住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

お寺って何? 2

2005年04月28日 17時22分59秒 | 仏教に関する様々なお話
私にとっての最初のお寺体験は、東京浅草の浅草寺でバナナかベルトのたたき売りを見たときだろうか。小学校の低学年の頃のこと。今から40年近く前のことになる。浅草寺の境内を沢山の人が通り過ぎる。そのときに、ついでということも無いだろうが、多くの人が本堂に駆け上がって賽銭を投げ、観音様に手を合わせていく。外では、鳩に餌をやっている人もいる。その大変な人混みの中で境内の所々にテキ屋さんが出店していた。

そんな浅草寺の喧噪の中でも、境内の仏像に手を合わせる人がいたり、線香の香りを一生懸命子供にかけてやり健康を祈る子供づれがいたり。また本堂の階段や境内のベンチで座り話をしたり。観光目的で来ている人も多かったのだろう。そんな人々の憩いの場としてお寺があった。それだけの人を寄せる力が浅草寺にはあった。

先般台湾に旅した知人が台湾のお寺も、日長境内の長椅子に座り人々が将棋のようなものをしたり、お茶を飲んだりのんびりしていたと聞いた。お寺とはそんな気楽に出掛けていける雰囲気が欲しいと思う。

四国松山に石手寺という寺がある。ここは四国八十八カ所の中に入っているし遍路の発祥物語にはなくてはならない寺でもある。が、そのことよりもお寺の雰囲気が素晴らしい。道後温泉に近いこともあり観光客もあって独特の雰囲気を醸し出しているのだろうが、とても開放的で、みんな好きかってにしているところが良い。

色々な今風の工夫もあり、古い寺の雰囲気も残されている。昔歩いて遍路したとき、仲店の入り口で托鉢させていただいたが、文句一つ言われなかった。

明治時代には明治の元勲たちが師と仰いだ釈雲照律師の十善会による集まりが、四国ではここ石手寺が会場として提供されていた。戒律に則った僧侶の勉学に、また在家者への仏教流布にと、その頃から熱心だった伝統が今に受け継がれているのだろうと思う。石手寺には今も雲照律師の供養碑が境内に祀られている。つづく

コメント (2)
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