脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

脳と体と 太極拳で認知症予防も

2010年03月16日 | 認知症予防講演会

ちょっと前になりますが、長野県安曇野市に行ってきました。
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予想を上回る600人くらいの参加者で、関係者は資料が足りなくて忙しい思いをしながらも喜んでいる様子が伝わってきました。

講演後の担当保健師さんからのお手紙には
「認知症予防の関心が高いこと。
一方で地元新聞でも認知症の特集が組まれていても介護の大変さばかりが強調されていること。
まだまだ、予防や回復が可能ということが周知されていないこと。
教室開催の依頼が来たこと」などが記されていました。続いて
「住民の方々との交流の中で、元気になっていかれる様子を見ることができてとてもうれしく思います。やはり人は人の中で生活することが大事ですね。それを楽しみながらワクワクすると頭も体も元気になるということを実感しています」
なんて素敵な実感でしょう!多くの保健師さんたちにこのような仕事をさせてあげたいと心から願います。

ところで、講演に先立って、太極拳教室の演武(発表会)をやるということで楽しみにして伺いました。2010_0301_133800p1000079
この教室は「転倒予防教室」ということで、平成20年度から始まったものだそうです。
「飯島先生という素晴らしい講師が地域にいらっしゃったから、教室をしてみようという発想がわいたのだ」と、担当のO田保健師さんが話してくださいました。

飯島先生、教室の皆さんと昼食をご一緒にしながら、いろいろお話を聞きました。
参加者の皆さんがそれぞれ体の調子が良くなっていった実感を話されましたが、同時に教室に参加することそのものの楽しさを強調されたことが印象的でした。「体調が良くなるから参加することが楽しみ」という表現の方も、「仲間と一緒にやることが楽しい」という方もいらっしゃいました。
和気あいあいとした教室の雰囲気がよく理解できましたので、最後に私が総括して「飯島先生の指導がよかったとどなたがおっしゃるかと思っていましたが・・・」と笑い話で締めくくりました。

飯島先生が「太極拳は呼吸法ですからそれができれば体の不調は改善するものです。みなさんが楽しくやってくださることが大切だと思ってやってきました。そうしたらなんだか皆さん笑顔たっぷり若々しくなってきて」2010_0301_133800p1000080

そこですかず私「そういうときには、脳が若々しくなっているのですよ。
O田さん、脳機能チェックはしたんですか?」と尋ねました。
「最初は転倒予防で始めたものですから、厳密にはしなかったんですが、それでも何人かの方ははっきりと改善のデータがあります。二年目はかなりやっていますが」

飯島先生はこのやり取りを興味深そうに聞いていらっしゃいましたが「これからは、教室の始まりと一年後に脳の検査もしてもらおう!」

講演会の時に配られた資料を読んでください。Img_2 Img_0001_2
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「太極拳教室」で、膝や腰の痛みが軽減されたり、喘息がよくなったりは、とてもわかりやすい改善点です。
それにプラスして感想からわかるようにどなたも「生き方」が積極的になっているのです。これこそがボケ予防!

O田保健師さんと「私たちはどうしても脳をイキイキさせることをまず最初に考えてしまうけど、考えてみたら体が楽に動けるから、生活内容が活発になって、意欲・関心も高まるし脳がイキイキするという循環もあるのねえ・・・」と感動したのです。

高齢の女性が杖をついてようやく教室に参加していたのに、杖なしでどこでも行けるようになったという話も聞きました。
もちろん当日講演会にも来てくださっていたのです。


緩徐進行性失語その2

2010年03月13日 | 左脳の働き・失語症

先日のブログ「失語症の検査」でお知らせした方にお会いする機会がありました。(今日の写真は野沢温泉でのスナップ)

2010_0227_100700p1000052 家族の方(夫)に最近の様子をうかがうと
①自分で用意するときには、食事の支度・洗濯何も変なところはない。(変なところを答えないということは、かなり防衛的に反応している可能性がある。そのつもりで聞いていく必要がある)
「こちらが~してほしいと指示を出すとどうですか?」
「そういうときには、トンチンカンが出てくるけど・・・。一人ならできるんです」と強調。

②人の名前を間違える。(感覚性失語症のため、思った言葉が出てこないのか?質問が理解できていないために見当違いを答えるのか?)

