脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

ボケた時、夫は妻を忘れない!?

2010年05月31日 | 正常から認知症への移り変わり

友人からメールが来ました。
「今読んでいる本の中に、笑える話がありました。
『男性が認知症になった時、最後まで分かるのが妻。女性が認知症になった時、最初に忘れるのが夫らしい。』というのですが、本当ですか?」

今日はバラシリーズ2010052109040000 2010051706380000

私の返信メールです。
ボケたら、夫は妻がわかって、妻は夫がわからないということはありません。ボケが進めば、必ず人に対する見当識(この人はだれかわかること)が揺らぎます。
大ボケの最初にはいると、家族か否かはわかりますが、孫と子供を間違えたり、息子が夫になったりします。
そのうちにボケた妻が夫のことを『あのおじいさんはどなたでしょうか?』ということもあります。もちろんボケた夫が妻に対して『こんなばあさん知らん』といったりもします。この二つの出来事は全く同じ意味を持っていることに気づいてください。2010051706390000
このくらいのレベルになると、娘が丁寧に世話をしているときに
『どちら様か存じませんが、ご親切にしていただいて・・・』ということもあり、何の問題もないように話していても、改めて
「この方はどなたですか?」と尋ねると誰だかまったくわかっていないこともあるのです。
拒否的か否か、その出方はあくまでも、それ以前の関係性の結果です。2010051706370000

親しい人とか、世話をしてくれる人とか、怒る人や怖い人ということはわかりますが、
本当の意味の関係はわからなくなっていきます。
もちろんこれは、ボケがとても進んでる証拠でもあります。
『配偶者を亡くして半年経った時元気なのは?』と尋ねると、みんな笑いながら
『おばあさん』と返事しますが、
これも関係性の問題です。
相手の死から自分が生きていけないほどのダメージを受けたら、男女にかかわらず、半年たってもまだ積極的な生き方に戻れない状態になります。
そのような場合に、そのままボケの道に入っていくのです。2010051706400001
多くの場合、そのダメージは男性の方が大きく受けるみたいです。
もちろん生活遂行能力の問題もありますが、夫の方が関係を深く求めている(頼っているor母子関係の再現を求めている)のではないかと私は思っています。
そういうことを皆さんが承知しているから
『配偶者との別れの後、半年経って元気なのはおばあさん!』と声をそろえて答えるのでしょう。

さて私は?
ノビノビするのではないかと思っていましたが、今は『ひとりになってみないと分からない』と思います。人生は想像できないことってありますからね」2010_0529_104600p1000024_4 2010_0529_104700p1000023_3
メル友が、私のメールを読んでまたコメントを寄せてくれました。
「『ボケたら夫は、妻は』の問題は、それを世間一般が期待しているのが大きいような気がします。
現実には夫の世話はほぼ妻がしているから、夫にとって妻は「世話をしてくれる・頼れる人」であり続けるので『・・(名前)』にしろ『おい』にしろ、夫は妻を呼び続けます。妻という認識がなくなっても!

妻がボケた時には夫がその役割をしない可能性が高い(娘・嫁に世話をさせる)ので、すぐに呼びかける必要がなくなります。その状態は、あたかも妻が早々に夫を忘れてしまったかのような・・・という大雑把な印象が出来上がるのだと思います」
とっても納得。

五月の休日2 第二の人生の生きがい

2010年05月19日 | かくしゃくヒント

ちょっとおもしろいことがありました。
その発端は、4月9日のブログでご紹介した近所の年上の友人Y下さんからmixiできたお知らせです。

「今年のジャケツイバラ、御覧になりましたか。今最盛期です。
かつてはこの里にいっぱいありましたが、開発攻勢にあって数少なくなりました。踏み切りの手前に大木があり、今見頃です。」

ジャケツイバラってどんな花?それとも木?何色?
疑問がいっぱいだったので早速ネットで調べることにしました。

最初にヒットしたページが素晴らしかったんです。
(左欄の「掲載種一覧」から104ジャケツイバラを開いてください)
全体の様子、花の様子、おしべやめしべの拡大写真、花だけでなく冬芽の状態、さらには開発攻勢にあって枯れてしまった状態の報告まで、その奥深さに脱帽!
「石川の植物」となっていましたが、ジャケツイバラをはじめほんとに身近な植物がたくさん取り上げられていました。写真も解説も丁寧で、素人の私にもよくわかるのです。

Img_2この本田さんは、金沢大学理学部出身、高校校長を務められた後、県立自然史資料館長になられ、どうも70歳くらいの、今は悠々自適の方のようです。
パソコン上多くみられる植物のページには、花の画像プラスちょっとした説明を加味したページが多いのに飽き足らず、顕微鏡写真までも使った詳しい解説付きの「電脳空間の植物図鑑」を立ち上げられたのが、平成11年とホームページ上で知りました。
それともう一つ。「知るほどに楽しい植物図鑑」を刊行なさったとのことでしたから、早速注文しました。

