友人から息せき切った感じで、「週刊ポスト」の表紙写真付きメールが到着しました。表紙を見て納得。
「認知症『世界初の治療薬』がいよいよ認可秒読み!」もちろんDマガジンで読みましたよ。
今回の認知症薬認可については、製薬業界で話題のニュースがよくわかるAnswers News(2019年)に詳しく掲載されていますから、興味がある人は読んでみてください。いったん取り下げられたものが再提出されたのです。
散歩道で発見!
2019年の出来事です。
3月には、バイオジェンとエーザイが、治療薬候補「アデュカヌマブ」の治験を中止すると発表しました。
7月には「認知機能の指標で悪化が確認された」ということで、ノバルティス社などは、3段階ある臨床試験の最終段階、第3相試験に入っていたアルツハイマー病治療薬候補「CNP520」の治験中止を発表した。
「認知症『世界初の治療薬』がいよいよ認可秒読み!」もちろんDマガジンで読みましたよ。
今回の認知症薬認可については、製薬業界で話題のニュースがよくわかるAnswers News(2019年)に詳しく掲載されていますから、興味がある人は読んでみてください。いったん取り下げられたものが再提出されたのです。
散歩道で発見!
2019年の出来事です。
3月には、バイオジェンとエーザイが、治療薬候補「アデュカヌマブ」の治験を中止すると発表しました。
7月には「認知機能の指標で悪化が確認された」ということで、ノバルティス社などは、3段階ある臨床試験の最終段階、第3相試験に入っていたアルツハイマー病治療薬候補「CNP520」の治験中止を発表した。
世界最大の製薬会社ロシェも「クレネズバム」から撤退しています。
イーライリリーは、もう5年ほど前でしょうか「ソラネズマブ」 撤退を表明しました。30億ドルに上る研究費用、研究者解雇という痛みを伴って。最近ではもっと早期なら使えるかもしれないということで再挑戦しているようですが。
ちょっと検索をかけてみてください。いくつでもアルツハイマー型認知症の治療薬の臨床試験が頓挫してしまったという記事が見つかります。
アルツハイマー相次ぐ開発失敗。それでもアミロイドβを諦め切れない製薬業界(2018年)
大体このような論調が展開されています。
イーライリリーは、もう5年ほど前でしょうか「ソラネズマブ」 撤退を表明しました。30億ドルに上る研究費用、研究者解雇という痛みを伴って。最近ではもっと早期なら使えるかもしれないということで再挑戦しているようですが。
ちょっと検索をかけてみてください。いくつでもアルツハイマー型認知症の治療薬の臨床試験が頓挫してしまったという記事が見つかります。
アルツハイマー相次ぐ開発失敗。それでもアミロイドβを諦め切れない製薬業界(2018年)
大体このような論調が展開されています。
「多くの製薬企業は、アミロイドβ仮説に基づいて新薬開発を進めています。アミロイドβは40残基前後の短いタンパク質で、これが脳内に蓄積して老人斑を形成し、神経細胞の機能障害を誘発していると考えられています。そこで、タンパク質からアミロイドβを切り出す酵素であるセクレターゼを阻害する手法や、アミロイドβに結合する抗体を投与して老人斑を除去する手法などが試されてきました。 しかし、これらの臨床試験結果は、死屍累々というべき状況です」
とうとう、こんな説まで言われるようになってきています。
「アミロイドβ仮説自体を疑う声も強まっています。アミロイドβが蓄積しているのは、アルツハイマー症の原因ではなく結果なのではないのか、認知機能が失われる原因は別にあるのではないか」
二段階方式では、アルツハイマー型認知症を脳の使い方が足りない(特に前頭葉の出番がなくなる単調な生活になる)ことで起きてくる、生活習慣病というとらえ方をします。第二の人生に入った高齢者の話です。使わないことで廃用性の機能低下が起きてくるという考え方です。
アミロイドβにしろ、タウ蛋白にしろ、基本は加齢に伴って生じてくる、そして多分使わなければ、その発生はよりたくさんになる。
アミロイドβが犯人ではなく、結果。
製薬業界は、アミロイドβ犯人説でこれほど行き詰っているのに、このくらいのコペルニクス的転回ができないのでしょうか!