③電話の時はちょっと心配。でも最近メモをとるようになった。(と、またかばう)

④最近、何でも面倒になっているようだ。

①~③は失語症のための症状ですが、④は失語症のためにイキイキとした生活ができなくなったために小ボケになってきていることを意味します。

2010_0227_101900p1000053_2   失語症が進行していくことは覚悟しなくてはいけませんが、それに引きずられて脳全体の老化を加速させないように、本人より以上に家族に対して強力な生活指導が必要になります。
その前提として、いま何が起きているのかをはっきりと知っていただく必要があります。

MMSでは二物品の命名をやりますね。
机の上に「百円玉・口紅・時計・携帯電話・千円札鉛筆・消しゴム・湯のみ」を並べました。
下線が付いている物品名は言えました。4/8

名前が言えない物品でも、すぐに使い方のジェスチュアが出てきて、それを何に使うのかは十分に理解できていることがわかりました。

2010_0227_104000p1000059 口紅が言えないとき
「口紅はつけないからわからんだろう」と助け船が出ます。
「じゃあ、ご主人にお尋ねします。『これは何ですか』」
「口紅だろ」
「ご主人は口紅を使われますか?」
「そうか。言えないんだな、やっぱり」
「そうなんです。ちょうど半分しか言えません。でも何に使うかはよく分かっていらっしゃいますね」

いかに楽しませることができるかが、脳の老化加速にあらがうことなのですから、その前提としてできないこととできることをはっきりさせておくことは重要です。このような過程を持つことで、どんなに本人が困っているかを、家族にわかってもらうのです。
そして生活指導。

2010_0227_110800p1000061この方は仕事一筋だったわけですが、前回の指導で「オセロゲーム」を孫と始めてみたら、なんと腕前は孫よりはるかに強かったそうです。
「結構楽しそうにやってました」と同居のお嫁さん。
「おばあちゃんは、ゲームなんてやったこともない」と切り捨てずに挑戦してみてくださってありがとうございました。

2010_0227_104600p1000060 今回は追加で、音楽を聞くところからやってみることになりました。
演歌でも唱歌でも、聞いているうちに歌いたくなればしめたもの!

そばからお嫁さんが「おばあちゃん、孫にベスト作ってくれたことあったでしょ?」
そこでアドバイス。
「あまり毛糸ではなく、きれいな色の、ちょっといい毛糸を用意してマフラーを編んでもらうのが一番です。糸がおしゃれだと使えるものができます、増減がないから。
それからベストでも他のものでも。モチーフつなぎのこたつかけなんかでもいいでしょ。その時は余り毛糸でもいいんですよ。
色使いを好きなように工夫させてあげてください。色づかいは右脳でやりますからね」と次々に具体的な生活指導につながっていきました。

そばでご主人も結構乗り気で聞いていてくださったのは、キーパーソンにならざるを得ないお嫁さんには、役に立ったはずです。

2010_0227_151500p1000065 今回のセッションで感動的だったのは、ご主人の次の言葉でした。
「一番最初に奥さんがへんだと思ったのは何が起きた時ですか?」
「去年の5月、ブドウの房切りをやるように言って自分は別の仕事をして戻ってきたら、何もやってなかった(元来はそういう仕事ぶりの人ではなかったのに)。びっくりしたけど、まあ一緒にやり始めたら、実に手際よくさっさとやっていった。何か変だと初めて感じた」

緩徐進行性失語症発症の時、家族はこのように「あれっ、変な失敗?!」と印象深く覚えていることが多いです。

2010_0227_143500p1000064奄美大島でお会いした方は「ハンコの意味がわからず何度も説明したけど、結局持ってきて見せたらすぐに納得した」と娘さんが話してくれました。
余談ですがこの人は脳機能検査ではMMSが14/30でした。ところが宅配便の店をやっていて、集荷配達ともにこなしていました。
毎朝地図を書いてもらって!もちろん口頭命令ではありませんよ。

私たちがアメリカで宅配便屋さんでアルバイトできるか?

口頭で指示されたらお手上げですが、地図上で説明されたら配達できますよね。
この人のようにおしゃれすることも、歌を聞いたり歌ったりすることも、これいな景色に感動する事も、オセロなどのゲームをすることも、編み物だって、右脳(と、前頭葉)があれば、アメリカにいても(左脳が動かなくても)出来ることはたくさんあります。


小布施町脳のリフレッシュ教室交流会Ⅱ

2010年03月08日 | 認知症予防教室

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きれいどころの登場には会場が一瞬どよめきました。「この花笠や衣装は公民館にあったものを有効利用したのだ」と、公民館の方から後で耳打ちされました。
そういう発想と実行に移せる力が、みなさんの脳の元気さを物語っています。
よい先生に恵まれているので、毎年どんどん踊りが上手になって、それは驚きですが、やっぱり間違える方もいらっしゃいます。
その人が「頑張ったんですが今年も間違えました」とニコニコと楽しそうにしているところが北部地区の一番の魅力です。

