脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症予防の対費用効果を考える

2023年12月16日 | 認知症予防教室
ユングの共時性!と思うようなことが時々起こります。
「なごみの部屋」の我妻さんが、脳機能が正常な高齢者に対する認知症予防こそ最も重要であること
を訴えたばかりだというタイミングで、今度は行政側で働いている保健師さんから、同じような趣旨の発言が届きました。
彼女は定年を迎えた後も、その経歴を生かして非常勤で仕事を続けているのです。もともと保健師さんは対象は赤ちゃんから高齢者まで、種々の障がい者の方々の支援、検診や相談事業の手伝い、何よりその対象者の生活を見ることができる力を持っていますから、定年後も地域で活動を続けている人たちが多いのです。待遇はボランティアのようでしょうけれど、むしろ「お役に立てるなら」と自分の生きがいとして働いている保健師さんを何人も知っています。
写真は先日の横浜

さて、彼女の言い分です。
その前に彼女が今働いている「市」も御多分に漏れず平成の大合併で合併しました。一つの市を中心に5町村の合併でした。もちろん対等合併ではあるのですが、人の心までが対等かというとなかなか難しいところがあります。二段階方式を導入して着々と成果を上げている町もあれば、全く知らない町もあり、何より中核になる「市」の理解がないままに合併したので、難しいところもあったと思います。
かといって悲観論ばかりお伝えするつもりもなく、二段階方式を導入する良さも継続していますのでそこをお伝えしたいと思います。

合併前に二段階方式を導入してかなり長い間「ボケ予防教室」を実施してきた、もともと所属してきた町での取り組みです。その町は大きく分けると7地区あり、そこにそれぞれ数行政区があるということです。そこで彼女が関わっているのは、いわゆるサロンといわれる事業です。これは介護保険の対象外の高齢者への働きかけですから、行政が実施していることをまず評価しなければいけませんね。(全国的にはサロンは社会福祉協議会が実施していることがほとんどです。だいたいが高齢者をお客様扱いしていることが多いという印象を持っています。長寿科学振興財団は高齢者サロンは認知症予防につながると明言していますが、ここに活動内容例が書かれていて、逆に後述のようにサロン運営のやりにくさをもたらしているようです)

「全地区一応サロンがあります。午前中の1時間半なのですが約40か所。私たちが行くので継続できているなあと思われるところももちろんあるのですが、活動が活発なところも、私たちが行かないときでもサロンの他に自主活動をしているところまであるんです」なんとなくそう伝えてくれる声は弾んで聞こえましたよ。
「だいたい、各サロンは年に8回~12回、開催するのです」
さあ、ここからがこの「市」の取り組みの良いところです。それは4人のスタッフを雇いあげて、各サロンに派遣しているということです。保健師さんや看護師さん、その他の方々もいるのかもしれません。
その保健師さんは9時~12時で月に10日働いているそうで、他の方たちも10日だとすると、それぞれの教室に一人の指導員が参加できているということになりますね。
その人たちの給料は、職歴や資格などで一律ではないようですが、パートタイムの雇上げですから、おおざっぱに言えば3時間で4,000円くらいかと…

そうすると1か月に必要な人件費は4000円×10日×4人=160,000円。
1年間だと160,000円×12月≒200万円。
なごみの部屋の記事の時に試算しましたが
「一人の人が介護度1にならなければ、介護支給限度額は約17万円/月ですから、年間でいえば約200万円が自由に使えます。たったお一人、要介護1になることを1年先送りにしただけで捻出できる200万円」

サロン参加者の総数を聞きませんでしたが、サロンに継続的に参加している人たちは楽しいから継続できている方が大多数、なんとなく付き合いでという方もいらっしゃるでしょうが、それでもその人たちが、行くところもなく家で一人で暮らし続けていることを想像すると、サロンに参加することで認知症が先送りになるだろうということは想像できるかと思います。

認知症の原因をアミロイドベータやタウタンパクや脳の萎縮に求めていたら、サロン参加で認知症が先送りになることは考えつきもしないと思います。高齢者の実感はサロンがあることが生きる支えになっているのです。
「サロンに来れば、楽しく生活ができる。これでボケはしない」この実感を満たしてあげてみましょう!