ニセモノ。
30年以上も前のことになりますが、脳外科、のち高齢者脳精密検査外来で働いていたころのことを思い出しました。(以下、昔話は痴呆やボケを使用します)
当時は精神科における老人性痴呆診断に、CTを使い始めたころでした。
厚労省資料にあたって我が国のCT保有台数を調べてみました。1981年1693台、2015年約12000台。2016年の調査では、人口100万人当たりの台数は日本は世界一で101.3台。二位のオーストラリアは53.7台。三位のアメリカ43.5台。
そのCT画像から、多発梗塞巣が目立てば血管性痴呆。萎縮の方が目立てばアルツハイマー型痴呆といわれていました。
脳卒中の既往がある人も当然血管性痴呆とカウントされていましたから、結果日本だけが世界で突出して血管性痴呆が多く70パーセントということになってしまっていました。
さいわいにも血管性痴呆は脳卒中を防ぐことで、予防ができる。高血圧や高脂血症や動脈硬化をコントロールしましょう。糖尿病も予防しましょう。この流れは現在まで続いています。
【血管性認知症についてちょっと解説します。
このような考え方をする専門家はほとんどいないことをまず断っておきます。
認知症というのは、いったん完成された脳機能(ということは知的障害の人は当てはまらないということ)が、全般的に障害されて、家庭生活や社会生活に支障が起きる状態と定義されています。
とうとう、こんな説まで言われるようになってきています。
「アミロイドβ仮説自体を疑う声も強まっています。アミロイドβが蓄積しているのは、アルツハイマー症の原因ではなく結果なのではないのか、認知機能が失われる原因は別にあるのではないか」
二段階方式では、アルツハイマー型認知症を脳の使い方が足りない(特に前頭葉の出番がなくなる単調な生活になる)ことで起きてくる、生活習慣病というとらえ方をします。第二の人生に入った高齢者の話です。使わないことで廃用性の機能低下が起きてくるという考え方です。
アミロイドβにしろ、タウ蛋白にしろ、基本は加齢に伴って生じてくる、そして多分使わなければ、その発生はよりたくさんになる。
アミロイドβが犯人ではなく、結果。
製薬業界は、アミロイドβ犯人説でこれほど行き詰っているのに、このくらいのコペルニクス的転回ができないのでしょうか!
ニセモノ。
30年以上も前のことになりますが、脳外科、のち高齢者脳精密検査外来で働いていたころのことを思い出しました。(以下、昔話は痴呆やボケを使用します)
当時は精神科における老人性痴呆診断に、CTを使い始めたころでした。
厚労省資料にあたって我が国のCT保有台数を調べてみました。1981年1693台、2015年約12000台。2016年の調査では、人口100万人当たりの台数は日本は世界一で101.3台。二位のオーストラリアは53.7台。三位のアメリカ43.5台。
そのCT画像から、多発梗塞巣が目立てば血管性痴呆。萎縮の方が目立てばアルツハイマー型痴呆といわれていました。
脳卒中の既往がある人も当然血管性痴呆とカウントされていましたから、結果日本だけが世界で突出して血管性痴呆が多く70パーセントということになってしまっていました。
さいわいにも血管性痴呆は脳卒中を防ぐことで、予防ができる。高血圧や高脂血症や動脈硬化をコントロールしましょう。糖尿病も予防しましょう。この流れは現在まで続いています。
【血管性認知症についてちょっと解説します。
このような考え方をする専門家はほとんどいないことをまず断っておきます。
認知症というのは、いったん完成された脳機能(ということは知的障害の人は当てはまらないということ)が、全般的に障害されて、家庭生活や社会生活に支障が起きる状態と定義されています。
脳卒中はほとんどが左右脳の片側に起こります。そして障害が確定するとその部位が担当する機能に後遺症が残ります。これは後遺症であって認知症が発症したわけではありません。
脳が全般的に障害されていないことに注目してください。専門家の中には卒中から半年くらい遅れて認知症になると明言される方もいます。その通り!