東部地区2010_0226_135700p1000027_2 2010_0226_135900p1000028

あいさつやハモニカ伴奏は高齢者、サポートはボランティアさん。
花帽子に紙テープのイアリング。
こういうところからも教室の和気あいあいさが伝わってきます。きっと楽しく制作されたのでしょうね。
「こんな時に着なくっちゃ」と派手目な羽織が素敵な「東部カンカン娘」。手話で「ふるさと」にも挑戦しました。
副町長さんが、「かわいい・・・」とつぶやいていっらっしゃいましたよ。

東町上町2010_0226_140500p1000029

柝の音にのって登場。
裃姿で「とぅざ~い、とぅざ~い」と口上が始まるのですから、皆さんびっくり。
二代目団十郎の早口芸。
原稿を見ながらでもスムーズなマイクの受け渡しやマイクを口元に寄せて語るなどができたことは、前頭葉の注意分配能力が発揮されたおかげ「です。
早口になったら会場からは、感嘆の声が上がりました。セリフの内容よりは、右脳的に音楽のように「音」をキャッチしたんでしょうね。家紋が一つずつ違っていました!
聞き惚れていて、写真を撮り忘れていました・・・私の注意分配能力低下・・・

第3コミュニティー2010_0226_141800p1000030 2010_0226_142100p1000031

今年からスタート。
ギターのアンプを調整するところから始まりましたので、会場の期待は高まりますよね。調整が済んで「1小節だけ手伝って」と言われた会場の皆さんはどんどん歌ってしまって・・・こんなときにも、私は「皆さんの生き方が変わった?!」と感動しました。
独唱を組み込んだのはよかったですね。会場からは「キティちゃんのひざかけもかわいいじゃない」という声があがり、工夫の甲斐がありましたね。

上松川地区2010_0226_143400p1000035 2010_0226_143300p1000034

2年目ですが、「イベント好きな上松川地区」との紹介があり活動的に教室を楽しんでいるようですね。
リーダーさんの夢に出てきた企画ということで、鉄道唱歌に乗せたお元気体操には会場も一つになって盛り上がりました。
「体も心もリフレッシュ。散歩しながら帰ろうね」と腰を曲げながらの登場、腰を伸ばして退場と、ここにも演出が隠されていました。

山王島地区2010_0226_143900p1000037 2010_0226_143700p1000036

「若いもんには負けない」が合言葉の山王島地区は、一番最初に教室を始めたところです。とにかく続けていっているところが立派。(これからも続けるのですよ!脳の健康に気をつけるのは、誰?→自分。何時まで?→死ぬまでが合言葉ですから)
お面は去年も用意されていましたが今年の方が、ずーっと可愛い。このように去年の踏襲ではなくちょっとでも工夫を入れ込むことが大切なのです。
出し物はハモニカ伴奏つきの「証城寺の狸ばやし」。歌詞をこんなに立派に書くということで積極的に参加することもできるのですね。

飯田地区2010_0226_144700p1000042 2010_0226_144400p1000040 2010_0226_144800p1000043 2010_0226_144800p1000044

諏訪大社の御柱祭と連動したこのような郷土文化があったとは!
会場の皆さんの驚きも伝わってきました。ここに着眼「されたのはどなただったのでしょうか?準備も練習も大変だったことでしょう。
でも、皆さんの脳は確実に若々しくなったと思いますがどうでしょうか
後の席に陣取った飯田地区保健福祉員さんとボランティアさんが、
「用意してるのに!」とか「前向いて!」とか声かけしているのがほほえましく笑ってしまいました。餅投げもあって、舞台と会場が一つになりました。
これは、どこか他の場所で発表するのもいいかもわかりませんね。

大島地区2010_0226_145700p1000048_2

前のブログに書きましたが、持てるもので楽しく工夫するということが大原則です。
無理をしたら続きません。
ただその中で、ちょっと努力をすることが大切なのです。
合唱はそれだけでも右脳を活性化します。その時にこのように動きをつけると効果は倍増。できれば皆さんで意見を出し合って工夫を重ねていけばもっと効果的なのですよ。
来年は、もう少しおしゃれをしてみますか!ウーマンパワーの大島地区ですから。

林・中扇地区2010_0226_150700p1000049 2010_0226_151100p1000051

「ななくさの会」と名前もついています。19年度初登場の時は仮装行列で会場の度肝を抜いたんでしたね。
今年もユニーク。生野菜片手に、口上を述べたり謎かけしたり。この発想力は間違いなく若々しい脳から生まれるのです。
もちろん、その発想に乗れる地区の皆さんの脳も若々しいことになります。
「もと新妻会メンバー。見目形が崩れても気持ちが元気ならいい」と気勢をあげての登場でしたが、「脳が元気なら」と翻訳しながら聞きました。

2010_0226_142700p1000032_2 楽しいひと時でした。
来年も楽しみなのは、私だけではなく教室生の皆さん、支えてくださっている方々、そして間違いなく健康福祉センター千年樹のスタッフのみなさん(一回目から涙をこぼしていましたが、今年みたいに楽しめていても、やっぱり涙目になっていましたね)のはずです。
この写真を見てください。
ノリノリの村さん。村さんの脳活性化も図られていますね!