実はこの保健師さんは「合併前に私が中心になって二段階方式による『ボケ予防教室』を実施して、確かな手ごたえ(実は脳機能テストによる客観的な評価まである)があったからこそ、この事業の必要性や重要性がわかり、間違いなく認知症予防につながる自信もあるんです」と言っていました。

「市」の体制としては、有償でスタッフを確保しているところは評価できるところです。
ただ問題もちらほら…
まず多分根本的な理解不足だと思いますが、アクティビティの内容に規制が多い。モノづくりに偏らないように。1.5時間の時間内に完成できるものにするように。体操ゲームなど常識的なものを取り入れて。
一方、保健師さんは「1年かけて完成させるようなものを取り入れたいんです。規制をかいくぐってお手玉作りをやりました。数珠玉を栽培、収穫して、お手玉をみんなで制作。そしてみんなで遊んで楽しむ。その流れの中で自主的な活動が引き出せて、スタッフはお手伝いする体制ができるんです」確かに…

数市町村で新市になったのだから、市として公平にサロンはどこにも展開しているでしょう。このような経験に裏付けられた認知症予防をやっている町と、通り一遍のサロン活動に終始している町で差が出ているはずです。
例えば、介護申請率の違い。高齢者の介護度の違いなど、すぐにその差が出てくると思われます。
「介護保険課に『この地域の差をチェックしてください』と要求しても、『プログラムが市全体のまとめになっていて、細かい設定ができない』って言われるんですよ」
「地域ごとの集計ができないなんて!差がはっきり出すぎてちょっと困るってことはないのかしら?」と私。
「ですよね~ちょっと悔しい」と彼女。

最後のやり取りは、無責任な井戸端会議ですが、私は経験を積んだ保健師さんの自信に触れることができて、とてもうれしかったです。
認知症予防はできるだけ早く、正常者から始めた方が効率的。体験がある「なごみの部屋」の我妻さんも、このベテラン保健師さんも同じ結論でした。
by 高槻絹子



年忘れ横浜散策

2023年12月12日 | 私の右脳ライフ
国立新美術館で、親しい人の作品展示があるという情報が入ったので即上京を決め、横浜に住んでいる大学時代の友人にこの話をしたら「じゃあ、私も」とすぐこの話に乗ってくれました。年齢の割にノリがいい私たちです。

久しぶりの国立新美術館。私はだいたいいつも展覧会は一人で見るのですが、気の合う友達と一緒に回る展覧会もいいものです。小さな声で感想など言いながら会場を回り、とても満足できた一時でした。
水引細工。

日本刺繍。

ビスクドール。

伊勢型紙。

翌日は「横浜で遊びましょう!」ということになったので、新しくできたヒルトン横浜に泊まることになりました。アンパンマンミュージアムを抜けてその先、Kアリーナの手前にありました。
私は孫が大きいのでアンパンマンミュージアムへは行かずじまい、彼女は数年前にお孫さんと一緒に行ったとか。ちょっとしたことで人生の体験は変わってくるものですね。


横浜についたときにはもう黄昏。伊豆に住んでいる私がついつい都会の夜景に声をあげてしまうのを友人がきっとほほえましく思ってくれたと思うことにします。

チェックインして「このビール飲んでみたかったの」という友人に誘われてIPA oneを二人で飲みました。「今、地ビールが流行ってるでしょう?これはその中でも好評なのよ」
IPAを検索してみましたとも。India Pale Ale。インディアといってもインド発祥ではなく、18世紀イギリスからインドにビールを持っていくにあたって、ポップを大量に使ってアルコール度数を高めたビールを作り出したことが始まりとのことです。伊豆にもいくつかの地ビールがありますし、全国的にも私でも知っている地ビールもあります。この横浜産のIPA oneは、フルーティさが際立っているビールでした。

みなとみらいの朝景色もまた都会的なものでした。



Kアリーナ前には早朝から、イベントスタッフの人たちの姿が見え、後で聞いてみたら「ゲームのイベント」とか。
私たちの計画は「三渓園に出かけて名残のもみじをみましょう」ということだけ決まっていましたが、いろいろネットで検索してみると、宮川香山 眞葛ミュージアムがホテル横を流れる帷子川の対岸にあることがわかり、さっそく予定変更。ホテルからはみなとみらい大橋を渡って行くのが一番いい方法で、10分程度で到着しそうです。

みなとみらい大橋の右の丸い建物がKアリーナ。高いビルがヒルトン横浜です。
ふつうのビルの一階に突然出現。

内容は圧倒されました。宮川香山は、開国したばかり、1871年明治4年に京都眞葛が原から輸出向けの陶磁器を作るために横浜へ移り眞葛窯を築窯。1876年明治4年のフィラデルフィア万国博覧会に出品された作品は絶賛されたといいます。説明を読みながらこれほどの芸術品を作る技術があるということを諸外国に知らしめた爽快さが迫ってきました。外国では日本を代表するとか国宝級だとか高い評価を受け、作品のほとんどが外国へ行ってしまったために国内ではあまり知られていないという説明がありました。この技術レベルに到達するまでの努力はいかほどのものだったでしょう。









