住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

僧の九徳

2006年11月06日 07時38分50秒 | 仏教に関する様々なお話
僧とは何か。いかなる人たちを僧というのであろうか。仏教徒にとって敬うべきものに三宝があり、三宝とは、仏法僧のことである。その中の法については、既に「法の六徳」ということを解説した。そこでは、さとりの階梯に至るお釈迦さまの法の六つの特質について述べた。

ここでも「僧の九徳」というパーリ仏教圏である南方の仏教徒たちが仏前でお唱えする偈文を紹介しよう。

<僧の九徳>パーリ原文
『スパティパンノー・バガヴァトー・サーヴァカサンゴー・ウジュパティパンノー・バガヴァトー・サーヴァカサンゴー・ニャーヤパティパンノー・バガヴァトー・サーバカサンゴー・サーミーチパティパンノー・バガヴァトー・サーバカサンゴー・ヤディダン・チャッターリ・プリサユガーニ・アッタプリサプッガラー・エーサバガヴァトー・サーヴァカサンゴー・アーフネイヨー・パーフネイヨー・ダッキネイヨー・アンジャリカラニーヨー・アヌッタラン・プンニャケッタン・ローカッサー・ティ』

和訳
『お釈迦様の弟子の僧団は、

よく法にしたがって修行するものであり、
真っ直ぐに修行するものであり、
悟りのために修行するものであり、
人々の尊敬にふさわしく修行するものであって、

この四双八輩といわれる弟子たちは、

遠いところから持って来て供えたものを受けるに値するものであり、
方々から来た客のために用意したものを受けるに値するものであり、
供えたものを受けるに値するものであり、
合掌を受けるに値するものであり、
世の無上の福田である。』

はじめの四徳は、修行について述べている。正しく仏法にのっとり、さとりに向かってまっすぐに、純粋にさとりのために、尊敬にふさわしい修行をしているものたちであるという。当時も今も様々な修行の方法がある。

むやみに身体を痛めつけるような修行から、薬や香りを用いて酩酊する中で幻覚を見るようなものもあるであろう。瞑想法にも様々なものがあるけれども、正しくお釈迦様が教え、弟子たちが継承してきた仏教の智慧をさとりるための方法にのっとったものでなければいけない。

超能力や奇跡、霊能などのために修行するのでもない。純粋にさとりという煩悩を滅尽するために修するのであるという。そして、そうすることで、いかがわしい人々の好奇を誘うようなものではなく、人々の尊敬に値する修行でなければいけないということであろう。

そして、そうして修行に励む僧は、四双八輩であるという。四双八輩とは、聖者の流れに入った、預流向・預流果、一来向・一来果、不還向・不還果、阿羅漢向・阿羅漢果という聖者の階梯にある方たちを言う。預流果の聖者は、最高でも七回欲界に生まれ変わって修行し阿羅漢になる。一来果の聖者は、一度生まれ変わり修行することで阿羅漢になる。

不還果の聖者は、死後天界で修行して阿羅漢になる。阿羅漢果の聖者は、涅槃に入り生まれ変わることはないと言われる。阿羅漢とは、仏陀、如来と同義であって、ただ自らおさとりになり他の者たちをさとらしめたお釈迦様と同じ呼称である仏陀と名乗らないだけである。

あとの五徳は、供養に値するものであるとする内容である。遠くから来て供えるだけの功徳があり、方々各所から来た客のために用意したものを供養するに値する功徳がある。また、その功徳を期待する者たちによって供えたものを受けるに値する方であり、合掌されるに値する清浄なる方であり、世の中のこの上なき功徳を人々に授け与えることのできる方であるということ。

四双八輩であればこその功徳と言えようか。ここに述べられた「僧の九徳」は、誠に尊敬供養に値する清浄なる僧侶について述べたものであろう。それに引き替え、現在の僧侶の現実は、凡夫僧そのもの。日本仏教は、その前提すら崩れていることは言うまでもない。しかし、法に生き、法を伝え、法を修しつつあるならば、僧としての役割は担っているとも言えまいか。

「僧の九徳」の言わんとするところは、きちんとした修行を本(もと)とせよ。それに基づいて供養を受けるに値する者であれ、ということであろう。ほんの一時期本山で修行らしきものをして、それで修了とするのではいけない。さとりまで修行あり、ということではないか。修行の身であるとの自覚が何よりも必要だということなのであろう。

だからこそ供養にも値する。だからこそ伽藍がある。伽藍は、サンガーラーマの音訳であって、サンガーラーマとは、サンガ(僧団)とアーラーマ(園林)の複合した言葉で、僧侶が修行生活を快適に送る僧院のことである。そして本来の仏教僧院には仏像などはなく、在家の仏教信者はその修行に励む僧侶を礼拝し、教えを崇拝したのであったから。

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