たいへん光栄なことで
このような時期だからこそ
あちこちで歌われたらありがたい。
「テレビ見た」と
昔、私の店のパートで働いていたひとから
でんわがある。
最近、愛犬を失くしたそうで
ほんとうはその話の方が主流であった。
ゴン・マロ・サクラ・・・わが家の三匹の侍。
ゴンは私が大学二年生の時
新宿御苑で水を掛けられているのを拾った。
栃木に連れてきて15年生きたが
死期をさとり最後は自分からどこかに身を隠し
骸はとうとう見つからなかった。
マロは子犬のとき迷い込んできた黒い犬。
店と同じ名前を付けられて
わがレストランマロの看板犬であった。
足の先だけが白く、スニーカーを履いたように
スマートで、彼も15年天寿を全うした。
サクラはおとなになってから拾われた。
カミナリが大の苦手、
事務所の中に逃げ込んできては私の足元で
肥満体を小さく丸めぶるぶる震える。
一度、野犬狩りに捕えられて
あと一日で殺処分になるところ
最期は心筋梗塞の大往生であった。
どの犬も、それぞれに個性的で
一匹一匹面影をふりかえると
それぞれの時代の自分自身が想いだされて
胸熱くもなる。
飛ぶよりは休むが多し糸とんぼ