脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

色って右脳なんですか!

2012年04月30日 | 右脳の働き

友人のカフェに行きました。庭カフェというおもしろいお店です。

2012_0429_152300p1000226庭カフェの宣伝をしてみましょうか。

・マキストーブで焼いたパンやピザ。
(作ってくれる女主人が美人)

・キャンドル作り体験。
(指導してくれるマスターが、おもしろい!)

・ツリーハウスやハンモックのある庭。
(庭カフェの「庭」は、あなたのお庭という意味なのだそうです)

・そして晴れたら、利島や新島がくっきりと見える相模湾の眺望。

私たちが着いた時に、ちょうど若者たちがキャンドル制作中でした。たまに話声も聞こえましたが、真剣そのもの。

いろいろな色のロウを加熱して溶かし、液体のロウを作ります。
ロウはすぐに固まりますから、その色のついたロウを上部に穴のあいた球形の型に少しずつ流し込んで、模様を作りながら形を完成させていくものです。

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完成後に
「どれも素敵ですね」と声をかけました。

「本当ですか!」と皆さん笑顔。

「結構おもしろかった」
「集中したよね」と口々に言い合いながら、「ウーン。」と満足そうな顔が並びました。

「どれも素敵だけど、自分の作ったものが一番いいでしょ?!」と続けると

「そうです!」とも言えない様子で、ちょっとモジモジしています。そこで

「自分のよりももっと上手な作品もあるけど、私の作ったのが一番好きって思ってるでしょ?」と表現を変えると、今度は皆さん安心してうなずきました。2012_0429_151900p1000224

「だって、自分が決めたんですものね。どの色にするか、どう流してどんな模様にするか。出来上がった作品は好きにきまってる。

単色のグラデーションにした人もいるし、ピンクがかったのも紫っぽいのもみんな素敵。

横じまもいいし、不定形のもおもしろい。

色や形を決めるのは、右脳なんですよ」

「色って右脳なんですか。それじゃあやってる間中、私の右脳大活躍」

「右脳の面白いところは、正しいか間違ってるかじゃなくて、好きか嫌いかというところなんです。

左脳はデジタル情報担当、1+1=2とか言葉で理解できることをやるのですが、右脳は色や形や感情みたいに言葉ではうまく言えないけど、よくわかる分野が担当。正解はないのです。

だから右脳が主体に働いた時は正しいかどうかではなくて、好きかどうかになるわけ。」(右脳のことをもっと知りたかったら、このブログの右欄のカテゴリーの中から『右脳の働き』を読んでみてください)

2012_0429_152100p1000225高齢社会なのですから、「体の健康」だけでなく「脳の健康」にも注意しなくてはいけません。

そのとき「体の健康」を守るのと同じように、「脳の健康」を守るためにも若い時から健康的な生活習慣を身につけていく必要があるのです。

生活のいろんな場面で、私たちの脳がどのように働いてくれているかを考えるのは、「脳の健康」を維持するためには大切なことですよ。

今日お会いした若者へ:おばあさんの話も出ましたね。認知症のことも脳の働きのこともわかってもらえると思うので「東日本大震災―高齢者を認知症から守る(1~3)」を読んでみてください。


さらに、こう言えば、ああ言うー認知症とことば

2012年04月19日 | 正常から認知症への移り変わり

「こう言えば、ああ言う」と題して続けて書きました。

意図は、認知症が始まった時に多くの家族が戸惑うことを解説したかったからです。
友人宅を散歩中の伊豆シャボテン公園のクジャク2012_0413_150300p1000086