友人は明治期の女子教育が専門分野なので、当時の社会情勢などの解説付きで作品鑑賞ができました。
宮川香山 眞葛ミュージアムの最寄駅は横浜駅。そごうデパートを抜けていくのですがそごうの大きさに感嘆しながら、進むとYCAT発見。国内出張が多かった時に何度もここまで来たものです。ただし方向は今日と逆で横浜駅からYCATに向かいます。その時にはこの先そごうがこんなにも広いことも、さらにその先には宮川香山 眞葛ミュージアムがあることも全く知りませんでした。
人生はその時々の状況で、興味の対象が変わっていくものですね。というよりも興味や好奇心を持っていれば、その時々に可能な世界が繰り広げられるといった方が正確でしょう。興味や好奇心は元気のある前頭葉が働く結果です。前頭葉は大切です!
JRで根岸駅へ。そこからバス。バス停からは少し歩きますが、気持ちの良い小春日和の天気に助けられてあっという間に三渓園正門。

横浜在住とそれ以外の人は入場料金も違いますが、なんと入場券も違う。
園内に入ると、抜けるような青空、緑と錦が入り混じった景色、水面にはいろいろな鳥たちが。ほどほどの人出も行楽気分をあげてくれます。
花嫁姿の人が目立ち、最近は結婚写真の前撮りをこういうオープンエアーのセンスにあったところで撮るみたいですね。私たちにはとてもいい点景になってくれました。


三渓園を作ったのは原三渓。原三渓は実業家であり茶人。くらいしか知らずに、園内にあった三渓園資料館に立ち寄ってみました。



原三渓の出生から始まる人となりや、事業内容は富岡製糸場を中心とした製糸業、またその関連の輸出業で財を成し、その後美術品の収集、茶道に造詣を深めたという成功物語を読みながら歩を進めていくと、関東大震災に遭遇したと!
横浜復興のために政府の援助も取り付け、もちろん私財を投じて、予想を超える速さで横浜復興、生糸の輸出再開を実現させたくだりからは、最近言われる「利他主義」と共通する精神を感じることができました。
よりよい社会をつくるということは、特に上に立つ指導者には必須の精神だと思いました。







それから、私たちは「三渓園に行ったら、お団子を食べるのよ」という三崎在住、年に何度も三渓園に行くという知人のおすすめに従って、お団子を食べました。



美術を堪能し、日本庭園の秋を満喫し、舌まで満足させた私たちは「思いがけない年忘れイベントになったこと」と満ち足りた二日間に感謝したのでした。
by 高槻絹子


「正常高齢者の認知症予防こそ大切」と「なごみの部屋」から

2023年12月01日 | 米沢市「なごみの部屋」の実践
「なごみの部屋」の実践についてはこのブログでも何度も報告してきました。
(カテゴリー「米沢市『なごみの部屋』の実践」にまとめてあります)
「なごみの部屋」の我妻さんとは、遠いのでなかなか会うことが叶わず、時々電話でお話をするのです。今日はその記録ですが、本来茶飲み話のようなものですから、少々の誤解や間違いがある可能性は十分にありますから、ご容赦ください。

「ちょっと話を聞いてもらっていいですか?」
「もちろん!どうぞ」
「Y市の介護予防事業の認定に漏れたんです。
たしかに、たくさんの事業所が名乗りを上げていたことはわかるんですけど。『なごみの部屋』の実践を承知してくれているはずなんですが。そこが残念というか、なぜ?というか…なんです
我妻さんの複雑な思いが、これだけのやりとりで私にはよく身に染みてきますが、ちょっと解説を。

初発記事は2005年11月。もう一度読んでみて我妻さんの思いがぶれていないことを確認でき、そしてその信念に驚きました。18年も前に我妻さんは、私にこう言われたんです。
「本当に正常な高齢者に対する『ボケ予防』をやりたい。それは本人の希望だろうし、国の財政を考えてもどうしても必要なこと」
そういう思いをもって、エイジングライフ研究所の二段階方式を導入されました。エイジングライフ研究所は「ボケ予防」は収入に結びつかないので市町村のやることだと思っていました。経営的に見れば、人件費を始め持ち出しに決まっています。
けれども、我妻さんには信念があるのです。この話のすぐ後からできることを着々を積み上げてこられた途中報告が2008年の次の記事です。

