脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

続ー脳機能は悪いのに生活実態はいい

2008年10月31日 | 左脳の働き・失語症

続きです。
相談事例を整理すると、脳機能テストの結果は大ボケレベルになります。
30項目問診票によって確かめた生活実態は、①~⑩・⑪⑰⑱⑳・21と22は△という結果で、これは中ボケを意味しています。
母子ざる(幼いときは抱きしめて)
Photo_2大ボケの22「汚れた下着を着る」は最も軽い症状ですから、それがたまにしかないということからも中ボケだということは明らかです。
大ボケの21は、「家族関係がわからない」ということですが、この症状は普通はセルフケアに問題が出てきた後でおきてきます。確認してもセルフケアにはまったく問題がないというところに、答えの鍵が潜んでいます。

「脳機能が悪いのに生活実態がいい」
このような方に会ったら、一番に考えるのが「失語症」です。
聞かざる 言わざるPhoto
  見ざる(教育環境に注意)
家族の説明に間違いが生じると、家族はここまでも悪くなってしまったとショックを受けるものです。そしてその失敗は見落とされることがありません。
セルフケアにも問題がないのに、突然21に△であっても印をつける時
「家族関係がわからない」のではなく、
「家族関係はわかっていても、上手に表現できない」状態だと考えつかなくてはいけません。
それが「失語症」(マニュアルC 91p参照)です。
「何を聞かれているかがわからない」時に答えは間違ってしまいます。
「答えはわかっていても、それが口に出せない」時にも正答にはなりません。
「答えはわかっていても、口から出る言葉はまったく違うもの」の時にも間違いになります!
                                                 東照宮内五重塔Photo_5

脳機能=生活実態の前提として、脳の老化が加速した時という条件があります。
老化が加速するには「生きがいなく趣味なく運動もしない」ナイナイ尽くしの生活が継続しなくてはいけません。

もうひとつ、必ずチェックすべきこととしてMMSの下位項目の低下順の確認作業があります。
これについては、マニュアルAの巻末データとマニュアルBの第1章を参考にしてください。

神橋(シンキョウ)1

この方の場合は、前回のブログに書いたようにMMS の下位項目の低下順が通常の老化加速型とまったく違っています。
とくにMMSが低得点なのに、図形の模写がスムーズな時(立方体透視図も可のときが多い)は「失語症」の可能性が常にあります。

MMSの実施中に「失語症」と気づけたら、家族の生活実態の訴えについても「失語症」に起因するものと、通常の老化加速によるものを分けて説明が出来ますよ。
なるべく早く、検査を実施している時に「失語症」と気づけるようになりましょう。

実は、M保健師さんは「失語症」に気づいていました。
「『緩徐進行性失語』(マニュアルC94p・104p参照)ではないか?」とコメントが付いていました。
一方で生活歴の聞き取りでは、(青字は私の推理)
「H17.5.5一過性脳虚血発作(といわれたということは、後遺症はないといわれたということになる)にて救急搬送。(その後の経過を見ると、ここで左脳に障害=軽い失語症が残ってしまった
2~3年前から物忘れが目立ってきた。(失語症のことがわからないため、失敗を繰り返し小ボケに入っていった
H20より投薬開始(脳外科のDr.がボケの薬を出されたのだからやっぱりボケなんだと家族はあきらめてしまったに違いない
H20.6海馬萎縮あり。(器質と機能はイコールではないのに)」とまとめてありました。
    2007.6/21 2007.7/4のブログ「器質と機能」も参照してください。
大猷院(家光の墓所)夜叉門Photo_6
「緩徐進行性失語」は何時ということなしに段々失語症になっていくという病気です。
このケースの場合はあまりにもぴたりとタイミングよく(実際は悪いことに)脳虚血発作がおきています。
ここで「失語症」という後遺症が生じ、「失語症」が原因のトラブル続きのその後の生活が、脳機能の老化を加速させたと考えたほうが納得しやすいと思われます。

