きょうは、物忘れと認知症について、お話ししたいと思います。
友人がランチに呼んでくれました。心配りの花たち
「物忘れがボケの始まり」という認識があまりにも広くいきわたっています。
それでドキドキしている人もたくさんいると思いますがどうでしょうか?
年とともに、記憶力障害が自覚されて、愕然とするのは、かくいう私も同様で、このような仕事をしていなかったら気になって仕方ないだろうと思います。
いくらでも具体例が挙げられます
まじめな話に戻しましょう。
アメリカ精神医学会が決めたDSM(精神障害の診断と統計の手引き) が認知症の判定基準として、日本でも使われますが、その第一項に「記憶障害がある」となっていることも無関係ではないでしょう。
DSM-4改訂版 は①記憶障害
②失語、失行、失認、実行機能障害のどれかある
③上記のため社会生活に支障をきたす
④意識障害はない
のすべてに当てはまるのが認知症だといっていました。
①はわかりやすいような気がしますね。
でも、よく考えてみたら、記憶の障害といっても、記憶を成り立たせる3要素、
記銘(おぼえこむ)
保持(おぼえておく)
想起(思い出す)
のどの障害を指しているのでしょう?
どの程度を「障害」ととらえるのでしょう?
「覚えられない/思い出せない」自覚のない高齢者はいないと思いますよ。
高齢者と限ることもないかもしれません。
記憶力のピークは20歳代という報告を読んだ「記憶」がありますから。
②はスラスラ読めるような・・・
ところが、脳機能から見るととんでもないことが列挙されています。
失語、失行、失認が起きるということは大変なことです。
脳の器質障害(病気やけがの後遺症)が起きてしまったのなら、だれにでも、いつでも起こりえます。
でも、認知症で、失語、失行、失認が起きるのは非常に重度の状態になってからです。
失語:コミュニケーションが取れない。意味不明のことをつぶやく。ほとんどしゃべらない。
失行:洋服が着られず、袖口に頭を通そうとしたりする。ズボンをかぶる。
失認:見えているはずなのに、認識できない。
誰が見ても重い症状として納得できるような症状といえます。
いっぽう、実行機能というのは、このブログで繰り返し話している「前頭葉機能」そのものです。
状況を判断し、見通しを立てて、決断する。
その時には、たくさんの情報を自分なりに処理しなくてはいけません。
途中で、修正することもしますし、意欲を維持させるのも前頭葉です。
さらに結果についても、成長するにつれて自分で評価します。毎日毎日繰り返していくうちに「自分らしさ」が確立されていきます。
「失語、失行、失認」と「実行機能」は脳機能から見ると、レベルが違うのです。
幼児と大人くらいの違いでしょうか。
それを同列に論じているところに、大きな疑問を感じます。
実はDSMは今年5月に改定され、呼称はDementiaから「Mejor Neurocognitive Disorder(大神経認知障害)」へと変更されるといわれています。
認知機能は、
①複雑な注意(注意の保持、注意の配分、注意の選択、処理の速さ)
②実行能力(計画、意思決定、作業記憶、行動修正/錯誤修正、習慣の乗り越え、心の柔軟さ)
③学習と記憶(即時記憶、近時記憶[自発再生、手がかり再生、再認記憶を含む])
④言語(発語、言語理解)
⑤視覚構成知覚能力(構成、視覚的知覚)
⑥社会的認知機能(情動の認識、こころの理論、行動の規則)などと区分されます。
またもや・・・
①と②は前頭葉機能そのもの。
③前頭葉障害を起こした人のほとんどは学習効果がありません。記憶はもう少し低次元の脳機能レベルでもできます。動物でも記憶はできます!
④と⑤は、先ほど説明したように、脳機能から言えば非常に基本的な機能ですから、ここの障害は最重度になっていることを意味します。
⑥は高度な脳機能レベルと、本能に近いようなレベルを包含していますね。
認知症を考えるときに、症状ではなく、脳機能からのアプローチをなぜしようとしないのでしょうか?!