後遺症に負けて、ナイナイ尽くしの生活を続けるうちに、病気ではない方の脳機能も廃用性機能低下を起こしてしまう。そうすると脳全般の障害が完成してしまうことになるでしょう?これは直接的な脳卒中のせいではありませんよね。
脳卒中を起こしても、たとえ車いすになっても、生き生きとした生活を続けている人たちがいます。この人たちは卒中が起きた部分の後遺症を抱えながらも、その他の脳を病前と変わらずに使い続けているということなのです。このようなしごく初歩的なことすら、明確に区分けることをしていません。
後遺症そのものが認知症の症状をきたす脳卒中もあることはありますが、数%程度でしょう】
一方アルツハイマー型痴呆は、原因がわからない以上予防はない。割合が少なくて幸いだったというふうに言っている専門家もいました。
その後アミロイドβやタウ蛋白犯人説が浮上。最近になって血液検査でアミロイドβ量が測定できることになりましたが、それまでは死後の剖検で確定していたのです。そして現在に至り、一部ではアミロイドβ犯人説そのものが違うかもという段階になってきたわけですね。
ニセモノ。
後遺症に負けて、ナイナイ尽くしの生活を続けるうちに、病気ではない方の脳機能も廃用性機能低下を起こしてしまう。そうすると脳全般の障害が完成してしまうことになるでしょう?これは直接的な脳卒中のせいではありませんよね。
脳卒中を起こしても、たとえ車いすになっても、生き生きとした生活を続けている人たちがいます。この人たちは卒中が起きた部分の後遺症を抱えながらも、その他の脳を病前と変わらずに使い続けているということなのです。このようなしごく初歩的なことすら、明確に区分けることをしていません。
後遺症そのものが認知症の症状をきたす脳卒中もあることはありますが、数%程度でしょう】
一方アルツハイマー型痴呆は、原因がわからない以上予防はない。割合が少なくて幸いだったというふうに言っている専門家もいました。
その後アミロイドβやタウ蛋白犯人説が浮上。最近になって血液検査でアミロイドβ量が測定できることになりましたが、それまでは死後の剖検で確定していたのです。そして現在に至り、一部ではアミロイドβ犯人説そのものが違うかもという段階になってきたわけですね。
ニセモノ。
当時は、おじいさんやおばあさんが「ボケたかも」と思ったら、精神科にかかりました。現在はずいぶん変わってきましたが、当時は受診そのものの抵抗が大きくて、家族にとってあまりにも困った症状、例えば徘徊、昼夜逆転、粗暴行為、弄便などの不潔行為などなどが出てしまってからようやく受診するという状態でした。
つまり、精神科のドクターが診察室で出会う「ボケの患者さん」は、重度の人たちばかり。
それで、話は戻ります。
CT を見て多発梗塞巣が見えれば、こんなとんでもない困った症状を引き起こすのはこの多発梗塞巣が犯人だと思っても自然なことかもわかりません。
多発梗塞巣よりも萎縮が目立てば、こんな脳になったからあのような症状が発現したんだと思うことも、わかる気がします。
つまり、精神科のドクターが診察室で出会う「ボケの患者さん」は、重度の人たちばかり。
それで、話は戻ります。
CT を見て多発梗塞巣が見えれば、こんなとんでもない困った症状を引き起こすのはこの多発梗塞巣が犯人だと思っても自然なことかもわかりません。
多発梗塞巣よりも萎縮が目立てば、こんな脳になったからあのような症状が発現したんだと思うことも、わかる気がします。
閑話休題。
日本で一番最初の脳ドックは、新さっぽろ脳外科病院です。1988年の未破裂動脈瘤を早期に発見するためでした。この病院は学会でも活発に発表されていたことを覚えています。
脳ドックを持っている病院サイドの第一目的は、未破裂動脈瘤や無症候性脳梗塞や血管狭窄などの早期発見でした。(実は見つかったらどうする?という大きな問題もあります)
ところが受診する人の中には、特に高齢者は「ボケてるかどうか調べてほしい」という希望がたくさんあったと聞いています。
CTでは脳の形は見えても、働きは見えません。MRIでも同じです。
そのためには脳機能検査が必要ですが、認知症の早期発見には不可欠の前頭葉検査がないという現状は今でもあまり変化がありません。そこは少し置いておくことにします。
とても興味深いことが脳ドックから見つかってきました。
「ボケてるかどうかチェックしてほしい」と脳ドックを受診する高齢者は、ボケていないということは想定できると思います。むしろかくしゃくとした人たちが、お墨付きをもらいたくて受診したといえるくらいです。