家族は「認知症」と診断され、それなりに納得していますが、それでも何か出来るのではないかと悩んでいる状態です。

ボケはあるのですが、たかだか中ボケの入り口、それよりも、
・思ったことがいえない
・単語や簡単な文なら聞き取れるが、複雑に言われるとわからなくなる
・文に書かれるとよくわかる
・右脳の機能は保たれている
という状態に置かれていることを説明しなくてはいけません。
「失語症」という言葉を伝えるのではなく(診断になるのでしてはいけません)
MMS下位項目の特徴を伝えるのです。
                                                       日光駅P1000062

M保健師さんは「そういえば、模写の時に、奥さんが『こんなに上手に描けるんだ』とびっくりされました」
「失語症があっても右脳の機能があるほうが脳リハビリは容易なのよね」という私の言葉に
「計算ドリルとかさせていたようですが、違うんですね。
パズルとかゲームとか音楽・制作・・・そうだ、散歩もジムもいいんですね。ジムの係りの人に説明します」と明るく答えてくれました。

M保健師さん、「失語症」とわかったのは立派。
二段階方式を使いこなすには脳機能と生活実態のずれ、MMS下位項目低下順、生活歴聴取そのすべてを同じ重さで考えるようにしましょう。器質検査に惑わされないようにね。
もう一息です。


脳機能は悪いのに生活実態はいい

2008年10月30日 | 左脳の働き・失語症

M保健師さんからの相談ファックスです。
「脳外科通院中だが、妻が心配している」
妻の訴えは
  ①ボーとしていて『わからない』とすぐにいう。
    ②日中は一人でいたり、ジムに行っても黙々とこなすだけ。
    ③自分から話をすることは少ない。
  ④寝ることが多い。
  ⑤食事の後片付け、洗濯物をたたむことはやってくれる。
    ⑥薬も自分で飲む。
    ⑦日常生活の介助はまったく不要。


日光東照宮Photo の陽明門

①から④までは小ボケの症状ですね。
小ボケの人が必ず『わからない』というわけではありません。投げやりな感じの人も多くいます。ちょっと場に合わないこととを口走ったりもしますね。
⑤と⑥は中ボケ後半ではないという意味があります。
⑦は大ボケを否定しています。
脳機能検査結果(MMS)は以下のとおりです。
成績、テスターが心中思うべきことの順に書いてあります。
時の見当識=0、オヤオヤ大ボケになるのかな。生活実態とのずれの原因は何?
所の見当識=1、フムフム時に連動してる
記銘=3、MMSは7点以上はありそう
計算=0、納得
想起=0、納得
命名=0、ナニナニ!これは何が起きてるの?MMSは2点以下ということじゃない!
復唱=1、復唱ができるならMMS=6以上。命名は出来てるはずなのに・・・
口頭命令=1、ウーン、珍しい反応だこと。
書字命令=1、これに合格するなら、命名は出来ているはずなのに・・・
文を書く=0、出来ないことはおかしくないが、このボーとした感じはどこから来るの?
模写=1、ナニナニ!出来なくて当たり前なのに!立方体透視図は描けるかしら?
結局MMSは8点ということになりました。
日光の滝 華厳の滝・龍頭の滝・湯滝Photo_2Photo_4 Photo_7




前頭葉テスト結果は
立方体透視図は可。それどころかさっと上手に描く。それなのに、
語想起もかなひろいテストもまったくできない。という状態でした。
脳機能検査結果は、かなひろいテスト不合格MMS=8で大ボケ状態ということになりました。
A4版用紙の使い方Img

図形の模写に関しては、わざわざ「すぐに描けた」という注釈が付いていました。そのくらいスムーズに描けたのでしょう。
日付は「妻の指示でやっと書くが『わからん』を繰り返す」という注釈付き。
検査の最中は、点数だけでなく、アンテナを精一杯立てて、被検査者を理解しようとする姿勢を忘れてはいけません。M保健師さんが、見落とさないようにと張り詰めている感じが、この短い注釈からよく伝わってきます。
A4版用紙の使い方からは、全体的にきちんとしている印象が強く感じられますね。

