「世の中みんなわかってない!」なんてちょっと過激な発言でごめんなさい。
最近、家にいることが多くて、テレビを見聞きするチャンスも増えています。世の中挙げて「認知症」「認知症予防」「認知症の人の心」「認知症にならないための・・・」
まったく、10年前にエイジングライフ研究所が旗揚げしたときの風当たりの強さはいずこへ?
一応、我が家のイングリッシュガーデンと私が名づけています。
このジギタリスは、毎年咲いてくれて5年目。種が飛んで増えるんですよ。でも、今年は淡いピンクが消えてしまいました。
テレビの困った点は、特殊な痴呆に重きを置きすぎる点です。
側頭葉性健忘はボケではありません。記憶の入力過程に問題があるので新しい記憶はだめですが、前頭葉が生き生きしていることが特徴です。表情は豊かで、会話もウイットに富み文字通り「ボケていないみたい」です。
若年性アルツハイマー病という病名で、まだ50代の人を紹介するというパタンも多いのです。その場合は側頭葉性健忘か非常にまれなタイプの変性疾患、失語症のときもあります。
アルツハイマー病は遺伝子異常によるほんとうの変性疾患です。ところが進行が早くて番組作りに向きませんから(本人のコメントが取れなくなる。あまりにも、悲惨でカメラを向けがたい)特殊な変性疾患の方を、よくも見つけてきたものと思いたくなるくらい取り上げます。
保健師さんたちならば、「これは普通のボケじゃない」と直感的にわかります。
表情豊かで、話し方もキビキビしていて、感情の交流が十分に可能・・
そんなボケがありますか?
このタイプの方たちは、ゴルフの飛ばし屋だったりバトミントンや卓球の名手だったり。手芸は上手。音楽も好き。小さな子供やペットや花も大好き。おしゃれにも気を配ります。もうひとつ。家族から好かれ大事にされています!
こんなボケがありますか?
脳機能検査をして御覧なさい。受ける印象と成績は天地ほども差があります。その成績の悪さに愕然とするはずです。
これがアルツハイマー病亜型感性残存タイプ。愛すべき実に珍しいタイプのボケです。アルツハイマー病と比べ、緩やかではありますが進行性ですから、だんだんできなくなることが増えてきてはいきますが。
脳卒中も事故もしていないのにどうしても言葉が出てこない。けれども、そのことに対して、実にその人らしく戸惑い、恥じらい、困惑していることがよくわかる。生活の自立には何の問題もなく、感情の交流は見事というようなボケはありますか?
このように緩やかに失語症が始まっていくタイプもあります。ジグソウパズル500ピースに挑戦。音楽は相変わらず楽しむ・・・緩徐進行性失語です。
こういう方たちは、前頭葉機能は低下していきますが、さらに非常にまれなケースとして前頭葉機能がかなり健全な状態で残りながら、右脳や左脳の機能がアンバランスに低下していくというタイプがあります。前頭葉が、「こんなことがなぜできないのか?!」慨嘆するという風情です。ちなみに今日のテレビにはこのタイプではないかと思われる方が出演されていました。
もう一度いいますが、ほんとにほんとに珍しいタイプの方たちなのです。
初めて、デンドロビュウムがこんなに咲きました。花茎の立て方がわかりませんでした。
友人にメールで送ったら「セッコクみたいね」と返信メール。
多分、ほめてくれたのでしょう。
一方で、ボケの90%を占めるアルツハイマー型痴呆(普通のボケ)のしかも重度痴呆を介護した家族の話を聞くと、「お父さんやお母さんがその人でなくなった。考えられないことをしでかす。徘徊、不潔行為、騒ぐetc」
こういうテレビを見て、稀なタイプの皆さんの話を聞いて、普通のタイプの重度痴呆を介護した人たちの話を聞くとボケって何なのかがわからなくなって、多くの人たちの不安が募ることになるのです。
認知症の大部分は、高齢者が何かの生活上の変化をきっかけにして、その人がその人らしく生きられなくなって(つまり、前頭葉の出番が減って)前頭葉機能が本来持っている老化のスピードをさらに上げてしまうところから始まるものです。緩やかに進んで次第に大ボケに近づいていくのです。
正しいボケの理解のためには、脳機能検査ありきですが、負けず劣らず生活歴聴取も重要なポイントだとお分かりになりましたか?
テレビには「ボケ予防に最重要なのは生活のあり方=前頭葉を中心にした脳の使い方」という視点があまりにもありません。特殊症例中心の番組作りだけでは、ちょっとじゃなく大幅に残念です。
アルツハイマー型以外のタイプの詳細に関しては「個別事例判定マニュアルC」を読んでください。