十月の名言集 2007-10-04 22:49:00 | 本と日常 或る日(昭和三年九月二十八日)今日はあの人の結婚する日だ。秋が天上の精気を街に送る。こんな日に少女が人に嫁ぐのはいい。山でも一緒に歩きたいほどあのいきいきした好い青年がこんな日に少女の肌を知るのはいい。むづかしい儀式と荘厳とがあの二人を日ねもす悩ますさうだが、何もかもどしどし通過して結局二人きりになればいいのだ。さうしてこの初秋のそよそよする夜に二人一しよにねればいいのだ。 ―高村光太郎「高村光太郎詩集 草野心平編」収録―