ブログがリッチテキストに変換できなくなりましたので、以下は続きで。


突然の右脳活性化

2008年10月28日 | 私の右脳ライフ

今日は遊びの報告です。

10月19日の話ですが「クルーザーに乗りませんか?」というお誘いを受けました。この年になるまで「クルーザー」なるものに乗ったことがありませんので、答えはもちろん「喜んで!」
陸のクルーザー整列中P1000020

青く広がる青空の下、マリーナに車を走らせながら悪い予感。
チラチラ遠くの
海に目をやると、海面に白い波が立っています。
「ウサギが走ってる」というのですが、こんなときは海は荒れているという話を聞いたことがあります。
「だめかも?」と思いながら到着。

クルーザーのオーナーが「いやあー、今日は無理ですね」とおっしゃる。
私始め友人達は「やっぱり。そうですよね」と顔を見合わせる。
空はお天気、海は大荒れP1000010 P1000004

用意周到や準備万端が前頭葉の働きならば、臨機応変も前頭葉の働きです。

「仙石原のススキが見ごろだそうですよ」という声でたちまち衆議一決。
早速行き先を箱根に変更。

仙石原のことは省略。
理由は私達がノンストップで通り抜けたからです。
そのまた理由は人がいっぱい!ススキ野原の道にラッシュアワーのように人がぎっしりなのです。ちょっと秋の風情には程遠いから・・・

そのときには、次なる転進が即座に提案されまたまた衆議一決。
目的地は「富士山」
「須走口から上がった五合目の茶店の、キノコを食べに行きましょう」
富士山五合目(どちらの表示が好きですか?あなたの右脳と前頭葉のお気に召すまま!)P1000018P1000017

肝心のキノコですが、あまりにもおいしくて(今が最盛期。登山道でも、地元の方がキノコ狩りをしていました)写真を撮り忘れました。
でも、いただいたものは忘れていません。
キノコチャーハン、キノコスパゲッティ、キノコ汁を皆さんでシェアーして大満足。
急に恥ずかしくなった富士山P1000012                     フジアザミ(花はこぶし大P1000014

目の前には箱根連山が見え、山中湖の湖面も光っていました。

芦ノ湖「山のホテル」のケーキP1000011

景色も、食事も、語らいもどれも楽しく、非日常は確かに脳を活発にする実感がありました。
毎日こんな生活はできませんが、たまには「脳の健康」と思って、積極的に遊びましょう!
そしてその実感をベースにして、
「遊びなんか」とか「遊んでなんか居られない」という働きづめの高齢者を遊びに引っ張り出してください。


続ー越後路で出会った人たち

2008年10月21日 | かくしゃくヒント

今回のブログは松代で出会った人たちです。
まず、松代駅で迎えてくださったのは、I口課長補佐。

I口課長補佐の名刺Img (実物はもっときれいです)
名刺はどのように選ぶのか聞き忘れましたが、I口課長補佐の感性がこの名刺の図柄を選んだのでしょうから、楽しい一時になりそうと、名刺を見ながら考えました。

松代地区はとても広く、また山の中ですから、集落が同じように見えて方向音痴になりそうでしたが、I口課長補佐の案内は、いかにも「この町が好き。こんないい所がある。こんなに努力している」という気持ちが伝わってくるようでした。
松之山のH原さん。飛渡のO津さん。皆さんに共通するものですね。


高齢者の方は運転もされない方が多いという話と、全般的な高齢化(高齢化率は40%を越えています)に加えて、冬場の雪・・・
12月末から3月までの3ヶ月間をどうするか。車中の話はともするとそこに落ち着くのでした。

第3セクター経営の柴峠温泉を通った時に送迎車とすれ違いました。
「無料の日を設けてもあんまり利用者がいなかった」といわれてひらめきました。
モデル地区を選定して、一番暇な曜日に、送迎つきでボケ予防教室を実施する。保健師さんは脳機能テストをやって生活指導。右脳刺激の講師(例えば、十日町市飛渡の伊藤三佳さん)を呼んで皆で楽しむ。それにプラスして温泉!