「なごみの部屋」予防活動で事業拡大

印象的な言葉を取り出してみます。
「介護保険発足時に、老健から退所を迫られた方々のためのデイサービスつきアパートを始めました。ディサービスの希望が多くデイを増やし、訪問看護の要望にも応え、要介護の方のお世話をしていくうちに、エイジングライフ研究所二段階方式に出会い、認知症は生き方の問題だということが納得できました。認知症のかたがたには相応の生活歴があるものです。
2005年から「かくしゃくの会」の活動が始まり今に至っています。
そして今年から機能訓練事業所も開設しました。
今思うことは、正常な方々を如何に落とさずに人生を全うしていただけるかということです。イメージ的にはディつきのケアハウスです。
その結果、介護保険外で実践している事業分野は以下の通り。

かくしゃくの会:正常者に対する脳と体の健康教室
なごみーる:障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業所兼自立訓練事業所(洋菓子店)
フィットネスルーム:中高年向けのフィットネスケア

いよいよ本題です。
2005年から始まって2008年に継続していた「かくしゃくの会」は、なんとそれから15年後の現在も「スマイルの会」と名前こそ変わったものの継続中!
現状の介護保険制度下では、要支援の人はデイに行けるし、それ以上に重症度が重くなると種々のサービスが受けられるけれども、自立の人はどこにも行けないということをご存じですか?

「なごみの部屋」には「ボランティアでもいいから通えるところを作ってほしい」という脳機能が正常な高齢者の切実な声が途切れることなく届くそうです。つまり介護保険対象外のその人たちは、元気ですが楽しみのない単調な生活を送るしかない現状を「これではボケてしまう。これでは良くない」と思っているのです。経験もしたことがない趣味のサークルに参加するのは、ちょっとハードルが高いのですね。(以下の写真はニューヨークランプミュージアム)


「介護保険は自立支援を目指していると聞いたけど…」と思った人もいるかも知れませんが、厚生労働省の考え方は「自立支援介護とは、介護を必要としている高齢者がその方らしく生活できるように、介護サービス事業所が支援を行うこと」 なのです。
アミロイドベータやタウ蛋白や脳の萎縮に、認知症の原因を求めていたら、認知症予防はなく「飲んだら治る薬ってあるのだろうか」と疑問に思いながらも頼るしかない。
一方で「ボランティアでもいいから出かける場所が欲しい」と願う元気な(正確に言えば、脳機能が正常な)高齢者が感じている、生活者の実感はどこから来るのでしょうか?
世の中の人たちは「ああいうタイプの人ってボケやすい。ボケない人はこういうタイプ」と口にします。具体的には「第二の人生に入って、何とはいえないけど生きがいを持ってイキイキ生きている人はボケない。趣味も生きがいも交遊もなく運動もしないような人はボケる」と言い換えられます。

補足すると、エイジングライフ研究所は認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症についてこう説明します。「脳機能にも正常老化はあること。使わなければその老化が早まった結果(廃用性機能低下)発症してくる。当然徐々に進行していく特徴がある。つまり認知症は脳の使い方に問題がある生活習慣病である」。
それならば、より若い脳機能が正常であるときから、脳の老化が加速しないような生活を心がけるべきでしょう。若ければ若いほど「認知症予防」は効果的です。年齢が若くなくても、脳機能をよく使う生活、このブログで繰り返し話している前頭葉機能の出番がある生活を続けることが「認知症予防」。
「ボランティアでもいいから出かける場所が欲しい」このように訴えることができる高齢者は、認知症予防の本質をついているということなのですね。
我妻さんは18年も前から「脳が元気な方を元気なままに。元気な方に対する働きかけの方が、実践できる内容も豊かなら、効果も大きい」と実践を続けて、この信念は間違いなく確信になっていると思います。

今回外れた理由をいくつか解説してくれました。
・介護予防の中には運動が入らないといけない。
・認知症の講話が必要。
・カリキュラムの料理・お菓子・パン作りは問題。ゲームの方が望ましい。

この選で認められると、月1度6か月で11万円支給がある。つまり1回教室を開くと約17,000円の支給。
この金額的なことよりも「なごみの部屋」がずっとやってきた認知症予防の真髄(認知症になってしまってから改善を図るよりも、正常者への働きかけこそが有効。スマイルの会や独自の認知症カフェの取り組みから明らか)を理解してもらえないという思いが、悔しい、悲しい、残念、なぜ?などの思いを引き起こしたのだと思います。

