活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

80年つづいている印刷業のありよう

2011-08-06 12:46:16 | 活版印刷のふるさと紀行
 印刷業のありようという変な言葉を使いました。体質といってもいいかも
知れません。いや、もっとシリアスに本質といってもいいと思います。
 なぜか、私は「受注産業」であるからにはクライアント第一という印刷産
業の経営体質はもういい加減に改まってもいいと思うのですが、2011年
現在まだ、ほとんど変わっているとは思えません。

 実はこの体質をつくりあげた根源が円本や文庫、あるいは大衆雑誌の大量
印刷、1920年代の終わりの時期にあると見ています。
 大量に印刷して、低価格で売るという出版社の企画に、おりしも不況にあ
えいでいた印刷会社が唯々諾々と乗ってしまって、自ら設備投資をして、低
賃金で人集めして協力してしまったのです。

 少なくとも明治の印刷業の揺籃期は発注者と対等でした。官員さんが馬車
を仕立てて原稿持参で「恐れ入りますが、お頼の申します」といった光景す
ら見られたというではありませんか。

 それが、出版社は自社設備はなにもしなくて、印刷会社にリスク負担をさ
せて本を出すようなことができるようになったのは、この円本ブーム以来だ
といえます。
 「印刷会社はハードのみ」というようなことが不文律になって、発注者上
位の構造がいつの間にか定着してしまったのです。
 徳永 直の『太陽の無い町』は生まれべくして生まれたのです。
 
コメント
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