永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(589)

2009年12月13日 | Weblog
09.12/13   589回

三十九帖 【夕霧(ゆうぎり)の巻】 その(4)

 そのようなことで、お客さまの夕霧をお通しするお部屋がありませんので、落葉宮のお部屋の御簾の前にお入れして、身分のある女房が、お言葉をお取り次ぎになります。

 御息所のお言葉は、

「いとかたじけなく、かうまで宣はせ渡らせ給へるをなむ。(……)」
――こんなにご親切におっしゃって、お出でくださいまして大変恐縮に存じます。(もしも私が亡くなってからでは御礼も申し上げずになってしまうと考えますと、もう少し生きていたいと存じます――

「宮は奥の方にいと忍びておはしませど、ことごとしからぬ旅の御しつらひ、浅きやうなる御座の程にて、人の御けはひ自づからしるし」
――落葉宮は奥まったところにいらっしゃるようですが、何しろ仮のお住まいで、そう広くありませんので、宮の気配は自然に感じられます――

 夕霧は、

「いとやはらかにうちみじろぎなどしたまふ御衣の音なひ、さばかりななりと聞き居給へり。」
――やわらかく、身動きなどなさる衣ずれの音で、きっとその方が落葉宮であろうと、想像して聞いておられます――

 夕霧は気もそぞろで、侍女が御息所へのお取り次ぎの合間に、少将の君(御息所の甥の大和守の妹)に問わず語りにお話しになります。

「かう参り来なれ承る事の、年頃といふばかりになりけるを、こよなう物遠うもてなさせ給へるうらめしさなむ。……」
――こうしてお伺いし始めてから何年(三年)という程になりましたのに、この上もなくよそよそしい御もてなし受けますのは、恨めしゅうございます……――

ではまた。