「自由参加にするので『家にお風呂があるのに、無駄』という発想になる。『ボケ予防に、脳の健康のために、温泉に行って脳の活性化体験をしてこよう』と発想の転換をさせてあげなくては。そのためにはモデル地区の選定に注意が必要ですね」などと会話は弾み、保健師さんとお話しているような気持ちにさせられました。

きっと、K井保健師さんの仕事の内容を理解して下さっているとうれしくなりました。

I口課長補佐。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

ひまわりパン屋 宇田川浩子さんP1000006

町内めぐりのとき、「あれっ。ガレージでパン屋さん!」と停めていただきました。
地元で生まれ、東京へ。でも老後はふるさとで暮らしたいとU
ターン。
おいしいパンを作っているという自信にあふれ、明るく、若々しい宇田川さん。
取材されることも多いと聞きました。

「雪はね、大変ですよ、そりゃあ。でも、冬の後には春が来るの。物事は考え方ひとつ。楽しくやらなくっちゃ」とこの笑顔です。(60歳はとうに超えているんですって!)

「毎日楽しくて仕方がない」 K堺さんP1000001

講演の後で、お話しました。
同居しているお母さんが、かくしゃくそのものということをお話してくれました。
「やはり講演のとおりできることはするし、じっとしていることはない。手芸が好きなので、作品ができると私(K堺さん)が、工夫して飾ったり、ほめたりするととても喜ぶ。それに友達が多い」
かくしゃく老人が目に見えるようです。
K堺さんご本人も、「孫が双子だったので育児のお手伝いがあって定年を残してやめ、4年間留守をしていたんです。その間お母さんが家事全般を引き受けてくれたこともお母さんのためによかったと思ってます。頼りにされるって、脳のためにいいですよね。帰ってからは、誘われるからほとんど男の人たちばかりの会合でも参加するんです。やってみると楽しいことって多いですね。そうなんです、私忙しくしてるんです」
なんと役場の元職員。
「公務員が全員ボケるわけではありません。退職後どんな暮らしをするかが鍵なのですよ」と講演会で言っていてよかった・・・

安吾賞を受賞されたカールベンクスさん                 竹所地区で再生された民家P1000008 
P1000007 ドイツ人の建築家にもご紹介いただきました。カールベンクスさん。
朽ちてしまおうとしている民家を再生させるお仕事をやっています。
1軒をそのまま生かして、ここ松代で、再生させるのがポリシーだそうです。
最初に再生した自宅(双鶴居)P1000009_3

松代に来てそのまま定住を決意したと聞きましたが
「ここは雪は多いですが、寒くはありません。ドイツのほうがもっとずっと寒いです。四季折々なんともいえない、魅力がありますよ」
「ごく普通の家を、材を生かして、住みやすい家にできたらうれしいですね」
「解体して並べてみないとわからない部分もあるし、ひらめきもあるのです」

双鶴居はピンクの外壁。中はモダンですが、箱階段なども取り入れ居心地よさそうな独特の雰囲気でした。
ベンガラの家、レンガの家、黄色の家など車中からですがチラッと見せていただきました。

豊かな右脳に拍手(ちょっとうらやましい)!