小布施町脳のリフレッシュ教室交流会Ⅰ

2010年03月07日 | かくしゃくヒント

Top
毎年、確実にレベルアップしてきています。
レベルアップの意味は
①皆さんの取り組み方が、積極的になった。(これは当たり前かもわかりません。だって最初は何をやったらいいのか???のところから始まったのですから)
②皆さんが、楽しもうという姿勢を見せてくれている。
③よりよいものをという工夫や意欲がはっきり感じられる。
④舞台・音響をはじめスタッフの準備が上手になった。

こうして並べたてるよりも、もっと象徴的なシーンからこの交流会は始まったのです。
時は2月26日(金)。開始予定時刻は1:30。

地区によっては、12時過ぎからもう会場入りしたところもあったのですが、みなさん楽しそうに集まってこられておしゃべりに花を咲かせながら、どことなく緊張感も感じられる、なかなかいいムードが漂っていました。
例年と違うのは、会場入り口にテレビが用意されていたこと!
というのも、当日はバンクーバーオリンピック女子フィギュアスケートフリー決勝、浅田真央選手の演技開始予定時刻が1:25。
林所長は「どうしたものか?」とちょっと考えている様子でしたが、キムヨナ選手の演技が始まると、誰かが声をかけて注意を引いたわけではないのに、ほんとに自然に会場の皆さんの耳目がテレビに移っていったのです。2010_0226_132300p1000021

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私はこのシーンに感動していました。
この脳のリフレッシュ教室が一番の目標としていることは、脳の健康を保てるような生活習慣を確立していっていただくところにあります。
オリンピックに関心を持ち、積極的にその試合結果に興味をもつことができる方たち。そしてその結果を「残念」「でも真央ちゃんよくやったよね」「キムヨナはすごかった!」などと興奮しながら語り合う皆さん。それでいながら、交流会開始ということで、すぐに気持ちを切り替えてくださった皆さん。
素晴らしい前頭葉の手綱さばきです!
こういう生活習慣が脳の健康のためには必要不可欠なのです!

交流会が進んでいくにつれて、舞台の楽しさはもちろんのこと、観客の皆さんの様子が去年にましてイキイキとしているのです。歌声も笑い声も大きく楽しげでした。Top1

その様子をプログラムに書き込んであります。

観客ぶりが素晴らしい。
舞台とともに楽しんでいる。

拍手のタイミング
一緒に歌う
ノリが絶妙

「継続は力なり」
交流会を続ける中で、皆さんの生き方が少しずつ変わってきているように感じたのは私だけだったでしょうか?
上手にやることでもなく、感心されることでもなく、第二の人生は私が私らしく楽しむことができる人が勝ちなのです。

私が私らしくと書きましたが、楽しむときには大勢の仲間と一緒の方がより効果的なのは当然です。

趣向を凝らした出し物が多かった今回の交流会で、地味目にまとめていたのが働き者の地区として有名な大島地区。2010_0226_145700p1000047_2

「いいとし重ねていこう いつまでも」とプログラムにありました。
出し物は皆さんの合唱(草津節とももたろうさん)でした。

緊張気味に壇上に並ばれた皆さんが堂々としていて素敵でしたよ。違った環境の中に自分を置いて、できればそれを楽しむということも十分に脳を刺激しますから。
それに、皆さんの歌声には力がありましたし、お若い方も参加され、地区でこの教室を育てていっている様子がうかがわれました。
交流会に参加することで、お互いに取り入れやすいことは取り入れながら、一層の脳活性化を図っていただけたらと思いました。その時のキーワードは「楽しむ」ですよ。

ギター伴奏がついた他地区に、「出張伴奏を」とお願いしました。そのような形で各地区の教室の交流が始まるのが次のステップだと考えますが、前提として地区の中の人材を生かしつつ教室を楽しむという姿勢が第一に大切なのです。それが感じられる大島地区の発表でした。

そしてもう一言。会場入り口に素敵な盆栽が飾られていました。
出品者として大島地区の方のお名前がありました。こういう形での教室育成だってありますね。
盆栽は見事に咲き誇っていました。ボケの花でした(笑)


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