生活改善指導をするときには、家族に対しては
「言っていることを聞くのではなく、やっていることを見てください」と繰り返します。

私たちは、意味のある日本語を聞くとその言葉の意味がわかってしまうので、その発言に振り回されてしまうものです。

認知症が始まった人でも、かなり進んだ人でも、「しゃべらせたら普通です」とか「なかなか立派なことを言うんです」と家族が言います。

でも、その言葉をよくよく聞いてみると質問には答えてないし、「当たらずといえども遠からじ」というより「遠からじといえども的はずれ」な発言が多いのです。

2012_0413_161100p1000094「お子さんは?」
「子どもは宝です。大切にしなくてはね」

「何人いらっしゃいますか?」
「戦後はなにもないところで、子どもを育てるのに難儀した・・・食べさせるのにどれほど苦労したか(と、買い出しの話などに進んでいく)」

「それは大変でしたね。ところでお子さんは何人?」
「大きくなってしまうと、なんだかいるようないないような・・・子育てしてる時が花ですね!」

「ほんとにね。それで何人お子さんはいらっしゃるのですか?」
「えーと、4人だか5人だか」

「一番上の方は、男?女?」
「えーと。男・・・だったかな」
2012_0413_160900p1000091意地悪をしているのではありません。

こう言うやり取りしかできないお年寄りでも、意味を類推してあげすぎてしまったり、踏み込んで聞かずになんとなく会話を流してしまうと「しゃべらせたら普通です」と言われていることが多いのです。

さらにさらに聞いていくと理解ができていないことが、こちらによく理解できます。

正しい対応は、その人の脳機能のレベルに合わせてあげなくては、不可能ですから、このステップはとても大切です。

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意味不明な言葉だと、一生懸命に意味をとらえようとしたりもしますが、お手上げだということになると、表情や態度など「言葉以外の情報」から判断しますね。

英語でもスワヒリ語でも子どもがしゃべるよくわからない言葉でも、みんな同じです。

一見意味がわかってしまうところが難しさにつながります。

こういうおじいさんがいました。
散歩中に人に会うと、会釈して
「いい天気ですなぁ。かわりなくお元気ですか?」

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外を歩いているのですから天気はさしあたっていいでしょうし、相手も外にいるのですから元気に違いありません。

「ご両親はお達者ですか?
お子さんはお元気?」
これも口癖。

親も子もいる確率は高いですから、そんなにおかしな状況にならずに、大体このまま会話が成立してしまうのです。

そして、近所の人は「お元気そうで・・・」といい、家族は家庭生活を送る上での支障に悩まされている!

言葉に振り回されないためには、第一には脳機能を知ることでしょうし、それが無理ならやっていることをよく観察する、例えば、整理整頓のレベル、食事のマナー、風呂やトイレの使い方、着衣は?お金の支払い方は?そこからの方が脳の働き方のレベルがよくわかります。

 


また、こう言えば、ああ言う―認知症とことば

2012年04月17日 | 正常から認知症への移り変わり

くだんの娘さんの話が続きます。

娘「東北大震災から1年たったということで、またテレビで取り上げられることが多かったでしょ。その時にテレビを見ながらこんなことを言うんですよ」

2012_0410_161700p1000065母「そりゃあ気の毒とは思うけど、私たちだって戦後すごく苦労したんだよ。なんの援助もなくてね。

食べ物だってお金だけでは手に入らないんだから、ほんとに大変だった。

それに比べたら、寝るところもあるし、食べるものもだってあるし・・・」

娘「こんな言葉を聞かされると、びっくりするやら悲しいやら。そしてしまいには腹が立ってくるんです」

それはそうでしょうとも。でもね。ちょっと待ってあげてください。

正常な老化を超えて前頭葉機能が衰えてしまっている、エイジングライフ研究所が言う軽度認知症(小ボケ)の人たちの解説をもう一度しましょう。2012_0413_153000p1000088
前頭葉は、ほんとにたくさんの働きをしますが、その中でも注意集中と分配力は、中核的な働き(新しいブログで詳しく解説していますのでこの上をクリックしてください)です。

人と会話をしている時にも、テレビを見ている時にも、前頭葉はいつもその状態を見張っています。
目まぐるしく変わっていく情報に追いついて、理解して、自分の態度や発言を決めるのです。