石川県の人なら、もっともっと身近に感じられるでしょうからと思って、 石川県在住の友人にもプレゼント。

これだけの情報を持って、ジャケツイバラ探索へ。もう一度Y下さんからよくよく説明を聞いて出かけました。 五月晴れのもと、日曜日の素敵な散歩タイムでした。
一応写真をアップしますが詳しくは本田さんのページをご覧ください。
ジャケツカズラ2010051611310000
同日、見つけたもう一本の珍しい木もご紹介します。ハンカチの木2010051410210000

先日来テーマになっている、第二の人生の生きがいについて、とくに立派な仕事(と言われがちな仕事)をなさった方たちが、何を第二の人生の生きがいにするかということについて、また考えてしまいました。
本田さんは、理科の先生をなさったんでしょう。ご専門の分野は、どう考えても植物ですね。
前回の城ケ崎ネイチャースクールの斎藤先生も理科の先生でした。

半野生化したようなイキシア2010051611050000              

おふた方とも、今取り組んでいることを楽しんでいらっしゃると思うのです。
それこそが「生きがい」というものでしょう。
仕事の延長線上に、楽しめるテーマをそのまま見つけることができる幸い、それが生きがいになる幸い。

講演をしていると「公務員と先生がボケやすい」と全国の皆さんが笑いながら言われますが、ちょっと待ってください。
「仕事だけが生きがいで、退職したら、趣味も交遊も楽しめず生きがいを見つけられない」という条件をつけなくてはいけないでしょう。

隣家のバラ2010051413120000

公務員、先生と限らず多くの方たちは定年を迎えると、仕事の延長線上とはまったく別の新しい生活の中に、生きがいを見出し育てていかなくてはなりません。
生きがいは「趣味」の中に見つかることが多いでしょうが、中には仕事を生かした左脳ベースの生きがいを持つことで、ソフトランディングする必要がある方もいらっしゃるだろうと前回お話しましたね。
                                                        リンダ2010051412420000

今回は、いわゆる「立派な仕事」をなさっていても、定年後第二の人生に入って「仕事の延長線上に、そのまま楽しめるテーマが見つけられる」そんな仕事があることをお知らせしました。

ただ、どう考えてもバリバリの左脳主体の仕事では無理でしょう。左脳主体のことは自己完結できると思います。
お二人の共通項として「人」が大きく関与していますね。
ベースの生活そのものに右脳が大きくかかわっているうえに「人と楽しむ」という点でさらに右脳が大きく関与しているわけですから。
それともうひとつ。
もし、まったく同じ条件のもとで同じ仕事をしていても、定年後の生活が全く同じになるということはないと思いませんか?
その違いを生むのは、もちろん前頭葉ですね! 

                                  ミセスオークリーフィッシャー2010051517270000

そういう種類の仕事って他にどんな仕事があるでしょうか?
こういう第二の人生を送ることができる人は、どんな前頭葉の持ち主なんでしょうか?

今回のブログをヒントに皆さんも考えてみてください。


五月の休日1

2010年05月17日 | 私の右脳ライフ

プライベートな右脳活性化報告です。
伊豆城ケ崎ネイチャースクールの5月の例会に行ってきました。中学校の理科の先生をなっていた斎藤先生が主宰なさっています。
単なるハイキングではなくて、伊豆ならではの火山地形の解説から岩石の種類、鉱物の見つけ方、時には動植物の解説に至るまで興味シンシンのネイチャースクールです。

5月例会のお知らせImg
2010051512490001_2

今回は天城火山の探訪。

「風力発電を考える」副題付き。
風力発電は稼働している時の姿から来るクリーンなイメージが先行していますが、自然保護や景観保全や生活環境保全などの問題点があることが、現地に立って見るとよくわかりました。
この現地(現場)に立つということは、物事を考えるときのもっとも基本的な条件ではないでしょうか。

ところで、何度か教室に参加して伊豆半島の大まかな歴史がわかってきました。
伊豆半島が島だったことはご存知の方も多いでしょう。
遥か南方の海底火山が爆発してその後隆起して島ができました。その島が、約百万年前、プレートに乗って本州に衝突して、伊豆半島を形成します。(その衝突は現在も進行中!)
半島となった後に、天城をはじめとする多くの火山の爆発で今の伊豆半島ができました。もともとの地層を湯ケ島層といいます。
露頭している湯が島層の観察2010051511410000 (右端が斎藤先生)2010051511400001

