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軽減税率のウソを暴く

2019年10月02日 14時53分44秒 | 貧乏人搾取の上に胡坐をかくな
 
 
 
 
斎藤貴男・著「ちゃんとわかる消費税」(河出書房新社・刊)を、西成の図書館で借りて昨日のうちに一気に読んだ。

この本は、消費税が5%から8%に値上げされた2014年に刊行された。それから更に5年経ち、2019年10月からは消費税が10%に値上げされた。既に同じ本の最新版が河出文庫から出ている。軽減税率やポイント還元の事を知るには、最新版の方が良いだろう。文庫版なので電車の中でも手軽に読める。

しかし、最新版は大人向けに書かれているので、仕事で疲れた頭で読むには、少々荷が重いかも知れない。分かりやすさという点では、図書館から借りて読んだ、こちらの旧版の方が良いだろう。旧版には「14歳の世渡り術」の副題が付けられ、難しい漢字には振り仮名が振られ、中学生でも一応分かる文章で書かれている(それでも結構、高度な内容だが(^^;)。

軽減税率やポイント還元についても、消費税について分かりやすく書かれた旧版で、その基本点を抑える事が出来たからこそ、その出鱈目をはっきりと認識出来たのだ。

消費税の問題点として、まず挙げられるのが「逆進性」だ。消費税は、タバコ税や自動車税とは違い、どんな生活必需品にも課税されるので、低所得層ほど負担が大きく、高額所得層の負担は小さい。それが「逆進性」だ。そういう意味では、消費税は「究極の不公平税制」だと言える。

その逆進性を緩和する対策として打ち出されたのが、「軽減税率」であり、「ポイント還元制度」だ。同じハンバーガーを店内で食べれば消費税は10%になるが、持ち帰りにすれば8%になる。酒を買うと消費税10%取られるが、味醂では8%で済む。持ち帰りより外食の方が贅沢(ぜいたく)であり、料理酒の味醂は生活必需品だが、嗜好品の酒は贅沢品だからという理屈だ。現金決済にせずにポイントで買い物すれば、更にお得になる。

でも、そもそも消費税とは、たまたま最後に税金を払うのが消費者だから、そう呼ばれるようになったに過ぎない。その前の、仕入れや製造の各段階でも、それぞれの業務に携わる業者の方々が、消費税を税務署に払っている。勿論、二重に課税されるのを防ぐ為に、既に先の段階で支払われた消費税分は控除される仕組みにはなっているが。(上記「消費税の負担と納付の流れ」図参照)
 
だから、本当は「消費税」ではなく「取引税」「付加価値税」と呼ぶべきものだ。「付加価値」とは、仕入れ卸や製造、輸送などの業務や取引・サービス全体の総称だ。持ち帰りのハンバーガーを包む紙を製造する業者にも、味醂の瓶を製造する業者にも、それぞれ8%なり10%なりの消費税が課されている。その中で、小売店で消費者が購入する最終段階だけ、軽減税率にしたりポイント還元しても、ほとんど意味がない。
 
そもそも、軽減税率やポイント還元も、それが出来るだけの余裕のある業者や消費者にしか、その恩恵に浴する事は出来ない。いずれにしても、西成・あいりん地区の弁当屋や、その弁当で糊口をしのぐ日雇い労働者には無縁の世界だ。誰が400円の幕の内弁当をクレジットやポイントで買うか?訳ありで西成に流れ着き、住民票や銀行口座も持っていない飯場暮らしの労働者も少なくないのに、そんな住民に、どうやってポイント還元出来ると言うのか?そもそも、持ち帰り弁当の消費税は8%に据え置きの筈じゃないか。それが何故、50円もの値上げになるのか?

同じ事は弁当屋にも言える。400円の幕の内弁当も買えず、100円のご飯と80円の味噌汁だけで夕食を済ます人も多いのに、そんな人に更に消費税を上乗せして売る事なぞ出来るか?そんな事をしたら、誰も弁当を買ってくれなくなる。

しかし、弁当屋には、食材やトレイなどの具材を提供する業者から、消費税分が上乗せされた請求書が容赦なく送られて来る。その為、薄利多売で頑張って来た弁当屋も、遂に値上げに踏み切らざるを得なくなる。客離れを最小限に食い止めるには、売れ筋の弁当価格は据え置いたまま、低価格帯の弁当を値上げするしか無い。
 
しかも、どの業者も原価に消費税分を上乗せできるとは限らない。下請けは元請けに頭が上がらず、中小企業も大企業には頭が上がらない。中小の納品業者が消費税分を上乗せして商品を大手スーパーに納めようとしても、大手スーパーから「もっと値下げしてよ」と言われれば、納品業者は消費税分を自腹を切って負担しなければならない。そうしないと取引停止されてしまうからだ。

だから、売れ筋の唐揚げ弁当は500円に据え置いたまま、400円の幕弁当を450円に、一気に50円も値上げせざるを得ないのだ。8%から10%に2%の消費税値上げだけなら、こんな50円もの値上げにはならない。

かくして、消費税値上げは、軽減税率やポイント還元とも無縁の日雇い労働者や、日雇い労働者から「早くしろ」とせき立てられる薄給激務の弁当屋パート従業員に、最もしわ寄せが行く事になる。
 

