09.12/10 586回
三十九帖 【夕霧(ゆうぎり)の巻】 その(1)
源氏(六条院) 50歳 8月~冬まで
薫 3歳
紫の上 42歳
女三宮 23~24歳
夕霧(大将) 29歳
(正妻雲井の雁との間に4男、4女の8人の子ども)
(妾の藤典侍との間に2男、2女の子供)
雲井の雁(故柏木の異母妹) 31歳
△柏木(故君、故大納言)
柏木の姉弟たち(弘徽殿女御、佐大弁、蔵人少将)
落葉宮(一條宮、故柏木の正妻、御父は朱雀院。異母妹の姫君が女三宮)
一条御息所(落葉宮の母君) のち逝去
「まめ人の名をとりて、さかしがり給ふ大将、この一條の宮の御有様を、なほあらまほしと心にとどめて、大かたの人目には、昔を忘れぬ用意見せつつ、いとねんごろにとぶらひ聞こえ給ふ」
――(夕霧の大将は)堅人であるというご評判で、尤もらしくしていらっしゃいますが、一条宮(落葉宮)のことを、やはり理想的な方とお思いになって、表向きは故柏木との友情を忘れないためにというふうに、見せかけてはお心を込めて親切にご訪問なさいます――
「下の心には、かくては止むまじくなむ、月日に添へて思ひまさり給ひける」
――内心では、このまま無事にはすまされそうになく、是非とも宮を手に入れたいものだと、思いは勝るのでした――
落葉宮の母君の御息所も、夕霧の親切さに、寂しいご生活が慰められるのを有難いと思っていらっしゃる。
夕霧は、
「初めより懸想びても聞こえ給はざりしに、ひき返しばみなまめかむも眩ゆし、ただ深き志を見え奉りて、うちとけ給ふ折もあらじやは、と思ひつつ、さるべき事につけても、宮の御けはひ有様を見給ふ。」
――自分は最初から宮に対して懸想らしく振舞うことなどなかったのに、今更急に懸想らしくするのも気恥かしい。ただ自分の心情をお見せしていれば、そのうちきっと宮の方からお心を許して来られる折も無くは無いであろうとお思いになっては、何かにつけて、宮のお気持やご態度に気をつけているのでした――
それにしても、
「自らなど聞こえ給ふことはさらになし。いかならむついでに、思ふことをもまほに聞こえ知らせて、人の御けはひをも見む」
――落葉宮ご自身が、私(夕霧)に直接応対なさることは絶対に無いであろう。いったい何時自分の思いを申し上げて、宮のお気持をも知りたいものだが――
と、考え続けていらっしゃったところ、御息所が物の怪にひどく患われて、小野(比叡山の西麓)という辺りに持っていらした山荘にお移りになりました。
ではまた。
三十九帖 【夕霧(ゆうぎり)の巻】 その(1)
源氏(六条院) 50歳 8月~冬まで
薫 3歳
紫の上 42歳
女三宮 23~24歳
夕霧(大将) 29歳
(正妻雲井の雁との間に4男、4女の8人の子ども)
(妾の藤典侍との間に2男、2女の子供)
雲井の雁(故柏木の異母妹) 31歳
△柏木(故君、故大納言)
柏木の姉弟たち(弘徽殿女御、佐大弁、蔵人少将)
落葉宮(一條宮、故柏木の正妻、御父は朱雀院。異母妹の姫君が女三宮)
一条御息所(落葉宮の母君) のち逝去
「まめ人の名をとりて、さかしがり給ふ大将、この一條の宮の御有様を、なほあらまほしと心にとどめて、大かたの人目には、昔を忘れぬ用意見せつつ、いとねんごろにとぶらひ聞こえ給ふ」
――(夕霧の大将は)堅人であるというご評判で、尤もらしくしていらっしゃいますが、一条宮(落葉宮)のことを、やはり理想的な方とお思いになって、表向きは故柏木との友情を忘れないためにというふうに、見せかけてはお心を込めて親切にご訪問なさいます――
「下の心には、かくては止むまじくなむ、月日に添へて思ひまさり給ひける」
――内心では、このまま無事にはすまされそうになく、是非とも宮を手に入れたいものだと、思いは勝るのでした――
落葉宮の母君の御息所も、夕霧の親切さに、寂しいご生活が慰められるのを有難いと思っていらっしゃる。
夕霧は、
「初めより懸想びても聞こえ給はざりしに、ひき返しばみなまめかむも眩ゆし、ただ深き志を見え奉りて、うちとけ給ふ折もあらじやは、と思ひつつ、さるべき事につけても、宮の御けはひ有様を見給ふ。」
――自分は最初から宮に対して懸想らしく振舞うことなどなかったのに、今更急に懸想らしくするのも気恥かしい。ただ自分の心情をお見せしていれば、そのうちきっと宮の方からお心を許して来られる折も無くは無いであろうとお思いになっては、何かにつけて、宮のお気持やご態度に気をつけているのでした――
それにしても、
「自らなど聞こえ給ふことはさらになし。いかならむついでに、思ふことをもまほに聞こえ知らせて、人の御けはひをも見む」
――落葉宮ご自身が、私(夕霧)に直接応対なさることは絶対に無いであろう。いったい何時自分の思いを申し上げて、宮のお気持をも知りたいものだが――
と、考え続けていらっしゃったところ、御息所が物の怪にひどく患われて、小野(比叡山の西麓)という辺りに持っていらした山荘にお移りになりました。
ではまた。