アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

チン電の光と影

2016年12月30日 08時32分07秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ

 この12月3日より、阪堺電車上町線の終点・天王寺駅前付近が新しい線路に切り替わったと聞いて、先日早速乗って来ました。
 切り替わったのは、上町線の終端部分、阿倍野から天王寺駅前までの1区間です。都市計画道路長柄・堺線(阿倍野筋)の拡幅工事に伴い、道路上の併用軌道も全面的に付け替えられる事になりました。

 阪堺電車は、大阪市電が廃止された後も、大阪市内を走る唯一の路面電車として、「チン電」の愛称で親しまれて来ました。チン電は、昔は歓楽街で通天閣のある新世界と海水浴場のある浜寺公園を結ぶドル箱路線でした。しかし、新世界が寂れ、浜寺の海水浴場も工業地帯に変わり、更に長引く不況や少子高齢化の影響もあって、次第に利用客が少なくなり、一時は廃止も検討されるようになりました。それが、沿線自治体の堺市からの財政補助によって、新型車両の導入や新駅設置が行われるようになり、ようやく再生の途につく事ができるようになったのです。
 数年前には大幅なダイヤ改正が行われ、今まで支線扱いだった上町線が、事実上の本線に昇格し、浜寺駅前から天王寺駅前まで直通電車が走るようになりました。このダイヤ改正については、私も過去にこのブログで取り上げた事がありますが、当時は改正効果については懐疑的でした。しかし、天王寺に乗り換えなしで行けるようになった事で、利用客が次第に増えつつあると聞き、私の懐疑は嬉しい誤算に終わりました。
 しかし、その反面、今まで本線だった阪堺線が、車庫のある我孫子道で南北に分断される形になり、浜寺公園から恵美須町に行くには一旦、我孫子道で乗り換えなくてはならないようになりました。しかも、住吉で上町線と分かれた後は、1時間に3本しか走らないダイヤとなってしまいました。これでは更に利用離れが進む事になるでしょう。

(関連記事)

12月3日(土)初発より、上町線天王寺駅前駅~阿倍野駅間の軌道が新線に切り替わります。(阪堺電気軌道HP)
路面電車の良さを何故もっとアピールしないのか?(拙ブログ)
天王寺直通化は阪堺電車再生の決め手にならず(同上:こちらの記事は嬉しい誤算に終わりそうですが…)

 

 それでは、新鮮切り替え後の上町線乗車レポートを書いていきます。
 上町線は、住吉で阪堺線と分かれ、専用の線路を走る専用軌道と、道路上を走る併用軌道の区間をそれぞれ走った後、松虫から阿倍野筋に入ります。阿倍野筋に入って当初は、まだ昔の路面電車のように、従来の併用軌道を走ります。(左上の路線図参照。左の緑色の線が住吉以北の阪堺線、右の青色の線が上町線。路線図は阪堺電車HPからお借りしました。右上写真の遥か前方に見えるのが超高層ビルのあべのハルカス)

 

 終点1つ手前の阿倍野から新しい軌道に入ります。左にはアベノキューズモールのビル街が現れ、前方のあべのハルカスも更に威容を増して来るようになります。

 

 新しい線路は関西初の芝生軌道です。架線柱も現代的なデザインのセンターポールに変わりました。やがて前方に終点の天王寺駅前電停が見えてきます。

 

 終点の天王寺駅前です。ここだけは車内改札ではなく改札口での運賃収受となります。この写真には写っていませんが、改札を出たら歩道橋に上がる左階段と地下道に降りる右階段があり、右階段の下には、改札に上がるエレベーターも新たに設置されました。今までの場末感ただよう駅のイメージは完全に一掃されました。
 なお、新鮮切り替え工事が完了したのは阿倍野から天王寺駅前までの区間だけで、阿倍野の交差点付近はまだ工事中です。阿倍野電停の下り線ホームと交差点付近の線路も、交差点を横断する部分以外は、順次、芝生軌道とセンターポールに切り替えられる予定です。 

 上が天王寺駅前電停を南西から北東方向に(あべのハルカスに向かって)撮った写真。下は北西角(アベノキューズモール側)から南東方向に撮った写真。

 

 これまで観て来た上町線の新線部分が「光」とするなら、こちらは「影」に当たるのでしょうか。平均6分間隔で電車が運行される上町線とは違い、阪堺線の住吉以北は、ダイヤも平均1時間に3本まで削減され、恵美須町を出た電車も全て我孫子道止まりになってしまいました。ターミナル駅の恵美須町も、2面2線の無人駅となり、平野線も乗り入れ乗客でごった返していた昔の面影はもはやありません。

 その阪堺線の北天下茶屋電停に面して、コーヒールンバという喫茶店があります。北天下茶屋駅の下りホームから直接入れる喫茶店として、地元のタウン誌にも紹介された事があります。私も、上町線に乗った日とはまた別の日に、この喫茶店でコーヒーをいただきました。なかなか古風で落ち着いた雰囲気の喫茶店でした。

 そのコーヒールンバのママによると、ダイヤ削減で電車待ちの客が喫茶店を利用するようになり、かえって客足が増えたようだというお話でした。でも、下の北天下茶屋駅の時刻表を見ると、更に寂寥感がこみ上げて来ます。大阪市内のチンチン電車でありながら、1時間に3本しか電車が無く、それも毎時2分、14分、38分の不等時間隔ダイヤで、平日20時以降は30分間隔、22時以降は1時間に1本のローカル線並みのダイヤとなってしまったのですから。日曜祝日はもう少し増便となりますが、本数はほとんど変わりません。(下記写真の時刻表参照)

 現在、阪堺線北端の恵美須町から、更に路線を伸ばして日本橋の電器屋街や難波の繁華街をぐるっと回る新路線の建設計画があるようです。しかし、この計画も、堺筋の軌道敷設や沿線商店の移転交渉がなかなか進まず、今のままでは計画倒れに終わりそうな気配です。 難波のターミナルとも直結するようになれば、少なくとも近場の利用客は増えると思います。それでも、並行路線で大手私鉄の南海電鉄とは、スピードでは勝負になりませんが、「気軽に乗れる」というチン電ならではの強みを生かす事で、利用アップにつなげる事は可能ではないでしょうか。この延伸計画、何とか実現して欲しいものです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 社員から最初に受け取ったパ... | トップ | 今年最大の成果 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ」カテゴリの最新記事