私的図書館

本好き人の365日

「岩手の人」

2011-03-13 13:52:00 | 本と日常
アパートの庭先にある梅の木が、ようやく花をつけました。
町を囲む山々には雪がまだ残っていますが、春は確実に近づいてきているんですね。

どんなに厳しい冬の時にも、変わらず花をつけ続ける、そんな木々や草花を見て、ちょっと勇気をもらいました。

今日、3月13日は詩人で彫刻家としても知られた高村光太郎の生まれた日です。

代表作は「智恵子抄」

彼は終戦後の一時期、岩手県、現在の花巻市で農耕自炊の生活を送っています。





    岩手の人



 岩手の人眼(まなこ)静かに、

 鼻梁(びりょう)秀で、

 おとがひ堅固に張りて、

 口方形(ほうぎょう)なり。

 余もともと彫刻の技芸に游ぶ。

 たまたま岩手の地に来り住して、

 天の余に与ふるもの

 斯の如き重厚の造型なるを喜ぶ。

 岩手の人沈深(ちんしん)牛の如し。

 両角の間に天球をいただいて立つ

 かの古代エジプトの石牛に似たり。

 地を往きて走らず、

 企てて草卒(そうそつ)ならず、

 つひにその成すべきを成す。

 斧をふるつて巨木を削り、

 この山間にありて作らんかな、

 ニツポンの背骨岩手の地に

 未見の運命を担ふ牛の如き魂の造型を。




         ―高村光太郎(1949年)―




*今回の震災では岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県や青森県、その他多くの地域で被害が出ています。
被災された方、また家族や友人が被災されて大変心配なさっている方々にお見舞い申し上げます。
頑張って下さい。