今日の4人の共通点は、人生肯定的、明るく楽しい、感性豊かでしょうか。


越後路で出会った人たち

2008年10月20日 | かくしゃくヒント

前回のブログ、十日町市松代への行きかたです。
まず伊豆高原ー熱海ー東京と行って、東京から上越新幹線で越後湯沢まで行きます。それから、ほくほく線に乗り換えてほくほく線まつだいという経路をとります。
P1000003_2

「まつだい駅に14:30到着(ということは、越後湯沢発13:42の電車に乗るということ)」といわれましたから、例によって私の右脳刺激を図ることにしました。
伊豆高原を6:50発の電車に乗って、東京駅で8:52発のMaxときに乗り換えると越後湯沢に10:29に着きます。なんとそこで3時間13分の自由時間が捻出できるのです。

実は前回も同じ時間でしたから、このようにして「あるぷの里」(そのときの花々を乗せたブログをよかったらもう一度眺めてください)でブルーポピーなどの高山植物を見たのです。

今回は駅前の観光案内所で「一番いいお風呂はどこですか?」と尋ねると
「川端康成が雪国を書いたときに入っていた温泉山の湯がいいでしょう」と地図をくれました。徒歩15分なのでちょっとさびれた温泉街を歩いて到着。
先客がお2人。一人は地元のおばあさんでもう80歳はとうに過ぎた感じ。口には出しませんでしたが、「千と千尋の神隠し」の湯ばあばを髣髴とさせるものがありました。
もう一人は、隣町から「今日は畑の世話をタンとしたもんで、ここの温泉好きだから、まあご褒美に来たんだよ」と話してくれた60代後半の人でした。
「こうして温泉に来て、知らない人ともお話して。こんなのもボケ予防だと思っとるんだけど」
「お金がありゃあ働かんでいいけど、小さいお金しかないもんでやっぱり働かん訳にはいかん。これもまた、ボケ予防だねえ」

お風呂から上がると、雨。
当然のように駅前のお蕎麦屋さんまで車で送ってくれました。
一緒にお昼を誘うと
「ご飯だけはいっぱいある。なんといっても本場魚沼産コシヒカリだからな!」
と、見事に、さわやかに断られました。

この人をボケ予防講演会の講師にしたいくらいでした。

Hegi1 越後のそばはふのりでつなぐために滑らかな舌触りのおいしいそばです。
新そばをいただきました。
でもまだ時間があると思い、滝沢公園まで歩きました。

公園の看板に「大ぜん・小ぜんの滝」の説明があり、徒歩15分とのことです。
往復して30分、ウーン残り時間10分・・・でも、恋がかなう滝なのですからやっぱり行かなくっちゃあ!
滝に着くと定年後という様子のご夫婦がそれぞれ写真機と格闘中。聞けば四国から車で旅行中とのことです。山の湯のことを教えてあげ始めると、二人とも真剣そのもの。これは必ず立ち寄ってくれるなあと挨拶もそこそこに私は引き返します。
山道を下っていくと、確かに公園の手前に車は止めてありました。
P1000010 P1000011

こういう生き方。いいですね。
旅はいろんな人に会えて、いろんな生き方を教えてもらうという楽しみがあります。


十日町市松代のピカピカさん

2008年10月20日 | かくしゃくヒント

十日町市は1市4町の合併でしたから、中条(まだブログを始めていませんでした)・松之山(高齢化率43%)・川西(ひだまりプール)の各支所を回り、7月の十日町市飛渡地区に続いて、今回は最後の松代地区でした。
会場は可動式の椅子が出てくるタイプで80席だそうです。
開演時刻が近づいて、係りの人たちの動きがあわただしくなっていきます。
「椅子をまだまだ出さなきゃあ」
「前から座ってもらって」
「あと、受付中なのは何人?」
結局のところ187人の出席だったそうです。会場いっぱいでした。
会場は後ろまでいっぱい。                             係りの人は忙しい。P1000003  
P1000004

講演会は、とても盛り上がり、帰り際にお礼を言ってくださる方も多かったですし、中年の方は、口々に「私はお花が教えられます」とか「今ボランティアやっています」と言ってくださいました。

