私的図書館

本好き人の365日

『どこからも彼方にある国』

2011-03-09 09:30:00 | 本と日常
アーシュラ・K・ル=グィンの新作?

と思って本屋さんで手に取ってみました。

*(キラキラ)*『どこからも彼方にある国』*(キラキラ)*(あかね書房)

みんなからはみ出さないように。仲間外れにならないように。笑顔を作り、必死で自分の居場所を確保しようとしている同級生たちに違和感を持ち、他人と違うことに悩むアメリカの高校生オーウェン。

家族を傷つけたくはないけれど、理解してくれるとは思えない。相手を思いやってのウソはなぜだかすぐにバレるし、自分だってできることならうまく立ち回りたい。
でもそれができないんだ。

『闇の左手』などのSF作品や、スタジオジブリで映画化もされた『ゲド戦記』などのファンタジー作品で有名なル=グィンですが、この作品は珍しい青春小説。

オーウェンの前に作曲家志望の女の子ナタリーが現れ、二人はようやく自分の思いを打ち明けることのできる相手にめぐり合うのですが、オーウェンはまたしても「普通の男女ならこうなるはず」と世間で言われている価値観に囚われ、ナタリーの気持ちも考えずに、友情という一線を越えてナタリーを傷つけてしまいます。

何でも私に決めさせようとしないで。大切なことは一緒に決めるべきじゃない?

というナタリーの言葉に、女性と男性の関係に深い興味を持ち、かつてフェミニスト活動家とも呼ばれたル=グィンの思いが表れているように思いましたが、ちょっと最近の作風と違うので調べてみたら、この作品は1976年に発表され、日本でもコバルト文庫で『ふたり物語』として出版された作品の再版物だとわかりました。

なんだ、そういうこと。

たとえそうだとしても、ル=グィンの魅力は満載。
私は楽しめました♪

友達や両親、周りに期待される自分を演じるのはオーウェンにモヤモヤしたものを感じさせます。

オーウェンはナタリーに、自分が幼い頃から想像の中で作り上げた自分の国、「ソーン」について語ります。

その国は、海の上に浮かぶ小さな島にある国で、すべての国から離れているため、独自の文化と風習を持っていて、オーウェンは好きなように想像の羽を広げて思い描くことができるのです。

どこからも彼方にある国…

オーウェンとナタリーは二人でその国の音楽を考え、ナタリーが作曲を約束してくれます。

二人の間に、海岸でのあの事件が起こるまでは…

思春期の男女を主人公に、他人の中の自分という存在に悩んだり、他人との違いに葛藤し、男女の関係についても描いた物語。

面白かったです☆