脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

左脳の働きを失くして、右脳で感じる世界の話ージル・ボルト・テーラーさん(再掲)

2024年10月29日 | エイジングライフ研究所から
昨日新しい友人ができました。音楽家ですから右脳の話で盛り上がりジル・ボルト・テイラーさんの話になりました。
以前に書いたブログがあるとお話しましたから今朝チェックしてみたら、「脳科学者ジル・ボルト・テイラー博士の右脳ワールド」として動画から始めていた記事の動画が、再生不能になっていましたので再挑戦しました。
(クリックしてみてください動画が開きます)

以下はもともとの2016年8月の投稿です.
「右脳と左脳は得意分野が違うーその2」としてMinoru  Hanzaさんのことをブログに書いたのは、6月のことでした。そのMinoru Hanzaさんとフェイスブックともだちになったのですが、さっそくユーチューブを記事にアップしてくださいました。
私はこの「奇跡の脳」は読んでいたのですが、この20分足らずの本人が語る左脳障害の実態に圧倒されました。
いや、訂正が必要です。
左脳障害(失語症)は、様々な左脳障害の方にお会いしていますから、私にとって障害をいくつかのパタンに分けて理解することはそんなに難しいことではありません。むしろ、障害を受けた左脳を、細かく分析的に理解していくという姿勢で仕事をしてきました。
もちろん、左脳は障害があるけれども、右脳の例えば、図形の認知力、構成力、音楽関係の能力、対人関係を円滑に保つ能力をはじめとして、パズルやゲーム、たとえ右手にマヒが残っていてもさまざまな創作活動など、「できること」を実感してもらいながら脳リハビリを指導していくことは、私にとって、左脳訓練にもまして大切な仕事でした。
生活していくときには、そのようなこまごまとした「できる・できない」という観点はたしかに重要です。ですが、それは皮相的なこと。
カラスウリ満開。朝までにはしぼんでしまう…

左脳がうまく機能できなくなった時、つまり右脳で自分や自分の周囲を「わかる」ということはどういうことなのかを、右脳で生きるということはどういうことなのかを、これほど生々しく教えてもらった経験はありませんでした。私はびっくりしながら動画を見ていました。
「右脳は現在を感じ、左脳は過去と未来を考える」まではまだ想像できますが、「宇宙とつながるとか、歓喜に包まれるとか…」になると、考えたこともありませんでした。
カラスウリ今から開花

私のブログの右欄にあるカテゴリー「右脳の働き」にはいろいろな側面から右脳の大切さを書いてきたつもりです。深さが全く違いますが少し紹介しておきます。
結婚記念日―左脳と右脳のせめぎあい
月下美人も一夜花
 
本は読んでいたのです。
活字で読んだときの理解できた内容と、本人が語る中で理解していく内容の、その質の違いにも触れないわけにはいかないでしょう。
ことばで書かれたものは、読者が文字を読み、文章を理解することで 、著者の伝えたい内容を受け取っていくわけですね。
一方、話すという作業も、同じようにことばを使います。
ただし、語る人は、前頭葉と右脳が連携プレイしながら、できるだけ自分の伝えたいことが伝わるように声の抑揚、高低、大小と左脳が選択した言葉や文章を色づけていきます。このことばを彩っている語り手の右脳の思いを、聞き手は、自分の右脳を駆使してわかっていこうとするのです。
このビデオを見てもわかるように、「声」だけでなく、 表情や、体の動きからだって、訴えたいことが強調されて伝わってくるでしょう。
ことばを選択してくるという過程は左脳が機能しなければできませんから、大きく左脳障害を受けてしまった人は、言葉なしのコミュニケーションしかできません。肯くとか、首を振るとか、うれしい表情、悲しい表情、困った表情など表情で表しますね。
それから昔から言われる言葉があります。「目は口ほどにものを言い」。

学生時代に教わったことを思い出します。
人間だけが持っている言語という高等な機能は、左脳が繰るということから、左脳を「優位脳」といい、右脳を「劣位脳」という表現でした。
左脳は、デジタルな情報処理をしますから、小学校の教科で言えば、国語、算数、理科、社会のように言葉で能力が測りやすい教科の担当になります。
それに対して右脳は、音楽、図画工作、体育などのようなアナログ情報をもとにした教科を支えます。
日本の社会は、学歴主義がまかり通ってきましたから(昨今は少しは変化してきたようですが)入試に有利な左脳教科を重視してきたことは否めないでしょう。
ホラ、ここからも左脳が優位脳という考え方が社会にしみわたっているといえますね。
「左脳は仕事や勉強、右脳は趣味、遊び、人付き合い。よく遊びよく学べの遊ぶのは右脳、学ぶのは左脳」などと講演では説明しています。

昔のように定年退職したらそろそろ人生のお迎えも来るような時代から、90歳代も珍しくないような長く生きる時代になりました。脳の機能を持たせようと思ったらどうしても右脳に働いてもらわなくてはいけないのです。
むしろ、第2の人生に入ったら、仕事の左脳よりは遊びの右脳の方がはるかに大切な働きをしていきます。右脳が豊かな人たちがどんなに人生を豊かに楽しく生きているかは、周りを見渡せばいくらでも見つけることができるはずです。
今回のジル・ボルティ・テーラーさんの動画から、もっと根源的な働きを右脳は担っていることもわかりました。右脳を劣位脳というような考え方は、文字通り過去のものにしなくてはいけません。
ここまで書いて、もう一言。
ジル・ボルティ・テイラーさんの右脳に対する解説には本当に感動したのですが、右脳や左脳を駆使する脳の司令塔である「前頭葉」に対する言及がない・・・残念です。

by 高槻絹子

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