ひとつの季節がドアを開けて去り、もうひとつの季節がもうひとつのドアからやってくる。人は慌ててドアを開け、おい、ちょっと待ってくれ、ひとつだけ言い忘れたことがあるんだ、と叫ぶ。でもそこにはもう誰もいない。ドアを閉める。部屋の中には既にもうひとつの季節が椅子に腰を下ろし、マッチを擦って煙草に火を点けている。もし言い忘れたことがあるのなら、と彼は言う、俺が聞いといてやろう、上手くいけば伝えられるかもしれない。いやいいんだ、と人は言う、たいしたことじゃないんだ。風の音だけがあたりを被う。たいしたことじゃない。ひとつの季節が死んだだけだ。
「1973年のピンボール」より
時がたつのは早いものだ。
たったそれだけのことを言うためにこれだけ回りくどい表現ができるって素敵。
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彼女が8人いるというある友人のことを面白おかしく書いてやろうかと思ったけど、
個人情報の問題もあるし褒められた行為じゃないなと思いなおしてやめました。
そんな超軟派なそいつと僕が友達と言うのも不思議なものだけど、類は友を呼ぶとも言う―