前頭葉機能が万全でないと、ちょうど「心ここにあらず」といわれるような状態になります。

聞いているのに、聞こえていない。
見ているのに、見えていない。

さっき自分で言ったことですら、曖昧模糊となってしまう。

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認知症のごく初期に、家族がよく訴える一つに
「同じことを何度も繰り返す」ということがありますが、この症状も前頭葉がうまく働いていないと考えるとよくわかりますよね。

このお母さんにとって、テレビのニュースをどこまで自分のものとして理解しているのかをまず調べてみなくてはいけません。

私には病院勤務時代の忘れられないエピソードがあります。

阪神淡路大震災直後にお会いした方(軽度認知症=前頭葉機能が低下)の話です。
この方は、神戸の方で、大変な思いをして来院されました。

私「大変だったことでしょう・・・」

彼「はい。それはもう」そばから同行してきた妻が、いかに大変な思いをしたかを話します。

彼「昨夜もホテルで、ずっとテレビを見ていました。気の毒なことで・・・」2012_0410_134700p1000052

私「それで、神戸は何が起きたのですか?」

彼「台風です」

言葉のやり取りはどこもおかしくない。
でも、本質的な理解は大きく外れてしまっています。このようなことは軽度認知症の方にはよくおこることです。

この「理解のずれ」に気付かないまま、
「しゃべらせたら普通」と思い込んでいる家族の方々がどんなに多いでしょうか。

そうそう、私がなぜ「神戸で何が起きているか」と尋ねたかというと、テレビの話をするときの無表情さ、感情のこもっていない言い方からでした。


こう言えば、ああ言うー認知症とことば

2012年04月16日 | 正常から認知症への移り変わり

軽度認知症(小ボケ)のお母さんと一緒に暮らしている娘さんの話です。前回に引き続き、いかに言葉の力が残っているか(一見ですよ!)の例としてお話しします。

4月15日の城ヶ崎海岸
2012_0415_135600p1000116まず軽度認知症の症状について、新しいブログで解説していますからエイジングライフ研究所が言うところの軽度認知症(小ボケ)の典型的な症状(この上をクリックしてください)をチェックしてみてください。

このブログ中の正常から認知症への移り変わり♪今日もコロッケ、明日もコロッケ♪(この上をクリックしてください)にも、今日のテーマの料理に関して具体歴な例がたくさんあげてありますから、参考にしてください。

お勤めから帰って玄関を開けると、何やら焦げ臭い・・・
「また、焦げた鍋を洗わなくてはいけない」とちょっと気が重くなって、「ただいま」とあいさつしながら食堂へ。

春の嵐で林の中はこんな無残な木が

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献立はカレーライスでした。
お皿を見ると、案の定、カレーソースの中には黒い焦げカスが点々と。
黙ってよけながら食べ始めたのですが、言わずにはいられなくなって

「また焦がしたねぇ」と小さな声で呟くと、まさに間髪いれず、強い調子で

「そうじゃない!コショウを入れ過ぎただけ!」

その娘さんが言います。2012_0415_130900p1000113_2

「ほんとにうまいこと言ってくれる!っておかしくなる時だってあるくらい。
ただそれは、こちらにエネルギーやゆとりがある時で、疲れてる時に言われると、もう、言うばっかりで・・・もうちょっとしっかりしてよ。
言い訳を上手に言うより、言わなくてもいいから、やってくれたらいいの。
だって馴れた簡単なことじゃないの。
いつも言ってることでしょ!

と、次々に糾弾したくなってしまって。
こんなふうに言ったらいけないんですよね?
わかってるんですが、いったん言い始めたら、今度は私の方が止まりません」

2012_0415_140300p1000120_2私が答えます。

「もちろん、そういういい方はしない方がいいに決まってます。

でもねえ・・・。

やった結果を見ちゃうとねえ。
聞こえてくる言葉(や、その内容)とのズレがねえ。

余計腹が立ってくるのよね?」

「えっ。腹が立ってくるってことをわかってくれた。わが意を得たり」と娘さんが続けます。

「ほんとに何というか、ああ言えば、こう言う。まさにそれ。

すり合わせるのがうまいというか、しかもずーと考えてから言うというのでなくて、ぱっと切り返してくるんです」

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「やってることは首をかしげたくなることだらけなのにいうことだけは、」
当然「一人前」と続けようとしたのです。ところが

