09.12/1 577回
三十八帖 【鈴虫(すずむし)の巻】 その(7)
この法会は、宮の御念誦堂開きの内々の催しのおつもりでしたが、帝も朱雀院もお聞き及びになって、勅使や御使いが使わされました。御誦経のお布施など置きどころのないほど賜りました上に、華やかな御寄進までありましたので、僧たちは夕方帰る寺にお布施の品々を置ききれないほど、たくさん頂いておいとましたのでした。
源氏は、
「今しも心苦しき御心添ひて、はかりもなくかしづき聞こえ給ふ」
――女三宮がご出家された今になって、花の盛りを、ああもったいないと思う気持ちがつよくなって、いっそう心を込めてお世話なさる――
朱雀院は、お譲りになった三條の宮に女三宮が別居してお住まいになる事も、ゆくゆくはそのようになるのであるから今からのほうが安心でしょうと、源氏におっしゃるのですが、源氏は、
「よそよそにてはおぼつかなかるべし。(……)なほ生ける限りの志をだに、失ひはてじ」
――別居では気がかりでなりません。(お側でお世話申すことを怠っては私の本意に背きます。死ぬまではいくらもない命ですが)生きている限りは、私の厚意を失いたくありません――
とおっしゃりながらも、一方では三條の宮を念を入れて立派に修理なさるのでした。
ではまた。
三十八帖 【鈴虫(すずむし)の巻】 その(7)
この法会は、宮の御念誦堂開きの内々の催しのおつもりでしたが、帝も朱雀院もお聞き及びになって、勅使や御使いが使わされました。御誦経のお布施など置きどころのないほど賜りました上に、華やかな御寄進までありましたので、僧たちは夕方帰る寺にお布施の品々を置ききれないほど、たくさん頂いておいとましたのでした。
源氏は、
「今しも心苦しき御心添ひて、はかりもなくかしづき聞こえ給ふ」
――女三宮がご出家された今になって、花の盛りを、ああもったいないと思う気持ちがつよくなって、いっそう心を込めてお世話なさる――
朱雀院は、お譲りになった三條の宮に女三宮が別居してお住まいになる事も、ゆくゆくはそのようになるのであるから今からのほうが安心でしょうと、源氏におっしゃるのですが、源氏は、
「よそよそにてはおぼつかなかるべし。(……)なほ生ける限りの志をだに、失ひはてじ」
――別居では気がかりでなりません。(お側でお世話申すことを怠っては私の本意に背きます。死ぬまではいくらもない命ですが)生きている限りは、私の厚意を失いたくありません――
とおっしゃりながらも、一方では三條の宮を念を入れて立派に修理なさるのでした。
ではまた。