◎色川大吉さんと菅原文太さんの接点
二〇一二年一月一五日に、NHK教育テレビで放映された「自由民権 東北で始まる」(「日本人は何を考えてきたのか」シリーズ第二回)では、歴史家の色川大吉さん、憲法学者の樋口陽一さん、元俳優の菅原文太さんの三人が語り合う場面があった。これを視聴しながら私は、色川大吉さんと菅原文太さんという組み合わせに、歴史の偶然、歴史のおもしろさを感じた。なぜか。おふたりとも、「アウトローの世界」に深く関わっているからである。
菅原文太さんは、俳優としてアウトローの世界を演じてきた。一方で、色川大吉さんが、研究テーマとしてきた自由民権運動というのは、実はアウトローの世界と深く結びついた運動だったのである。
自由民権運動が、アウトローの世界と深く結びついていたというと、意外に思われる方もおられるかもしれないが、これは厳然たる事実である。不審の念を抱かれる方は、ぜひ、長谷川昇の名著『博徒と自由民権』を手にとっていただきたい。同書は、最初、中公新書の一冊として世に出たが(一九七七)、その後、平凡社ライブラリーに収められている(一九九五)。斬新な発想、周到な論述、過不足ない構成、文字通り、古典的な名著である。
色川大吉氏にも、『流転の民権家――村野常右衛門伝』(大和書房、一九八〇)という好著がある。その主人公・村野常右衛門〈ツネエモン〉は、東京町田の豪農の出身で、自由民権運動の闘士として、大阪事件に連座した。大阪事件は、代表的な自由民権激化事件である。村野はその後、「三多摩壮士」と呼ばれるアウトロー集団を率いながら、衆議院議員・貴族院議員となった。晩年には、博徒の全国組織「大日本国粋会」の会長も務めた。
つまり、色川大吉さんと菅原文太さんとの間には、自由民権=アウトローという共通項が存在していたのである。
秩父事件もまた、このおふたりの共通項である。色川大吉さんは、『秩父事件史料集成』全六巻(二玄社、一九八四~八九)の編集に携わった。一九八〇年(昭和五五)に放映されたNHKの大河ドラマ『獅子の時代』では、菅原文太さんが演ずる主人公・平沼銑次が、秩父事件に関与している。
もう少し、アウトローの話を続けたいところだが、とりあえず明日は、話題を変える。