ひさしぶりに涼しく
しのぎやすい昼下がり。
初めての床屋で髭など剃ってもらっていると
「こら、マロ、駄目!」
突然、おかみさんの叱る声・・・・・
ぼくは驚いて身を硬くする。
何かそそうでもしてしまったかと
こわごわ薄眼をあける。
なんと、ぼくの足元にダックスフント。
「マロ、向うに行きなさい!」
またもやおかみさんの叱る声。
マロ・・・・・
これはぼくの古くからの愛称。
レストランマロをやっていたころから
いまだに友人たちはぼくをそう呼んでいる。
「言うこと聴かないんだから もう マロ、こらっ!」
剃刀が冷たく喉に迫ってくる
(スミマセン、ゴメンナサイ!)
ぼくは小さく詫びている。
ようやく無事に床屋を出ると
おちこちの空でつくつくほうしが
夏の終わりを惜しんでいる。
窓に来ていとま乞う蝉ごきげんやう