あいりん地区以外の下町でも事情は同じだ。あいりん地区の隣の天下茶屋にあるイズミヤで買い物して、隣の整骨院で治療してもらい、向かいの和菓子屋で100円のアイスクリンを買うのが、私の公休日の朝の日課だ。しかし、その100円のアイスクリンも、この10月から110円に値上げされた。

和菓子屋のおっちゃん曰く、「他の和菓子は全て価格据え置きで頑張ってるが、このアイスクリンだけは、流石に100円ではやって行けないので、110円に値上げせざるを得ない」と。

私もそれに応え、「おっちゃんは何も悪ないよ。マスコミは軽減税率とか言って、持ち帰りは消費税8%に据え置きだとか言っているが、このカップのコーンや、それを包んでいる紙にも、消費税10%かかっている。おっちゃんはその10%を全て自腹切って税務署に払いながら、私に売るアイスクリンを110円に抑えてくれてんねや。

悪いのは、それをあたかも恩恵みたいに言うマスコミだ。テレビも新聞も、自分達が軽減税率の対象になっているから、安倍政権に逆らえないのだ。今のマスコミは戦時中の大本営や、今の北朝鮮と同じだ!」と、おっちゃんに励ましの言葉をかけてあげた。
 
おっちゃんも、「ほんまにその通りや!モリカケにしても、そうやんか!上の奴らばっかり、ええ目して!安倍は二言目には北朝鮮がどうたらこうたら言うけど、お前らの方がよっぽど北朝鮮みたいやないか!」と、大いに話が盛り上がったv。
 


それに引き換え、輸出産業の大企業はどうか?米国には消費税なぞ無いから、トヨタ自動車の米国への輸出には、「輸出戻し税(消費税還付金)」の形で、消費税分が丸々還元される仕組みになっている。その一方で、トヨタ自動車は、部品メーカーに対しては、取引停止をチラつかせながら、コストダウンの名目で、下請け単価を叩きまくっている。消費税も下請けにしわ寄せしながら、輸出にかかる消費税はチャラにしてもらっているのだ。

大企業に課せられる法人税も、名目は40%だが、実際は前記の「輸出戻し税」や研究開発減税などの形で、実際はごく僅かの税率しか負担していない。所得税も、以前は所得に応じて19段階、10〜75%の累進課税だったのが、今や6段階、5%〜最高でも40%と、高額所得者ほど税負担が軽くなっている。だから、法人税や所得税については、滞納はほとんど無い。国税庁HPの統計でも、2017年(平成29年)度滞納額6154億円のうちの約6割、実に3632億円が消費税によるものだった。

今年10月からの消費税10%への値上げ前も、「消費税が払えないから」と廃業する業者が相次いだ。真っ当に商売して来た業者ほど、顧客や下請け、従業員に増税コストをしわ寄せするのは忍びないと、廃業する道を選んだのだ。

残った業者が生き残るには、西成の弁当屋のように、より下の日雇い労働者やパート従業員に、犠牲を強いざるを得なくなる。元々貧しかったそれらの人々に、更に消費税値上げの重圧がのし掛かる事になる。(# ゚Д゚)

物価値上げと賃下げ、増税の行き着く先は、もはやデフレスパイラルしかない。不況と貧困の連鎖が果てしなく続く事になる。消費税は、まさに「悪魔の税」だ。
 
 

消費税値上げが10月からと言うのも、何だか皮肉にしか聞こえない。10月と言えばハロウィン。子供達が「Trick or Treat」(トリック・オア・トリート:お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ)と言って練り歩く季節だ。まるで徴税官が「Tax or Threat」(タックス・オア・スリート:税金払わなければ差押えするぞと脅迫)している様に聞こえる。その一方で、大企業や高額所得者は、税金大負けの大盤振る舞い。

逆じゃないか。そんなに財源が無いなら、大企業や高額所得者の遊休資産や、景気が冷え込んで使い道がなく眠っている内部留保、カジノ投機やオリンピックの無駄遣い、贅沢品にこそ、消費税20%でも30%でも課税すべきではないか。逆に、それを買わなくては生きていけない様な、なけなしの生活必需品については、軽減税率やポイント還元などのマヤカシではなく、すっきりと消費税をタダにすべきではないか。

かつては直接税や累進課税が税制の中心だった。「まず払える者から税金を払う」という「応能負担」が税制の基本だった。それがいつの頃からか、直接税から間接税に、所得税や法人税から消費税に、税制がシフトし、「サービスを受ける者が税金を払う」「応益負担」を唱える者が跋扈(ばっこ)するようになってしまった。

贅沢品への課税なら、「応益負担」でも良いだろう。でも、最低限の必需品や公共サービスについては、「応益負担」ではなく「応能負担」に戻すべきだ。障がい者の僅かな収入から作業所利用料をピンハネしたりするような阿漕な真似なぞ論外だ。誰しも好き好んで障がい者になった人間なぞいない。現にマレーシアのマハティール政権は、消費税を廃止して、景気浮揚に成功している。日本も早くそうすべきだ。

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