当の娘さんが言いました。「十人前!でもたりないくらい」

1.「焦がすから、そばについていたら?」
「もともと、料理が嫌いなことは知ってるくせに。なるべく台所には立ちたくないんだよ」

2.「ちょっとこのおつゆ、熱すぎない?グラグラするまでは温めなくていいと思うけど?」
「あんたの今朝の味噌汁だって、すごく熱かったくせに」

3.「味噌汁の具、豆腐ばかりでなくてたまには違うものにしたら?」
「豆腐は、植物性たんぱく質でからだにいいんだから!」

4.「ご飯が軟らかすぎない?」(水加減の失敗に対して)
「歳をとるってことは、あれこれ不都合が出てくるもんだよ。あんたもそのうちわかる」

5.「ちょっと待ってて。一緒に食べましょう」
「食べてるんじゃない。味見をしてるだけ」

6.「そんな鍋いっぱい作らなくても。食べ切るのに三日間はかかるでしょ」
「ガス代のこと考えたら、まとめて作る方が経済的」

2012_0415_140400p1000122こうして並べてみると、確かにごもっともといいたくなるような表現ですね。
でもやってることをよく見てみましょう。
そして、このような失敗は単発ではなくて、たびたび繰り返されることも知っておかなくてはいけません。

第三者なら、お母さんの発言に対して、もう少し突っ込みたいところです。
あくまで第三者ですが。

1.焦がす失敗を繰り返すくらいなら、ちょっとそばにいた方がよくはないですか。

2.まず、今の熱すぎるおつゆを作った反省がいるのでは?

3.いくらなんでも一カ月も続けるというのは?昔は変化させてたでしょ?

4.ほとんどおかゆというのは、やはり失敗でしょう。

5.いわずもがな。

6.二人暮らしですよ。あまりたびたびだと冷凍庫もいっぱいになってしまいます。

2012_0415_140200p1000118「お母さんの言葉は、状況を的確に判断してから出ているのではないと思ってあげましょう。

そもそも状況を判断する働きは前頭葉にあります。認知症の始まりの人はその肝心の前頭葉機能が、うまく働いていないのです。

だから失敗する。

ただ、ことばは、何十年も使ってきたものだから、状況判断ができていなくてもそれなりに漏れ出てくる。もちろんもともとの性格の影響もありますけどね」(この項続く)

 

 

 

 

 

 

 

 


「親をみたことがない男って所詮こんなものよ」と看護師さんが。

2012年04月13日 | 正常から認知症への移り変わり

ちょっと驚きの電話がありました。
同居のおばあさんに手を焼いて、介護保険申請のためにかかりつけ医に相談に行った人の話です。

今日の写真は、伊東市の4/10~13のサクラたち
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家でのおばあさんの様子です。
1.パンツをはかずにズボンをはいてしまうかと思ったら、パジャマを脱がないまま洋服を重ねてきてしまったり、とにかく「もう一度やり直し!」が繰り返される。
その時には必ず、寒いの暑いの急いでいただの言い訳を言いたてる。
2.下着を替えるように言っても、なかなか替えない。かと思うと、汚れた下着の上に新しい下着をはいている。
3.着替えるように言うと「たびたび洗濯すると生地が傷む」「若い人と違って年よりは汚れないもの」とシラッという。

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4.食事の時には、「ちょっと待ってみんなで揃って食べる」ということができなくて、一人ですぐに箸をつけてしまう。もちろん、注意しても「お味を見てみた」などと平気でいう。
5.そのうえ、食べこぼしが多いし、おかずをまぜこぜにして平気な顔をして食べている。
6.おばあさんが歩いた後は、付いて回らないと水の出しっぱなし、電気のつけっぱなしが必ずある。