「『スマイルの会』は補助がなくてもやると決めたんです。格別文句はありません。『かくしゃくの会』だって始まりは持ち出しだったのだし。コロナのせいでここ2~3年通常通りにはやれていなかったのですが、細々でもやってきた延長です。すご〜くうまくやって、ほんとに大切な良いモデル!って言われたい気持ちもあるんですけど(笑)」
「実は先週一回目をやりました。なごみ庵(洋菓子店ナゴミールの後に、和菓子店なごみ庵も開店営業中)から菓子職人さんに来てもらって上生菓子を作ったんですよ。白あんと黒あんと用意して、色粉は赤・黄・青でその色だけでなく、紫・橙・緑を作ったりするところから歓声が上がって皆さんとっても楽しまれました。ありきたりのゲームじゃあない、こんなことを喜ぶ人たちに、こんな場所を提供したいという思いは的中でした。単なる茶巾絞りかと思ったのですが、さすが職人さん。写真を見てください!

当日参加費として1000円いただきましたが、上生菓子6個お土産。職人さんが用意してくれた味噌饅頭でお茶をして。『すごく良かった!次回が楽しみ』と口々に言われていました。脳の元気がなくなっている人たちでは、こういうことはできません。あくまでもその人のできることを楽しんでもらうことしかできないのですから」
聞きなれない人には、たとえ重度の認知症でもできるだけ同じような働きかけはしてあげるべきではないのか!という思いがわくのではないでしょうか?
2005年11月の我妻さんの言葉です。
「設立当時のいろいろな事情から『楽しく安全に過ごしてもらう』ことをテーマにしてメニューなし、いやがることはしない、楽しいことだけにしていくディサービスがありました。数年たつうちに低下傾向がはっきりしてきたこともエイジングライフ研究所二段階方式導入のきっかけのひとつだったんですが、脳機能テストを通して客観的に見ることができ、今では、『予防や改善』を目的にメニューを組んでスタッフが積極的に引っ張るディサービスを全箇所でやっています」 
あくまでも、客観的な脳機能をまず理解して、それに応じたメニューを作らなければ絵に描いた餅。レベルに合わせてあげることこそ、その人を大切にしてあげることになるのです。

お話を聞きながらこんなことを思っていました。
「この企画を実現するために、講師にかかる費用(今回は自社内の人材だから可能だった)、スタッフの費用、会場使用料、周知のための費用…一体いくら持ち出さないといけないのでしょうか。
国がこういう取り組みを認知症予防と位置付けて予算配分してくれたら、その対費用効果は計り知れないものになります。
介護保険でいえば介護度5の人に支払われる支給限度額は1ヶ月約36万2千円(個人負担はその1〜2割。特に高額所得者は3割)。その他の費用も当然あるので結局1年間でいえば、給付金と個人負担金と合わせると一人が必要とする金額は500万円から600万円と言われています。その合計が2021年で13兆円。文字通り天文学的数字。0をつけるとるとこうなります。
13,000,000,000,000円です…

いま重度の人だって、その人らしく普通に生活していた時があります。その時に脳の健康維持のための施策があって、誰でもそこに行って楽しい時間を過ごすことが生活の一部になるような、そういう社会が必要です。
そのためにかかる費用はいくらでしょうか?
我妻さんが孤軍奮闘するためには、普通の事業所なら無視できないようなお金が必要ですが、国レベルで考えてください。

一人の人が介護度1にならなければ、介護支給限度額は約17万円/月ですから、年間でいえば約200万円が自由に使えます。たったお一人、要介護1になることを1年先送りにしただけで捻出できる200万円。
200万円のうちの個人負担額を除いても、今回の給付額1.7万円なら約100ヶ所に支給できます。我妻さんのスマイルの会のような教室を運営するのにどのくらいかかるのでしょうね?10倍かかっても10ヶ所の教室で、正常者への予防の働きかけは可能ということになります。
脳が元気な人たちが集まれば、参加者が役割分担できるからお世話役はほとんどいりません。指導者も先生の一番弟子のような立場の方にお安く指導して貰えば良いと思います。その方の生きがいになって、国全体の介護負担を少なくする活動ですから。
会場は公民館や小学校の空き教室など。
そうそう、受益者負担で材料費は徴収すれば良いと思います。
すぐにも実現できそうとワクワクしてきます。
「認知症予防は正常者から」です。
卵が先か鶏が先か考えるよりもはるかに簡単な事実でしょう。


でも、世の中の権威ある人たちは、認知症が脳の生活習慣病という認識がありません…そのギャップをどう埋めるかが大問題として横たわっています。

スマイルの会の様子をご紹介します。私も参加したくなりました。







by 高槻絹子






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