質疑応答の時には
「ボケ予防教室を開きましょう」という心強い発言も聞かれました。
講演中にわたしは「保健師さんに脳のイキイキ度チェックをしてもらいましょう」と声をかけるのですが
「つまり、K井(松代の保健師さんの名前)病院に相談するということですね」という確認意見が出されました。
「そのとおりです」と答えながら、人口3000人余の松代地区でのK井保健師さんの細やかな長年にわたる活動が胸に迫りました。
合併によって、保健師さんが大移動する新市町もありますが、一言で言って「もったいない・・・」

ところで、講演に先立って恒例の勉強会をしました。
お一人来て頂いて、脳機能検査をK井保健師さんが実施、私が生活指導します。                               T沢さん(76歳、女性)P1000005
検査の結果は、MMS29点。かなひろいテスト何と正答数23内容把握可。
さらにA4版の白紙の使い方から
「どちらかというと、T沢家はあなたで持ったでしょ?いわばかかあ天下?」
「おじいさんが、弱くて私ががんばってきたんです。でもおじいさんも舅さん姑さんも皆優しい人たちでしたから、がんばるのはつらくはなかった。当たり前です」
「楽しみは、近所の人との語らい。遊びに誘われると行くし、老人会もシシトウ生産部の集まりもみんな楽しみ」
ウーン、なるほど。
私は、こういう勉強会で正常の方に出会ったのはほんとに久しぶりでしたからうれしくなって、ついでに家族の説明を求めてみました。
子供と配偶者の名前と住所、完璧。
孫の名前と年齢、完璧。
結婚している孫の配偶者とその子の名前までも完璧!
よく見ると、髪はきれいにセットされています。
午後の講演会場で、挨拶をしてくださったのでちょっと伺ってみると
「昨日美容院に行ったんです」
このうれしそうな、どこか初々しいお顔を見てください。

越後湯沢 不動滝(大ぜん)P1000012_2

講演に先立って、恒例の勉強会が開かれました。
通所介護施設「さわやか」のO保さんから、5年間継続通所中のケースが出されました。
なんと5年前小ボケで発見。通所を開始しました。
2年前に大たい骨頚部骨折で入院したのですが、「さわやか」に又行きたいと言って、退院後申請していた介護保険を取りやめ通所再開。現在は、ぎりぎり正常域にまで回復していました。
検査はかかわりはじめと5年後の今回の2度しか行われていませんでしたが、
数値とともに見ていくことで
「よくなってるとは思ってたのですが、やっぱりそう考えていいのですね」とO保さんが緊張を解かして、笑顔いっぱいになったのが、私までもうれしくさせてくれました。
退院後、介護保険を使い始めていた場合と、今回のようにデイサービスを利用する場合との介護費用の差を考えてください。そのうえ改善させたのですから、もっと胸を張っていいことだと思いますよ。
「確かに元気になっています。ここまで来たらお世話役を買って出て、もっともっと元気になりましょう」と伝えてもらうことにしました。
前頭葉機能が、正常域に回復してくると世話役ができるのです。
越後湯沢 金剛滝(小ぜん)P1000013
もう1例は、前回のブログに書いたのと同じ側頭葉性健忘のケースでした。
2年前は、かなひろいテスト正常、想起ができない状態でした。
その半年後には、かなひろいテスト正答数が一桁にまで低下してしまい、MMSの低下もあって中ボケに入ろうかという所までいってしまいました。
(この低下はあまりにも急激過ぎますから、もしかしたら、ナイナイ尽くしの生活に入るきっかけが加味されたことも考えなくてはいけません)
さらに悪いことには、現在膝の手術のために入院中。
「当然のことながら退院後には、さらに低下が予想されます。入院による低下は回復可能ですが、根本的な側頭葉性健忘に対する生活の方法が身についていませんから、次第に低下がはっきりしてくることと思われます」と解説をしていたら、崎さんから発言がありました。
「前回のブログを見て、以前かかわった側頭葉性健忘の方を訪問して脳機能検査をしてきました。ぜんぜん落ちていません!」
「ノートを利用して記憶力障害を克服する(マニュアルC110P参照) ことはできなかったのですが、この人は、周りの人に全部話して周りの人がきちんとカバーしているのです。こんなやり方もあるのですね」

