今日の題は新聞の見出しを使っています。
記事の内容は「75歳以上の高齢ドライバーの認知機能検査を強化した改正道路交通法が施行された3月から5月末までの間に、運転免許更新時などに『認知症の恐れがある』と判定された人が11,617人(暫定値)に上る」というものでした。(6/24日経新聞)
「やっぱり…高齢者の運転は危ないものね」と反応した人がほとんどだったと思いますが、実は記事はもっと続くのです。
「改正法施行後、5月までに検査を受けたのは431,338人」ということは、認知機能検査を受けた人の2.7%ということです。
つまり、「たった、それだけ?」と私は思いましたが皆さんの感想はどうですか?
写真は楽しい動物たちのカーニバル展at伊豆高原アジサイ舎から
免許更新時に受ける人がほとんどなので、実際75歳以上の運転者は何人くらいいるのか調べてみました。
警察庁によると、2016年6月末過去最多の495万3912人。ちなみに全免許保有者に占める75歳以上の割合は6.0%ということです。20年代半ばにはマイカーブームを支えた団塊世代が75歳以上になり増加に一層拍車がかかるという情報もありました。
認知症の恐れがある高齢者が例え2.7%であったとしても、母数が大きいから、大変な数の高齢者が認知症を疑われるのに運転をしているということになります。500万人とすると135,000人ということですね。
「なぜこんなことが!」と考えられないような高齢者の運転ミスによる事故をマスコミ報道で知ると大きな不安を感じますね。
さらにそのうえに、13万人以上の認知症を疑われる高齢者が運転をしている…十分に危険な状況だということは誰でも感じることでしょう。
このブログでも何度も繰り返してきたことですが、今日私は、もっともっと注意を喚起したいと思うのです。
それは認知症をどうとらえるかということです。
認知症になったらどのようなことが運転中に起きてくるのか?
エイジングライフ研究所では、認知症の90%を占めるアルツハイマー型認知症を小ボケ(前頭葉のみ機能低下。社会生活にトラブル)中ボケ(前頭葉機能低下に加えて認知機能にも低下が始まる。家庭生活にトラブル)大ボケ(脳機能全般的な低下。世の中で認知症といわれるレベル)のように区分します。
小ボケで運転している人は多くいますし、中ボケでも運転しています。それどころか実は大ボケレベルでも運転していた例もあります。
脳機能がうまく働かなくなると、どういう運転になっていくのか詳しく書いてありますから、クリックして読んでみてください。
正常から認知症への移り変わり「スピードが遅すぎて怖いんです」
同じ期間に自主返納した人たちの数もわかりました。
自主返納は102,995件、そのうち75歳以上が半数超の56,488件だったそうです。
75歳以上で運転をしている人は約500万人。そのうちの1.1%が自主返納したことになります。
認知機能検査で不合格となった11,617人中987人が医師のアドバイスなどで免許を自主返納したことにも、記事は触れていました。母数は約43万人ですから、認知症検査を実施して自主返納者を見つけることができた割合は0.2%。
せっかく改正道路交通法にのっとって認知症検査を実施しても、認知症者の発見率が低くはありませんか?いちばん最初に私が感じた「たった、それだけ?」の感想は正しかったということになります。
認知機能検査を受けなくても本人もしくは家族が「運転するのはもうやめた方がいい」という決断を下す人が、高齢運転者の中に1.1%いたのです。
それでは、もう一つ考えてみてください。これが運転をしてもいいか、やめた方がいいかの実態を表しているでしょうか?
「どう見ても運転は無理」と周りがハラハラしているのに、免許返納に同意しない高齢者は多いものです。運転できない状態では生活そのものに大きな支障が出るという面もあり(ここは十分に検討すべき点ですが)家族は説得をあきらめるということはよく見聞きすることです。
高齢者が運転をするほど、自他ともに危険は増大するということです・・・小ボケレベルの人たちを含めると70歳代になると、だいたい30%はいます。そして80歳代で50%、90歳代になると75%というような割合で増加していきます。確かに超高齢になってなお運転を続けている人は少ないですね。
年齢相応に働いている前頭葉を持っていれば、自分の能力が運転に適しているかどうかの「判断」(これも前頭葉機能)ができますし、家族や周囲の人のアドバイスにも耳を傾けることができますから、心配し過ぎることはありません。
心配するよりも、大切なことがあります。
認知症の正体は「趣味なく生き甲斐なく交遊も楽しまない、運動もしない」ようなナイナイ尽くしの生活が続くために、ながい時間をかけて脳が廃用性の機能低下(使わないから働きが落ちる)を起すことです。
そのことを理解して、脳の老化を加速させないように、気を付けること。心配するより脳を使った楽しい生活をつづけること。小ボケになった時に起こしやすい小さな事件を見逃さないこと。もう一度貼っておきます。
正常から認知症への移り変わり「スピードが遅すぎて怖いんです」
最終的には慣れた道を、助手席に誰かをのせて、明るいうちに運転をするというような工夫を本人の前頭葉が考え付くはずです。
国も認知症の早期発見や予防を重要視しているのですが、かんじんの前頭葉に目を向けていませんので、本当の初期を見つけることができません。その結果、誰が見ても「認知症」というレベルをその対象にせざるを得ないのです。
個々人が、脳の健康を守ることに関心を持ちつつ、楽しい生活を送らなくてはいけません。
脳は正直ですから、本当に使わなくては使ったことになりません。見せかけの名刺は役に立たない例も挙げておきます。
「生涯現職」その2
交通事故防止のためのせっかくの改正道路交通法ですが。認知症の考え方から改正しなくては。
高速逆走、認知症が12%(1/29付け日経新聞)