顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

お葉付き銀杏 白旗山八幡宮(水戸市)

2017年10月15日 | 歴史散歩

水戸市八幡町にある白旗山八幡宮は、文禄元年(1592)に佐竹義宣が本拠地だった太田から分祀し、当初は城の西にあたる八幡小路(現北見町)、徳川家の代に上那珂西村を経て、宝永4年(1707)に現在地に遷座したといわれています。

平成10年(1998)に修復された本殿は、慶長3年(1598)の建立で、国の重要文化財に指定されています。

さて本殿左には見事な大銀杏があります。樹齢800年、樹高35m、幹周り約6mの堂々とした姿もさることながら、葉の上に種子ができる珍しいオハツキイチョウとして国の天然記念物に指定されています。

鈴なりのギンナンが音を立てて降っている中を探しましたが見つかりません。社務所の方に聞きましたら、お葉付き銀杏は一種の奇形として生じるため、数多く発生するものではなくなかなか見つからないということでした。

その方にこの辺で今年は見たという辺りを探したらなんとそれらしきものが…、写真を社務所で見てもらって確認いただきました。種子がふたつ出たため実が大きく育たず、葉は丸まって黄葉しています。

お葉付き銀杏は全国でも20数カ所見られるそうで、茨城県でも照明院(鉾田市・樹齢500年)・西光院(大洗町・樹齢400年)・西念寺(笠間市・樹齢300年)が知られていますが、樹齢、樹勢ともここの銀杏は全国五指に入るとされています。

それにしてもこんなにたくさんのギンナン、それも大粒…、一体どうするのでしょうか?毎年ギンナン拾いの仙人ですが、つい聞きそびれてしまいました。

水戸黄門 by 武田鉄矢

2017年10月13日 | 日記
味のある役者として決して嫌いではありませんが、武田鉄矢の「水戸黄門」が始まりました。テレビの連続ドラマとしては、月形龍之介、東野英治郎のカッカッカッの笑い声、西村晃、佐野浅夫、石坂浩二、里見浩太朗と放送されましたが、今回は特に異質なキャスティングの気がしました。

以前森繁久彌がシリアスな役に取り組み始めた頃、それまでの社長シリーズや駅前シリーズなどの助平でコミカルな役のイメージが視聴者に染み付いていて、それを払拭するのに時間がかかったのを思い出しました。今回も2,3作になれば、独特のキャラクターで新しい黄門を演じてくれることを信じて期待したいと思います。

さて黄門というのは、中納言という官名の唐名で、水戸藩主11代のうち7人が権中納言になりました。色んな事情で4、5、7、11代は官名を世襲できなく、それでも7人の水戸黄門がいたわけですが、2代目の光圀公だけが一躍水戸黄門として有名になりました。

おなじみ『水戸黄門漫遊記』は幕末に講談師が創作したと伝えられ、助さん格さんは佐々助三郎と渥美格之進ですが、黄門こと光圀公が始めた大日本史の編纂局の彰考館には、佐々宗淳(通称は介三郎)、安積澹泊(通称覚兵衛)という学者がおり、特に佐々宗淳は全国各地に資料収集の旅に出ていたので、漫遊記のヒントになったのではと言われています。実際には光圀公は領地内の巡遊が殆どで、遠路は鎌倉までだったようです。

晩年隠居した常陸太田市の西山荘には、机に向かっている光圀公がおりますが、なんとも上品で気高い感じで、無垢な人形には先入観はなく、どんな役者もかなわないと思いました。

水戸藩の薬草の歴史

2017年10月10日 | 水戸の観光
「江戸と水戸ウイーク」と題した企画が、10月1日から9日まで水戸藩ゆかりの弘道館、小石川後楽園、水戸市植物公園で行われました。

弘道館では、園庭に水戸藩ゆかりの薬草の鉢を並べ、効能などの説明が展示されました。9代藩主徳川斉昭公が開設したこの藩校弘道館では、医学館の薬園で薬草の栽培や研究、製薬局では各種の薬が製造され貧者には無料で提供されました。また医学館の本草局長佐藤中陵は全国各地を巡って動植物鉱物を模写し、斉昭公の命によりその性質や効用を解説した『山海庶品』全1000巻を編纂しました。

10月8日には弘道館至善堂で、午前中に「弘道館で学ぶ江戸の暮らしと薬草」、午後は「水戸藩の医学と薬用植物」、「弘道館周辺の薬用植物散策」などの講座が開催されました。

水戸藩の薬草の歴史といえば、弘道館の開設より約150年前の元禄6年(1693年)、2代藩主徳川光圀公は藩内巡視によって、庶民が病気や怪我のときに、薬の入手や医者の治療を受けられないことを知り、藩医の穂積甫庵(鈴木宗與)に命じて、身近に手に入る薬草397種の効能・使用法を記した手引書を作らせ、大日本史編纂の彰考館で刊行し領民に配布しました。わが国最初の家庭医学書と言われる『救民妙薬』です。(写真は義烈館所蔵のもの、水戸商工会議所のホームページより)
この冊子は、以後多くの版を重ね,明治・大正の頃には活字本としても刊行されたそうです。

庭の花と野の花散策記ブログの雑草さんに教わった薬用植物、ムクロジ(無患子)は大手橋のたもとにあります。果皮にサポニンを含み洗濯や洗髪に用い、また強壮、去痰薬ともされましたが、現在は果実に毒を含むため飲用には用いないようです。ちょうどその実が成っていました。