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エイジングライフ研究所が言うところの中等度認知症(中ボケ)の典型的な症状
(クリックしてください。詳しい解説ブログにとびます)が並べたてられています。

このレベルは一言でいうと「言い訳のうまい幼稚園児」
聞いているだけでも大変・・・・・

一方、診察室の再現です。穏やかなものです。
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おばあさん「お久しぶりでございます。お世話さまでございます。
ドクター「今日はどうしたの」
おばあさん「おかげさまで元気にやっております」
ドクター「血圧もいいようだし、腰痛はどうですか。田んぼはどうしてるの」
おばあさん「おかげさまで・・・何とかやっております」

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いくつかの質問が繰り返された後で、ドクターは「これだけしっかり受け答えができていればいいだろう。何と言っても80超えてるんだもんな。しっかりしたもんだよ」

診察室を出て、看護婦さんが小さな声で
「親を見たことがない男って所詮こんなものよ」と慰めてくれたそうです。

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認知症を症状だけで見るということをやめなくていけません。
もっともっと重い症状を訴えない限り、家族の訴えは「大げさ」とか「歳をとればそんなもの」とか挙句の果ては「関係が悪いのだろう」と決めつけられます。
何故そんなことが起きるのかというと、お年寄りの言葉の力に惑わされてしまうのです。
本当に言葉だけ聞いていると、昔のおばあさんとどこも変わらないような気になります。またそうであってほしいという気持ちも家族の側にもあるのです。

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でも、本当に答えているのか?長く使ってきた日本語が、漏れ出ているというとらえ方が適切でしょう。
その状況を把握して、きちんと判断したうえでの発言とはとても思えないのは、冒頭の家庭でのやり取りを見ればわかるでしょう。

ドクターとの応答にしても、答えているのかどうなのか???

やはり脳機能を測った上で、その人を理解する方が正確ですね。

みただけで、血圧や血糖値や体重の指導を始めることはありません。まずは計測。
脳機能も同じです。
そうすると正しく理解できるので、家でお世話している人を嘆かせてしまうことがなくなります。

 

 


「脳を使う」って?

2012年04月09日 | 前頭葉の働き

今日、友人宅でお花見を楽しみました。2012_0409_112800p1000049
満開の大島桜。

枝を大きくしならせるほどの強風にも負けず、花弁は散りません。

花が散る時はきまっているのでしょうか。

その時の話です。
「自分らしく脳をイキイキと使い続けることが、ボケ予防には最も大切・・・」といいながら、
「ところで、いま『脳を使う』って言ったけど、どういうことが『脳を使う』ことだと思いますか?」という私の確認にかぶせるように

「脳を使うって?」と質問が。

私の答えを書き出しておきましょう。

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「講演会などで、『脳を使う』ってどんなことだと思いますかって尋ねると、
1.読む。  2.書く。  3.計算する。  4.仕事する。 5.勉強する。
こういう答えもありました。6.難しいことを考える。」

「これは全部確かに脳を使ってることですが、今日このように桜を楽しめているのは何故でしょうか?」2012_0406_130500p1000047

「椅子に座っていられるのは?」

「おいしく食事が食べられるのは?」

「こうして楽しくおしゃベルができるのはなぜ?」

「言葉の意味がわかるだけで、楽しい会話になるでしょうか?」

ここまで話すと、見事な正答が!
「言葉でいくら楽しいとっても、表情や身振りや声の調子と一致していないと、会話は変なものになってしまう・・・」

2012_0406_112900p1000043そこで私。
「言葉以外の情報は、右脳と前頭葉の連携で表現するし、それを理解するときにも右脳と前頭葉が連携するものです。

つまり会話を楽しんでいる時には、左脳は言葉を、右脳は表情や口調を担当し、その状況を常に前頭葉が見張っている。
脳はクルクル働いています」

「もちろん、桜を見て感動している時もね」

「歩くということは、どのように歩くかを決めるのが前頭葉、実際に全身の筋肉に命令を出すのが運動の脳。前頭葉と運動の脳の連携で歩くことができるわけだから、歩いている間中確実に『脳を使って』ます。読んでるふり、聞いてるふりはできるけど、歩いているふりはできません」

