ユングの共時性!と思うようなことが時々起こります。
「なごみの部屋」の我妻さんが、脳機能が正常な高齢者に対する認知症予防こそ最も重要であること
「なごみの部屋」の我妻さんが、脳機能が正常な高齢者に対する認知症予防こそ最も重要であること
を訴えたばかりだというタイミングで、今度は行政側で働いている保健師さんから、同じような趣旨の発言が届きました。
彼女は定年を迎えた後も、その経歴を生かして非常勤で仕事を続けているのです。もともと保健師さんは対象は赤ちゃんから高齢者まで、種々の障がい者の方々の支援、検診や相談事業の手伝い、何よりその対象者の生活を見ることができる力を持っていますから、定年後も地域で活動を続けている人たちが多いのです。待遇はボランティアのようでしょうけれど、むしろ「お役に立てるなら」と自分の生きがいとして働いている保健師さんを何人も知っています。
彼女は定年を迎えた後も、その経歴を生かして非常勤で仕事を続けているのです。もともと保健師さんは対象は赤ちゃんから高齢者まで、種々の障がい者の方々の支援、検診や相談事業の手伝い、何よりその対象者の生活を見ることができる力を持っていますから、定年後も地域で活動を続けている人たちが多いのです。待遇はボランティアのようでしょうけれど、むしろ「お役に立てるなら」と自分の生きがいとして働いている保健師さんを何人も知っています。
写真は先日の横浜
さて、彼女の言い分です。
その前に彼女が今働いている「市」も御多分に漏れず平成の大合併で合併しました。一つの市を中心に5町村の合併でした。もちろん対等合併ではあるのですが、人の心までが対等かというとなかなか難しいところがあります。二段階方式を導入して着々と成果を上げている町もあれば、全く知らない町もあり、何より中核になる「市」の理解がないままに合併したので、難しいところもあったと思います。
かといって悲観論ばかりお伝えするつもりもなく、二段階方式を導入する良さも継続していますのでそこをお伝えしたいと思います。
合併前に二段階方式を導入してかなり長い間「ボケ予防教室」を実施してきた、もともと所属してきた町での取り組みです。その町は大きく分けると7地区あり、そこにそれぞれ数行政区があるということです。そこで彼女が関わっているのは、いわゆるサロンといわれる事業です。これは介護保険の対象外の高齢者への働きかけですから、行政が実施していることをまず評価しなければいけませんね。(全国的にはサロンは社会福祉協議会が実施していることがほとんどです。だいたいが高齢者をお客様扱いしていることが多いという印象を持っています。長寿科学振興財団は高齢者サロンは認知症予防につながると明言していますが、ここに活動内容例が書かれていて、逆に後述のようにサロン運営のやりにくさをもたらしているようです)
「全地区一応サロンがあります。午前中の1時間半なのですが約40か所。私たちが行くので継続できているなあと思われるところももちろんあるのですが、活動が活発なところも、私たちが行かないときでもサロンの他に自主活動をしているところまであるんです」なんとなくそう伝えてくれる声は弾んで聞こえましたよ。
「だいたい、各サロンは年に8回~12回、開催するのです」
さあ、ここからがこの「市」の取り組みの良いところです。それは4人のスタッフを雇いあげて、各サロンに派遣しているということです。保健師さんや看護師さん、その他の方々もいるのかもしれません。
その保健師さんは9時~12時で月に10日働いているそうで、他の方たちも10日だとすると、それぞれの教室に一人の指導員が参加できているということになりますね。
その人たちの給料は、職歴や資格などで一律ではないようですが、パートタイムの雇上げですから、おおざっぱに言えば3時間で4,000円くらいかと…
その人たちの給料は、職歴や資格などで一律ではないようですが、パートタイムの雇上げですから、おおざっぱに言えば3時間で4,000円くらいかと…
そうすると1か月に必要な人件費は4000円×10日×4人=160,000円。
1年間だと160,000円×12月≒200万円。
なごみの部屋の記事の時に試算しましたが
「一人の人が介護度1にならなければ、介護支給限度額は約17万円/月ですから、年間でいえば約200万円が自由に使えます。たったお一人、要介護1になることを1年先送りにしただけで捻出できる200万円」
「一人の人が介護度1にならなければ、介護支給限度額は約17万円/月ですから、年間でいえば約200万円が自由に使えます。たったお一人、要介護1になることを1年先送りにしただけで捻出できる200万円」
サロン参加者の総数を聞きませんでしたが、サロンに継続的に参加している人たちは楽しいから継続できている方が大多数、なんとなく付き合いでという方もいらっしゃるでしょうが、それでもその人たちが、行くところもなく家で一人で暮らし続けていることを想像すると、サロンに参加することで認知症が先送りになるだろうということは想像できるかと思います。
認知症の原因をアミロイドベータやタウタンパクや脳の萎縮に求めていたら、サロン参加で認知症が先送りになることは考えつきもしないと思います。高齢者の実感はサロンがあることが生きる支えになっているのです。
「サロンに来れば、楽しく生活ができる。これでボケはしない」この実感を満たしてあげてみましょう!
実はこの保健師さんは「合併前に私が中心になって二段階方式による『ボケ予防教室』を実施して、確かな手ごたえ(実は脳機能テストによる客観的な評価まである)があったからこそ、この事業の必要性や重要性がわかり、間違いなく認知症予防につながる自信もあるんです」と言っていました。
「市」の体制としては、有償でスタッフを確保しているところは評価できるところです。
ただ問題もちらほら…
まず多分根本的な理解不足だと思いますが、アクティビティの内容に規制が多い。モノづくりに偏らないように。1.5時間の時間内に完成できるものにするように。体操ゲームなど常識的なものを取り入れて。
まず多分根本的な理解不足だと思いますが、アクティビティの内容に規制が多い。モノづくりに偏らないように。1.5時間の時間内に完成できるものにするように。体操ゲームなど常識的なものを取り入れて。
一方、保健師さんは「1年かけて完成させるようなものを取り入れたいんです。規制をかいくぐってお手玉作りをやりました。数珠玉を栽培、収穫して、お手玉をみんなで制作。そしてみんなで遊んで楽しむ。その流れの中で自主的な活動が引き出せて、スタッフはお手伝いする体制ができるんです」確かに…
数市町村で新市になったのだから、市として公平にサロンはどこにも展開しているでしょう。このような経験に裏付けられた認知症予防をやっている町と、通り一遍のサロン活動に終始している町で差が出ているはずです。
例えば、介護申請率の違い。高齢者の介護度の違いなど、すぐにその差が出てくると思われます。
「介護保険課に『この地域の差をチェックしてください』と要求しても、『プログラムが市全体のまとめになっていて、細かい設定ができない』って言われるんですよ」
「地域ごとの集計ができないなんて!差がはっきり出すぎてちょっと困るってことはないのかしら?」と私。
「ですよね~ちょっと悔しい」と彼女。
最後のやり取りは、無責任な井戸端会議ですが、私は経験を積んだ保健師さんの自信に触れることができて、とてもうれしかったです。
認知症予防はできるだけ早く、正常者から始めた方が効率的。体験がある「なごみの部屋」の我妻さんも、このベテラン保健師さんも同じ結論でした。
by 高槻絹子