風吹く豆腐屋

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遠い太鼓

2010-06-27 02:01:12 | Weblog
 そう、ある日突然、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。それは旅に出る理由としては理想的であるように僕には思える。シンプルで、説得力を持っている。そして何事をもジェネラライズしてはいない。

 ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。

 それでいいではないか。遠い太鼓が聞こえたのだ。今となっては、それが僕を旅行に駆り立てた唯一のまっとうな理由であるように思える。

                                   村上春樹「遠い太鼓」より引用

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またかと怒られそうですが、村上春樹ネタです。 


実習が終わると同時に飛び出す旅行の準備をしています。
準備とはいっても心構えだけ(笑)

村上春樹の「遠い太鼓」を読むと旅行に出かけたくなり、
旅行が一層楽しめるという話を聞いたので、今読んでいるんです。
心構えとか言いながらそれだけですが…。


僕は村上春樹の小説はたいてい読んだと思うけど、
好きな作家としてはあげたくはないという屈折した気持ちを持っています。

どこか受け入れがたい要素があるのを常々感じているし、
みんなが是とするものに迎合するよりも、
人にはあまり知られていないものを愛好するほうが僕の趣味にあってるのもあって(笑
(これは特にゲームの趣向において著しい 笑)


だけど、無駄な抵抗はやっぱりやめます。

このエッセイを読み始めて、認めないわけにはいかなくなりました。
やっぱりこの人の文章が好きです。

エッセイを読んだのははじめてですが、
文章の至る所にそれぞれの小説の主人公の影を見ることができ、
それぞれ主人公に抱いた共感と親しみをやはり作者にも感じることができました。

端的にいって、面白いです。このエッセイ。
読みながら笑ってしまう箇所も結構あります。
「犬やら文芸評論家やらが怖くて小説書けるか」なんて言いつつ犬に立ち向かうところとか(笑


旅行記だからダイナミックなイベントが起こるはずもなく、手に汗握る展開もありません。
でも、だからこそ自分の日常にかさねて想像することができます。


また、この本を読んでいると英語の勉強意欲がわいてきます。
英語さえ話せたら世界中で全く違う文化圏の人ともコミュニケーションが取れる…
考えてみたら、これってなかなかすごいことですよね。

論文を書いたり読んだりするために英語を勉強しなくちゃいけないなんて消極的な理由じゃなくて
積極的な理由から英語を話せるようになりたいという気持ちになります。

ひきこもり体質の僕にそう思わせるのだから、なかなか大したもの…
聞いた以上にこの本の効力は強かったようです(笑

・・・まぁ、語学力アップは今度の旅行には間に合わないけど!

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ふと、僕にも「遠い太鼓」が聞こえたのかもしれないと思っておかしくなりました。
 
少なくとも「シンプル」で、「説得力」を持っていて、「何事をもジェネラライズしていない」のは確か。

最近、外科の先生方とすれ違うたびに、
旅行の報告すること、国試に受かること、と注意されるようになってしまいました。
…そんなにニヤニヤしなくてもいいのに。

出来の悪さをアピールしすぎてしまったか・・・