2012_0405_140500p1000034今日いい忘れました。

「『よく遊び、よく学べ』といいますね。
遊んでいる時は右脳、学んでいる時は左脳が主に働きます。

得意な領域を決める方が、効率的ですから。

それを前頭葉が司令塔のように見張っている・・・人間だけにある素晴らしい脳の働き方です」

「昔の人は偉いですねえ。右脳左脳の働きを『よく遊び、よく学べ』と一言で表現できたのですから。前頭葉のことも一言で表現していますよ。『十人十色』」


「物忘れ 反省と工夫がきけば 年のせい」

2012年04月05日 | 正常から認知症への移り変わり

2012_0405_140500p1000035今日の伊東市。一昨日の嵐にもめげず、満開のサクラは散り急いでいません。

ところで今日のテーマですが、とっても困る表現が横行しています。「物忘れは、ボケの始まり」
この問題を考えてみましょう。

高齢者に限らず、40歳くらいからでしょうか、物忘れを自覚している人がなんと多いことでしょう。

私が講演会場で
「顔はわかってるのに、名前がどうしても思い出せない」
「冷蔵庫を開けて、何をとるのか分からない」
「二階に上がって、さて何をとりに来たのか?」
「町に出かけて、三つ用事をするつもりが一つは忘れてしまう」
「忘れては困るとメモをしても、そのメモを見ることを忘れてしまう」
「花の名前を覚えたはずなのに、後で出てこない」
「たまには、洗濯の済んだ洗濯物が洗濯機の中」
「雨が上がった時の傘ならたびたび」などといいたてた後で2012_0405_124800p1000027_4

「当てはまる人?」というと、会場全員が挙手!しかも笑いながらですよ。

そこで「『物忘れはボケの始まり』という言葉がありますが、これって記憶力の問題、物忘れしてるってことですよね?
じゃあ、ここの皆さんはみんなボケが始まってるっていうことでしょうか?」と続けます。

私たちは、言葉を理解できるから「物忘れはボケの始まり」という意味がわかります。

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わかるからこそ、失敗をするたびに人によって強弱はあっても、不安になるのですが、会場全部の人にも起きているとわかったら、「いくらなんでもこの会場の人全部がボケ始めているわけはない」と言葉の理解を超えて実態を納得でき、会場に安心感が漂います。

もちろん「『物忘れはボケの始まり』が間違いなのです」とフォローしていきます。

上のエピソードは一見「記憶力」や「物忘れ」を言っているように思いがちですが、前々回のブログ「『忘れちゃった』のではなく・・・」でもわかるように、これは前頭葉の問題と考えた方がいいのです。

前頭葉の注意集中・分配力は20代をピークにどんどん低下していきますから、年齢とともに、上のエピソードのような失敗は増えて当たり前です。

実は認知症が始まった人の物忘れと、普通に年をとった人の物忘れには決定的な違いがあります。ここさえ知っていれば、もう物忘れなんか怖くない。

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それは「前頭葉が年齢相応に働いているかどうか」という一点です。

認知症が始まったということは、前頭葉機能が正常な老化を超えて働かなくなっているということが前提にあります。
認知症は、必ずここから始まります。

エイジングライフ研究所の二段階方式を取り入れている町の保健師さんたちはもう知っていますよね?
記憶力に何の問題もないのに、前頭葉テスト不合格の人たちがいることを。
決して「物忘れはボケの始まり」ではないことを。

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前頭葉機能低下の後に、記憶力の問題が出てきます。

前頭葉は状況判断の脳ですから、認知症が始まって、記憶の問題まで出てきた人たちは、状況判断が十分にできません。

だからお手上げ。どうしていいのか打つ手が出てこないのです。パニックになることも理解してあげましょう。

失敗が明らかになると、だいたいが、つじつまがちょっと合わない言い訳をしたり、怒り始めたりするものです。(抑制も前頭葉機能)
「あんたは、まだ若いからわからないんだよ。年をとってみるとよくわかるんだから」
「そうやって、私をボケ扱いする!」