「湯が島層の風化帯が見えているところが標高800メートル、天城の噴火によるこの山の標高が1400メートル。天城溶岩は600メートルの厚みがあるということになる」
「ここの岩石は輝石安山岩。黒い石は玄武岩、白い石は流紋岩、その間が安山岩」
「城ヶ崎海岸は柱状節理、ここは板状節理」
などと教わっています。
三筋山ふもとの桃野湿原2010051513510000

高原に湿原があることも面白いでしょう。
泥流が発生して自然のダム湖ができたのち残ったものが湿原なのです。

昼食後、メインの三筋山探索。

伊豆大島・利島・新島・式根島をはじめ、三宅島・房総半島までもが望める 素晴らしい眺望でしたが、携帯ではとても写せませんでしたから植物たちのご紹介。

ヤマツツジ2010051514440000が咲き始めていました            野生のエビネラン2010051514590001

トウダイグサの群生2010051515150000                    画面の欠けている右上部は海です2010051515140000


珍しい露頭2010051515380000

ここは佐ケ野川の源流。
山形の地層がはっきり切り取られたように見えているのです。
山形ですから、水は山頂から左右に流れていくだけのようですが、地層の途中に水を通さない層(薄茶色の横じま)があるために保水できることになります。その後小さな崩落が起こりそこから水が流れ出て、山頂からでも水がわくという仕組みになるということを教えていただきました。
初めて知った知識ですが、書物から学んだのではないことがうれしかったです。

付録に4月の例会時の写真も(城ヶ崎海岸の柱状節理)2010042512080000 2010042512090001


コーヒーブレイク

2010年05月12日 | 私の右脳ライフ

知人からカラーの花をいただきました。

庭のホメリアと一緒に。生けるというより入れただけ2010051215000000ですが。

清楚であまりにも素敵だったので、一本だけ別の花器に生けてみました。

花と葉っぱがうまく寄り添って、結婚を決意した時みたいにとても仲良し状態になりました。

ちょっと生け変えてみました。
とたんに作品名がひらめきましたので、夫に
「この生け花に題をつけるとしたら?」と質問しましたが
「・・・」

このカラーの花たちも、婚約→結婚。
そして幾星霜たちました。

第二の人生に入った二人の暮らしぶりがまさかこういう風にはなっていないでしょうね(笑)

「おまえ100までわしゃ99まで、共に白髪が生えるまで2010051214330000_4

    「フン!あんたなんか」2010051214310000_2


「すべてのスタートは『楽しむ』こと。『楽しい』ではなく『楽しむ』である」

2010年05月11日 | かくしゃくヒント

4月末に会社が設立10周年を迎えたので、と長男がその記念品「ルームフレグランス」を送ってきてくれました。
以下はメールの抜粋です。
DiX INSPiREは、香りが気にいってもらえれば肌につけても良いようにPerfumeとしての検査と登録もされているけれど、本来の意図としては、ブレインストーミング(アイデアを出すためのミーティング)をするにあたって、そのミーティングルームにシュッと一吹きしてもらうための、ルームフレグランスなのです。
4月末の花たち


た、外箱の意匠に関しても、昔は皆が持っていたDaily Conciseの辞書がモチーフになっていて、Dictionary INSPiREでは冗長になるため、掛け言葉的にDiX INSPiREにしている次第。
Daily Conciseと同様にデスクに置いておいてもらって活用して欲しいという意図を意匠にも込めています。ちなみに、DiXはフランス語で「10」。ここも掛け言葉。

今回は郵送したけれど、配布原則としては、役員・社員の手渡しとしていて、これは、インターネットの時代に画像・映像・音声・文書は簡単に届けることができるけれども、香りや味わいや手触りは届けることができないため、そのうち、食べて終わってしまうような食品ではなく、香り系にしようという発想からこの記念品の制作がスタートしているという背景もあります。

ちょっと楽しいと思いませんか?
社是というには軽やかな文章が筆頭に記されていました。

「すべてのスタートは『楽しむ』こと。『楽しい』ではなく、『楽しむ』である。」
「仕事」と「遊び」が縦横に交差できるということは、どこででも、誰にでも可能なこととは思えません。
ただ若い世代にこのような発想があることは、エイジングライフ研究所としては大歓迎です。
この世代が仕事を終えるころには、仕事だけや仕事が主体の人生という考え方ではなく、その人その人に合った新しい多様な生き方が常識になっているといいのに…と思いました。

その人に合った多様な生き方は、生まれてからどのように自分の脳を使って生活してきたか、そしてどのように感じてきたか、そしてそれを自分がどう評価するかという流れの中から出来あがってきます。
もちろん常識や世間の評価から、フリーでいられるとは思いませんが、それでもこれからは以前に比べて「自分の評価」が大きな比重を占められるはずです。