ところが、高齢のその人たちの脳を詳細に調べた結果、多発性脳梗塞も脳の萎縮も見つかってきたのです。
私がその脳ドックの担当者だったら「脳には年齢相応の変化はありますが、『ボケてるかどうかチェックしたい』そこまでおっしゃられるからこそ、ボケてはいらっしゃいません(といえると思います)」後半はモゴモゴというでしょうけどね。だってちゃんと脳機能検査していませんから。
日本で一番最初の脳ドックは、新さっぽろ脳外科病院です。1988年の未破裂動脈瘤を早期に発見するためでした。この病院は学会でも活発に発表されていたことを覚えています。
脳ドックを持っている病院サイドの第一目的は、未破裂動脈瘤や無症候性脳梗塞や血管狭窄などの早期発見でした。(実は見つかったらどうする?という大きな問題もあります)
ところが受診する人の中には、特に高齢者は「ボケてるかどうか調べてほしい」という希望がたくさんあったと聞いています。
CTでは脳の形は見えても、働きは見えません。MRIでも同じです。
そのためには脳機能検査が必要ですが、認知症の早期発見には不可欠の前頭葉検査がないという現状は今でもあまり変化がありません。そこは少し置いておくことにします。
とても興味深いことが脳ドックから見つかってきました。
「ボケてるかどうかチェックしてほしい」と脳ドックを受診する高齢者は、ボケていないということは想定できると思います。むしろかくしゃくとした人たちが、お墨付きをもらいたくて受診したといえるくらいです。
ところが、高齢のその人たちの脳を詳細に調べた結果、多発性脳梗塞も脳の萎縮も見つかってきたのです。
私がその脳ドックの担当者だったら「脳には年齢相応の変化はありますが、『ボケてるかどうかチェックしたい』そこまでおっしゃられるからこそ、ボケてはいらっしゃいません(といえると思います)」後半はモゴモゴというでしょうけどね。だってちゃんと脳機能検査していませんから。
実は、私たちにとっては当然の結末でした。
当時の日本の脳外科で、あれほど脳機能検査をする病院は他にはなかったと思います。術前検査、後遺症の判定、術後の経時的フォロー。
その中で分かったことは、高齢者の脳には、肌の衰えのように加齢変化がみられるということでした。いいかえれば多発梗塞巣や萎縮があっても脳機能は正常という高齢者がたくさんいたのです。これは脳機能検査がほとんど悉皆に行われていたからこそ言えることだと思います。
「ボケていないのに、ボケの原因とされている多発梗塞や脳の萎縮がある」ということが、脳ドック業界から大きな声にならなかったのは、本当に残念です。と書きながら脳機能検査なしで診察だけでは、ボケていないという印象しかないので主張しにくかったのかもしれないと擁護してあげたくもなります。
それからもう30年以上もたっているのですから、認知症がどのように進行していくのかということを、専門家たちはよく見てほしいと願います。
その時に脳機能という物差しを持てば、特に前頭葉機能検査という武器があれば、正常から徐々に進行していく認知症を理解できることになるのです。
その先には…治療薬はあるはずもありません。
以上、アルツハイマー型認知症についての話でした。
当時の日本の脳外科で、あれほど脳機能検査をする病院は他にはなかったと思います。術前検査、後遺症の判定、術後の経時的フォロー。
その中で分かったことは、高齢者の脳には、肌の衰えのように加齢変化がみられるということでした。いいかえれば多発梗塞巣や萎縮があっても脳機能は正常という高齢者がたくさんいたのです。これは脳機能検査がほとんど悉皆に行われていたからこそ言えることだと思います。
「ボケていないのに、ボケの原因とされている多発梗塞や脳の萎縮がある」ということが、脳ドック業界から大きな声にならなかったのは、本当に残念です。と書きながら脳機能検査なしで診察だけでは、ボケていないという印象しかないので主張しにくかったのかもしれないと擁護してあげたくもなります。
それからもう30年以上もたっているのですから、認知症がどのように進行していくのかということを、専門家たちはよく見てほしいと願います。
その時に脳機能という物差しを持てば、特に前頭葉機能検査という武器があれば、正常から徐々に進行していく認知症を理解できることになるのです。
その先には…治療薬はあるはずもありません。
以上、アルツハイマー型認知症についての話でした。