前頭葉が年齢相応に働いていると、失敗した状況に対して前頭葉は的確な指令を出してきます。
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「この際、まず謝ろう」
「必ず元の場所に戻す」
「必ずメモをとろう」
「落ち着いてもう一度探そう」
「誰かに頼んでおこう」
「あせってやらない」 
「笑い飛ばしてみせよう」などなど

つまり、「物忘れ 反省と工夫がきけば 年のせい」なのです。

反省や工夫こそ、前頭葉の機能!
やはり認知症の初期を考える時のキィーは前頭葉ということになります。

新しいブログ「認知症の早期発見、介護並びに回復と予防のシステム」の
老化の物忘れと認知症の記憶障害に詳しく説明してあります。
読んでみてください。


ボケーッと見えるー軽度認知症の人の発言

2012年04月01日 | 正常から認知症への移り変わり

エイジングライフ研究所の考え方を体系だててお知らせするために新しくブログ「認知症の早期診断、介護並びに回復と予防のシステム」を開設しました。
新規開設したブログは「じっくりと認知症について理解していこう」という方々に読んでいただきたいと願っています。
右欄からクリックしたら入れますよ。

こちらのブログの名前も一新しました。

さて改名後の記念すべき1回目です。
ボケはじめの人たちが見事に回復した時に聞く、印象的な言葉を紹介したいと思います。
(今日の写真は、新しく伊豆に開園する観光牧場伊豆ホースカントリー に下見に行って撮ってきました)

富士山が!

2012_0329_141800p1000007私たちが軽度認知症(認知症のごく初期)という時には、前頭葉機能が不合格という脳機能検査の結果が前提にあります。

その人たちに、その人にあった生活改善指導を行って、それが功を奏し(ということは生活がきちんと変化するということです。例えば毎日の散歩。趣味を始める。家事の分担。楽しいと思える時間の確保など)大体3ヶ月くらいするとだんだん脳機能が改善してきます。

そうすると、日常のちょっとした動きや発言に変化が起きてきます。  相模湾が!

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私が一番印象的だった言葉は、目の前の景色を見ながら
「こんなに、きれいとは思わなかった。
考えてみれば、以前はボケーッと見えてたもんな」

会話がはずみだしたころ
「前に比べて、何と言われているかはっきり分かる。自分が何を言いたいかもはっきりしてきた。
考えてみれば、以前はなんだか全体がボケーッとして、霧の中にいるみたいで、何がなんだかはっきりしてなかった」

説明を加えようとすれば、以下のようになります。

2012_0329_144700p1000015「前頭葉は状況を判断して、自分が何をすべきか考え、行動に移し、場合によっては軌道修正も担う。

私たちが目を覚まして生活している時は、常に前頭葉の支配下にある。

その前頭葉が居眠っているのが、軽度認知症」

ボケーッとしているのです、肝心の前頭葉が。
いわば身体は起きていても、脳は半分眠っている状態。
他ならぬ自分の前頭葉が、状況に対してピントを合わせることができないので、身の回りがボケて感じられる状態なのです

2012_0329_143000p1000013生活の様々なシーンで、見る時も、聞く時も、話す時も、何かする時も「霧の中にいるみたい」で周りが「ボケーッと」しているので、自分も「ボケーッと」しか対応できないということなのです。

前頭葉が元気を取り戻すにつれて、かかっていた薄いベールが取り払われていくという実感をこの方々は、持っています。

前頭葉の、注意集中力や分配力が働きだして、ピントが合い始めることを「霧が晴れた」とか「はっきりしてきた」と言うのです。

「以前は霧の中にいるみたいでボケーッとしていた」
認知症の初期から回復した人たちから、ほんとによく聞く言葉です。


ブログ村

http://health.blogmura.com/bokeboshi/ranking_out.html