「右脳」「左脳」「運動の脳」を率いた三頭立ての馬車が、イキイキと楽しそうに走っている情景が目に浮かびます。
走る場所も速さも目的すら多様でしょうが、要は三頭の馬も御者もイキイキと走ってほしいのです。
自分の持てる能力いっぱいに走ろうとするときに、三頭の馬たちに得手不得手があっても、それでも三頭力を合わせて走った方が強力になります。

三頭の馬の能力に上下はありません。
こう考えていくとボケ予防は幼児教育からということになりますね。

 


かくしゃくヒント2ー第2の人生へのソフトランディング

2010年05月10日 | かくしゃくヒント

長野県小布施町のT田保健師さんから4月28日に写メールをいただきました。
「こちらもようやく春になり、一斉に桜が咲いています。小布施も捨てたもんじゃないななんて思いながら、千曲川の土手でジョギングを楽しんでいます」2010042513150000

この素晴らしい景色を皆さんにもおすそ分けしようと思いながら、そろそろ半月・・・
季節はみごとに変わってしまいましたが、あまりにももったいないので、遅ればせですがご覧ください。2010042514080000

このT田保健師さんは、すでに定年退職されていますが、その生活のご紹介。
町民のためにと、非常勤のお仕事を続け、そのほかにも趣味のジョギング(実は東京マラソンにも参加するほどのつわもの。夢はホノルルマラソン参加ですよね!)同窓会や旅行など、結構つかまらないこともあるほど、活動的な生活を楽しんでいらっしゃいます。

2010042711240000実はこのような写メールも退職後頂くようになりました。
メールそのものも退職後に挑戦されたはずですが、絵文字が入り始めたと思ったら写真添付が始まりました。

さらに、T田さんらしいなと思うのは「研修会参加中」という理由でつかまらないことがあるのです。

以下の写真は津軽三味線の野外コンサート(5月9日)
前は海                              2010050913530000

私たちは、退職後の生活の柱として
「趣味や遊びを通じた人との交わりそして運動 」を最も重要なものとして考えています。
このような右脳を主体にした生活は、人生を彩り楽しみをもたらすものに違いありません。ひいては前頭葉を活発にさせ、脳の老化を先送りするというボケ予防の大原則に合致するのです。

そのことを踏まえたうえで、もう一つ大切なことを知らなくてはいけません。
それは、前頭葉は「評価を下す」機能をも担っているということです。
「自分の今の生活を、自分がどのように評価するか」もちろんそれがポジティブでなければ、前頭葉はイキイキとなれません。      後は山2010050913550000                        

世にいう「立派な仕事をした」人たちが、外から見れば充実した暮らしぶりと評価されるのに、ご本人にとっては今一つ満たされていない場合が往々にしてあります。
そのような時、T田さんのように、退職後も「研修会で学ぶ」そしてそれを「仕事にフィードバックする」という、まさに左脳の世界を取り込むことで生活が格段に充実することがあることも知っておきましょう。
ただ、このようにイキイキさを実感するために仕事を取り込む生活は死ぬまで続けるわけにはいきません。どこかでまた自分が納得できること、つまり前頭葉が「それで良」と評価できることを生活の中で見つけなおしていくことが不可欠になります。それは生活のベースをだんだんに左脳から右脳にシフトしていくことになるのです。

仕事の次としてすぐに考えられることは、ボランティアでしょう。そしてその次には、やはり趣味に相当することが登場するはずです。
第二の人生では、趣味といわなくても「楽しいと思える時を持つこと」がなければ、脳を健康なままに保てません。
T田さんの素晴らしさは、定年後の軸足を「仕事だけでなく楽しむこと」にも置くことができたところにあります。
やはり、「趣味や遊びを通じた人との交わりそして運動 」が、定年後の生活では最も重要なものとして浮かび上がることになりますね。
岡田修さん素晴らしかった!2010050914430000
仕事一筋、仕事以外の趣味や交友を一段価値の低いものとして自分の中に位置付けている「まじめな」仕事人間といわれる皆さんが「定年後3年したらボケちゃった」ことにならないためには、仕事をバリバリこなしている時からこのような価値観を持たなくてはいけないのです。
仕事を評価する物差しと人生そのものを評価する物差しを二つ持つとでも言えばいいのでしょうか?ここにもボケ予防のひとつのピークがあるのです。

さらにもう一つ。本当に長生きをしたら、それまでの生活を支えてきた仕事・趣味・交遊を一つずつ手放さざるを得なくなる時が来るかもわかりません。
その時にどのように自分の人生を肯定的に考えることができるか?
その日に至るまでの日々を充実して生き続けた実感がある時にだけ、現状を肯定できるのではないかと、私は考えています。


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