今日は炊事という観点から、ボケの重症度を探っていきます。
「けふもコロッケ」という歌は大正時代にはやった歌です。
♪ワイフもらってうれしかったが、
いつも出てくるおかずがコロッケ。
今日もコロッケ、明日もコロッケ。
これじゃ年がら年中コロッケ。
もしも新妻でなく、40年も50年も連れ添った古女房が、今日も明日もあさってもその次の日も又その次の日も、おんなじ献立を繰り返すとしたら、歌ってる場合ではなくて、それは小ボケと覚悟しなくてはいけないでしょう。
ちょっとドキッとした保健師さんもいるかもわかりませんが、大丈夫、繰り返し方は半端ではありません。
例えば「豆腐の味噌汁にアジの干物、漬物」全く同じ献立が続きます。味噌汁の具も変わらなければ、アジが塩サケになることもなく同じ献立!
清里高原にハイキングにいきました。
散策路脇のバイケイソウ
エイジングライフ研究所の二段階方式では、脳機能からその人やその人の行動を理解する立場をとります。
どのように解釈することになるかというと、同じ献立になるということは脳機能から見ると献立の発想がわかないということになります。
物事を発想するところはいわずと知れた前頭葉。
小ボケは前頭葉だけが老化を加速した状態ですから、こう推理するとぴったり当てはまりますね。
今度は、逆に前頭葉機能低下状態で何がおきるかという観点から考えて見ましょう。
花のような新芽
かなひろいテストは前頭葉機能のうち注意集中分配力を調べるテストです。
注意集中分配力が落ちると何がおきるか?
答えは「鍋を焦がす」
実は、私もやかんの空焚きや鍋を焦がすことはあります。
でも、小ボケの場合は、献立と同様、焦がし方が半端じゃないのです。
嫁に行った娘が勝手口を開けてみるとこげた鍋の山に絶句したというような話になって、私たちの耳には入ってきます。
やかんを火にかけて、ちょっと洗濯物を取り込みに行ったら草が目に付いて草抜きを始めたら、すっかりやかんのことを忘れてしまったとか、てんぷらを揚げていたところにお隣さんが回覧板を持ってきてくれたのでつい話し込んでしまったけど、お隣さんが油の臭いに気づいてくれて危うく火が出るのを未然に防げたというような「事件」も前頭葉低下現象です。
こんな事件は、残念なことに加齢とともに起きてくることはくるのですが、とにかくその頻度が違うのです。
普通の加齢現象のときは、「事件」がおきたらしばらくは気をつけて同じような失敗は起こさないようにと自ら余計に注意をします。(前頭葉の学習効果)
ウッドチップの散策路
小ボケで見られることを列挙してみましょう。
・同じものばかり買ってくるようになる。
冷蔵庫の中を見ると豆腐が3丁。あぶらげ5袋。
テーブルの上にはアンパンが5個もあるというようになるのです。
・今まで手作りのおかずを食卓に並べていた人が、出来合いのものばかり買うようになる。
忙しいときや体調がすぐれないとき、その食品がどうしても食べたいときなど納得できることもありますが、あまりにもその変化が大きいときや継続するときは要注意です。
・もともと出来合いのおかずで済ませていた人でも、パックのまま出すとか「今までとは違う」と家族が感じるならそれも兆候だと考えた方がいいでしょう。
・味は変わらないのに、作る人が変わったようなお皿が並ぶ。
料理が得意で、盛り付けや食器にも一工夫していた人などは、変化がはっきりわかります。あまりにも雑になるのです。
・手順が悪くなる。
ベテラン主婦ともなれば、「いただきます」に合わせて料理を作るものですが、カレーはできてるのにご飯が炊けていないとか、麺類を茹で上げた後で出汁を作り始めたり、暖かい料理を先に作ってしまって、食べるときには冷たくなったままサーブするようなことが起こります。
フライパンが温まった後からお肉を取り出して切り始め、フライパンから煙が出てきても火を止めないというようなこともおきます。
食事の用意ができたときには、流しは片付いていたような人(に、私はなりたい!でも現実は・・・)では、信じられないくらい流しは汚れ物でいっぱいです。
・手順や手際が悪くなる
包丁さばきが別人のようになります。野菜の切り方が妙に大きすぎたりして「いかにもおいしくなさそう」と家族が言います。
ご飯を炊くときの水加減がざつだったりもします。
今までの時間では食事作りが終わりません。長い時間をかけて「たったそれだけ?」と家族がびっくりする料理しかできません。
南アルプスもくっきりと
以上列挙したことは、すべて前頭葉がうまく関与できていない状態です。
こう考えていくと、食事作りは前頭葉の出番が多い行為だということになりますね。
実際には、経済的なこと、健康面への配慮、天気の具合、自分の体調なども食事作りとは密接に絡んできますから、もっと前頭葉を駆使していることになります。
小ボケが進んでいくと、夫と二人暮しなのに、なべいっぱいの煮物を作ったり、お冷ご飯があちらこちらにあったり、ご飯が固すぎたりおかゆのようだったりして、次第に中ボケの「家庭生活に支障が出てくる状態」になります。
八ヶ岳
中ボケを見分けるひとつの症状は
「料理の味付けが変で、食べられない」というものですが、そこに至るまでを具体的に味噌汁作りで見ていくと、
・味噌汁の具があまりにも単調。
・味噌汁の具のきり方が、今までとあまりにも違う。
・味噌汁のだしがとられていない。
・味噌汁なのに、味噌が入っていない。
・味噌を入れすぎたり、さらに塩を加えたりして、塩辛すぎてとても食べられないのに本人だけはパクパク食べる。
と、いう風に推移します。その次におきるのは、大ボケになったということですが、
・痛んだものでも平気で食べる。
・熱いものでも平気で食べる。
・食べ物でないものを口にする。
ここまでくれば、誰でもボケたということがわかりますが、それでは遅いのです。
小ボケの症状が加齢による失敗とかぶさるところが多いので、ここはやはり脳機能検査が必須であるという結論を強調しておきましょう。