私的図書館

本好き人の365日

先祖孝行

2005-03-27 23:44:00 | 日々の出来事
亡くなった祖母が夢の中に出て来ました。

家の明りがもれる夜の庭に長いすを持ち出して、幼い女の子と二人で腰掛けていました。

その女の子が誰なのか。
最初は小さい頃の妹かと思ったのですが、今思えば幼い頃の祖母なのではないかと思います。

…やれやれ、言いたいことはわかってるよ。
わざわざ夢に出てこなくてもいいって。

と、いうわけで、今日はお墓参りに行って来ました☆

たまには御先祖様にも愛想を振りまいておかないと*(ハート)*

ドラマなんかで墓石に話しかけるシーンを良く見るので、感傷にふけった感じでやってみようと思い、南無阿弥陀仏と彫られた墓石を眺めてみたのですが、かけるべき言葉が何も浮かばない。

彫られた文字の溝の汚れとか、他のお墓の立派さには目がいくのに、墓石に話しかけることだけは出来ない。

…だって石だもん*(汗)*

ま、頭の中で祖母や祖先のことをどう考えているのかが問題なわけだから、格好なんてどうでもいいか。と、理想的なお墓参りの人物を演じるのを諦めて帰って来ました。

決してふざけた気持ちではないのですが、ついついその場の状況で遊んでしまうのが悪いクセです☆

いちおう形通り、掃除して、持参した花と水を供えてお線香をあげてきました。
祖母が亡くなってから二年がすぎて、ようやくできた墓参り。

でも先祖を敬うって、ようは気持ちの問題なんだから、その点では何も不義理はしていないはず(言い訳?)。

おばあちゃんは、わかってくれてるよね?



三月の本棚 3 『スノーグース』

2005-03-27 01:22:00 | 日々の出来事
季節はずれの雪が降っています。

三月の終わりに雪がこんなに積もるなんて驚きです。
嬉しいような、迷惑なような*(結晶)*

しんしんと降る雪の気配に耳を澄ませていると、本棚の一つから、物語の吐息が聞こえてきます。

ふむふむ、どうやら冬の終わる前にどうしても紹介してもらいたいらしい*(ダッシュ)*

そういう訳で今回は、冬のある日に少女と共に現れた雪のように白い一羽のグース(雁)の物語。

ポール・ギャリコの初期の代表作。
『スノーグース』をご紹介します☆

動物達との不思議な絆を集めた短編集。

実は私も、体験があります。

以前にも一度書いたのですが、何年か前、母親が乳ガンと宣告され、いよいよその手術の当日という朝。
家で飼っていた犬が死んでいたのです。

悲しむ暇もなく、裏山に埋葬して病院に行ってみると、母親の手術は中止。
執刀医の先生が触診した結果、疑問点があるとのことで再検査。
結果的に乳ガンではなかったことが判明しました。

母親などは、犬が身代わりになってくれた、と言っていましたが、偶然とはいえ確かに不思議なめぐり合わせを感じました*(星)**(キラキラ)*

「スノーグース」の主人公ラヤダーは生まれついての”せむし”男。

おまけに左腕が、まるで鳥の鉤爪のように手首から折れ曲がってしまっています。

一人世間から離れ、灯台小屋で絵を描いて暮らす彼の友達といえば、周りに広がる大沼にやってくる野性の鳥だけ。

孤独とはいえ、自然を愛し、心根の優しい彼は、小さなヨットに乗って鳥たちを訪ね、鳥たちの良き保護者となることに満足していました。

そんなある年の冬。
めったに人間の訪れない灯台小屋に、一人の少女がやむにやまれずやって来ます。

少女の名前はフリス。
彼女は抱えた傷ついた鳥を助けるために、怖さも忘れてこの人食い鬼とウワサされる男の住みかにやって来たのです。

せむし男と少女*(びっくり2)*

これはどこかで聞いたことのありそうな、よくある恋物語になるのでは?

と、早合点してしまうのが、やたら数だけは読んでいるエセ読書家の悲しい浅はかさ。

とんでもない。
確かにラヤダーはいい奴だし、フリスもしだいに惹かれてはいくみたいだけれど、この物語はそう簡単には終わらない。

フリスの連れてきた鳥。
スノーグースを「迷子の王女さま」と呼んで世話をする二人。

しかし時あたかも第二次世界大戦。
ドイツ軍の猛攻に追い詰められ、フランスのダンケルクの海岸で孤立するイギリス軍。
海峡を渡り、兵士たちを助け出すためには舟がいる。
それも、浜辺に近づける小型のヨットのような船が…

傷ついた鳥がいたら、見捨てることのできないラヤダー。
いまやすっかり慣れて彼の周りを飛ぶスノーグース。

そして兵士たちは見るのです。
砲弾の飛び交う中、ゆっくりと近づいて来る小さなヨットと、その上を天使のように飛ぶ白いグースの姿を☆

短い作品ですが、その中に込められたメッセージは爽やかに透き通った冬の空のように読んでいて気持ちがいい。
しかも、心の奥底にあったかい温もりを残していってくれます。

ハッピーエンドではないけれど、ある意味、これ以外にない終わり方なのかも知れません。
うん、これが「物語」っていう終わり方です☆

この他に、身寄りはなくても、兄弟のようなロバ、ヴィオレッタと共に懸命に生きる十歳の少年が、ついにはヴァチカンの法王庁をも動かす「小さな奇蹟」*(音符)*

どうしても「今年もっとも優秀な牝牛」として、その身に花飾りを纏いたいと願う乳牛を主人公にした、可笑しくも心に残る物語「ルドミーラ」*(星)**(キラキラ)*

どれも動物たちが活躍する三編を収録した短編集。

動物たちを人間と同じように見ることのできる作者の視点がとっても好感が持てます*(音符)*

なんでも無類の猫好きで、猫を主人公とした小説でも有名なんだとか。(夏目漱石とはちょっと違う)

人間だけの世界に飽きたら、ちょっと周りを見渡して、この世界の住人が、人間だけではないのに注意を向けたら如何ですか?

きっと新しい気持ちで、世界を眺めることができますよ☆






ポール・ギャリコ  著
矢川 澄子  訳
新潮文庫