こういうふうに話題が進んでいくときに、二段階方式を使えるようになると自分のことのように喜ぶことができます。そのくらい脳機能テストはその人をわからせてくれるのです。


MMSだと中ボケなのに・・・側頭葉性健忘

2008年10月10日 | 側頭葉性健忘症

昨日、面白い相談がありました。
N市のY本保健師さんから、「判定困難」というFAXでした。72歳の女性で検査結果は

    MMS18点(時の見当識=3.粗点22点)
    かなひろいテスト判定値37(30,4,可)
    30項目は1・2・9・10
    生活歴聴取は、ターニングポイント4~5年前とすれば一応あり

質問は

    ①MMSは中ボケなのに、なぜかなひろいテストがここまでできるか
    ②正常レベル対象の認知症予防教室に来て支障はないか
京料理(吹き寄せ)P1000001

最初に結論を説明しておきましょう。

このように、かなひろいテストが見事に正常域でありながら、MMSが不合格になる場合、まず考えることは「側頭葉性健忘」です。マニュアルC110Pを参照してください。

京料理(刺身)P1000002

マニュアルCの該当箇所に目を通してもらってから電話をしてもらいました。

その時点で、Y本さんと私の間には、被検査者の方に対する共通理解が生まれていました。
ここが二段階方式のすごいところです。
検査結果を解釈できるようになると、目の前にその人が居るような気がしてきます。
京料理P1000003 (焼きナスにとろろとジュレとトンブリ掛け)

「このケースの場合は、まず表情がある。動作がきびきびしている。おしゃれ。話によどみがなく、感情も豊かで気持ちがよく伝わる」とここまでは、私の解釈はパーフェクト。

電話の向こうで、Y本保健師さんが「そうなんです」を繰り返してくれます。

京料理P1000004 (焼き物)

「覚えられないとか忘れて困るとか心から訴えなかったですか」
これははずれました。
側頭葉性健忘の人は、ほんとに心底困った感じで、上記のことを訴えることがほとんどなのです。

いわない方も居るんですね、文字通り十人十色ということでしょう。
京料理(しんじょ)P1000006

「とにかく、この人がボケてるなんてとても信じられない!ということでしょ。どうしてMMSがこんなにも点が低いのか、狐につままれたみたいよね」

Y本保健師さんが力を込めて「そうなんです。どうしてもボケてるように思えなかったんですが」
京料理(デザート)P1000009

それが側頭葉性健忘なのです。
普通のボケは、まず前頭葉機能の低下から始まります。
それから、MMSで測る脳の後半領域にも機能低下が起きてきます。その時最初に低下するのが記憶力。
前頭葉機能に着目しないと、最初に低下する機能は記憶力ということになってしまいます。
だから「物忘れはボケの始まり」といわれるのです。

このケースのA4版用紙 見事ですね!Img_2

普通にボケている人は、前頭葉機能がすでに低下してしまっていますから、表情もないし、動作もモタモタしてるし、話の焦点は合わないし、創意工夫もありません。

そもそも、前頭葉機能が正常なボケってないんですよ。

付録:質問②の回答は「参加できます。ただしお世話役の方にでも事情をよく説明してあげる必要はあります」といいかけたら
「丁度いい方が居るんです。同じ側頭葉性健忘の方。しっかりされてますから」
今度は私がびっくりする番でした。
「もしかしてN沢さんのケース?そうだとしたら。もう3年も前の方でしょ。よくもっていらっしゃるわね。N沢さんが側頭葉性健忘に気づいてあげて、生活指導したから今があるのよ」
「N沢さんによろしく」といいながら、あの時のN沢さんとのやり取りを思い出して、二段階方式を継続することの意義をしっかり感じた私でした。

 


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