愛嬌ある小動物のような形の面白さに、落ちている実を拾ってみました。黒い種子は、追い羽根の球や数珠に使われることで知られています。

無患子の弥山颪(みせんおろし)に吹きさわぐ  阿波野青畝
悼むとは無患子の実を拾ふこと  山本洋子


源頼朝創建とされる長勝寺 (潮来市)

2017年10月07日 | 歴史散歩
たまたま源頼朝ゆかりの場所の訪問が続いてしまいました。

源頼朝が文治元年(1185年)、鹿島神宮に隣接するこの地に武運長久を祈願して創建したと伝えられる海雲山長勝寺は、臨済宗妙心寺派の古刹です。
元禄年間(1688–1704年)には伽藍の荒廃を惜しんだ徳川光圀が、堂宇を修復して妙心寺の253世住職をつとめた太嶽祖清禅師を中興開山として迎え、江戸幕府からも朱印十石と寺領地が与えられました。

茅葺きの本堂は、一重入母屋造りで、棟上に源氏の定紋「笹りんどう」が配されており、周囲に板葺「もこし」があります。外部の組物など内外ともに堂々たる唐様の禅宗寺院建築で、建立年代は詳かでありませんが、元禄年間(1688~1704)と考えられています。

本堂の格子の間から拝ませていただいたご本尊は、阿弥陀三尊仏。厨子の中央に阿弥陀如来座像、左右に観音菩薩と勢至菩薩の脇持立像を三尊像と言うそうです。いずれも鎌倉前期の檜寄木造とされています。向かって右側には毘沙門天が睨みをきかせています。

山門は、二重二階門、入母屋造、柿葺型銅板葺で、一重屋根は棧瓦葺、軒は二重の垂木で、雄大な唐様様式の遺構です。建立年代不詳ですが、軒周りその他細部の様式手法により桃山時代の建立と思われます。(茨城県教育委員会HPより)

この鐘楼の銅鐘は、元徳2年(1330)、鎌倉幕府14代北条高時が下総国府城主千葉氏との発起により、源頼朝の菩提の為に寄進したもので、鎌倉円覚寺十六世清拙大鑑禅師の鐘銘が刻まれています。国の重要文化財です。

松尾芭蕉が貞享4年(1687)、門人曽良と宗波を伴い、鹿島神宮へ月見を兼ねて参拝した鹿島紀行の時に詠んだ「たび人と 我名よばれむ はつしぐれ」の句碑があります。

天然記念物の菩提樹の実が、葉の裏の真ん中からぶら下がっています。臨済宗の開祖、栄西が日本に持ち帰ったといわれる菩提樹ですが、実を数珠にする菩提樹とは種類が違うようです。
傍らには、源頼朝公お手植えと伝えられる文治梅、長勝寺創建の文治元年に因んで命名されました。さらに奥の門をくぐると、静かな佇まいの中に方丈・書院・庫裏などがあります。

鹿島紀行の句、同じ場所で同じ情景(ひと雨上がって月が出てきた?)を詠んでいます。

月はやし梢は雨を持ながら  桃青(芭蕉の別号)
雨に寝て竹起かへるつきみかな  曾良
月さびし堂の軒端の雨しづく  宗波

すっかり秋、身近な花たち…

2017年10月04日 | 季節の花

ツユクサが黄金の稲穂の脇で、豊作を祝っていました。
朝咲いて昼には萎むので、朝露を連想し「露草」と名付けられたとも言われています。英名の Dayflower も「その日のうちにしぼむ花」という意味です。

ストレプトカーパスはイワタバコ科で、同じ仲間のセントポーリア同様、室内での栽培鑑賞に適した花です。ラッパ状の花を次々と咲かせ、ねじれたコヨリのような実をならせるのが名前の由来で、ギリシャ語で「ねじれた=ストレプトス(streptos)」と「果実=カルポス(karpos)」から名付けられました。

シュウメイギク(秋明菊)は、古い時代に中国から伝来し、日本の気候に合いすぎたのか増えすぎて一部に野生化しているようです。キク科ではなくアネモネの仲間、英語ではジャパニーズ・アネモネと言うそうです。

シュウメイギクの花もいろいろあります。花の色によって、白の爽やかでさびしいイメージが、豪華で賑やかにもなります。(七つ洞公園)

スズランにかわいいい実がなっています。スズランは全草に毒を持ち、特に実は強い心臓毒を持つそうなので、特に注意が必要です。

イチイ(一位)は常緑針葉樹、刈り込んで生け垣などによく植えられます。種子は毒ですが実は食べられ果実酒などにも使われます。貴族が右手に持つ細長い板「笏(しゃく)」はこの木で作り、朝廷から官位の「一位」を賜ったことから「一位」の名前が付いたと言われています。(七つ洞公園)

コルチカムはユリ(イヌサフラン)科、球根や種子に毒性を持ちますが、栽培が簡単で庭に植えておくと、急に花が出てくるのでびっくりします。
和名はイヌサフラン、この場合の「イヌ(犬)」は役に立たないというような意味でよく草花に使われます。

スイフヨウ(酔芙蓉)、朝咲いた時は白く、時間とともにピンクから紅色に変わる様子がまるで酒に酔ってるみたいです。アオイ科の落葉低木、詩歌にもよく歌われます。(七つ洞公園)

最後に一つ、身近な花のホウセンカ(鳳仙花)ですが、大変珍しく日本でもあまりない種類だと先日水戸市植物公園で紹介されたものです。自然の造形の神秘を見る思いがします。(水戸市植物公園)

枯れつゝも秋明菊に景色あり  及川貞
手にのせて火だねのごとし一位の実  飴山實
酔芙蓉よりいささかの酔おくれ  能村登四郎
海女陸にもどれば母よ鳳仙花  福田蓼汀