こんばんは
最近はいろいろ忙しく、時間がたつのが早いように感じる毎日です。ただ、考えていることができているかというとそうでもないようなところがあります。一人一人の良いところ、考えを発展させて、より良いものにしていくためには話し合うしかないのですが、なかなか全員の時間があるときというのはないもので・・・。
まぁ、今日に関しては昨日の疲れが残っているというのもあるのでしょうけど。
本日はこちらの記事を紹介します。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120331-OYT1T00351.htm
【ワシントン=山田哲朗】米国立衛生研究所(NIH)の諮問機関「生物安全保障のための科学諮問委員会」(NSABB)は30日、「テロに悪用される恐れがある」として米英科学誌に一部掲載を見合わせるよう求めていた二つの学術論文について、全面公開を認める勧告を公表した。
世界保健機関(WHO)の会議が今年2月、全面公開が有益とする見解を示したのを受け、従来の方針を撤回した。
論文は近く米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーに掲載され、研究者らが1月に自主的に決めた60日間の研究凍結措置も解除される見通しだ。
論文は、鳥インフルエンザウイルス「H5N1」が変異して実験動物のフェレットで空気感染するようになることを報告したもの。東京大医科学研究所の河岡義裕教授と、オランダの研究者がそれぞれ、ネイチャーとサイエンスに投稿したが、同委員会が昨年12月、研究内容の詳細を伏せるよう両誌に異例の勧告をした。
同委員会が30日公表した声明によると、両論文に関しては、テロ悪用の危険性より新型インフルエンザ対策などに役立つ公衆衛生上の利点が大きいと判断した。論文は、鳥インフルエンザが人同士で感染する新型インフルエンザに変化する仕組みを把握するのに役立つ内容で、ワクチンや治療薬の開発にもつながる。
論文のウイルスは、多量に接種しない限りフェレットが死なないなど、危険性が低いと判断された。河岡教授はネイチャーに「委員会の判断は、成果の公衆衛生上の意義をよく理解した結果」とコメントした。
一連の掲載見合わせで、日米欧などの科学界は反発。ジュネーブで2月に開かれたWHO専門家会議では、当面の掲載見合わせは支持したが、「成果を共有する利益の方が大きい」として、悪用を防ぐ措置を講じた上で全面公開することが望ましいとの見解をまとめた。
(2012年3月31日14時04分 読売新聞)
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この内容に関しての論説がこちら
木村良一 デュアルユースなのか
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120402/bdy12040208140002-n1.htm
2012.4.2 08:10
民生と軍事の両方に利用できるものを「デュアルユース」と呼ぶ。先月、これをテーマにした日本学術会議の委員会を傍聴取材してきた。
委員会でひとつの事例として取り上げられたのが、鳥インフルエンザウイルス「H5N1」研究だった。まず、その問題の経緯から説明しよう。
昨年末、H5N1研究の2つの論文の科学雑誌への掲載に対し、米国政府が「テロリストが生物兵器に悪用しかねない」とストップをかけた。これをきっかけにテロ防止か、それとも治療に役立てるべきかというデュアルユース問題が浮上した。
鳥インフルエンザウイルスH5N1は中国や東南アジアを中心に感染が広がり、その毒性は強く、人にも感染して60%の人が命を落としている。論文はともにこのH5N1ウイルスの遺伝子がどう変われば、人の新型インフルエンザに変異するかを動物実験で解明した内容だ。
米国政府の掲載ストップ要請に、論文を書いた東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らは「論文を全て公開し、世界の研究者の知恵を借りて治療薬やワクチンの開発を進めるべきだ」と反論してきた。WHO(世界保健機関)も「一定の条件がクリアされるまで全文掲載は差し控えたいが、論文の全文公開は有益だ」と勧告した。
一般的にデュアルユース問題は科学者だけでなく安全保障の専門家も交えて広く議論し、科学研究とテロ対策とを両立させていくことが求められる。しかしながら今回のH5N1研究をデュアルユース問題として扱うことにはいささか疑問がある。
兵器に使われる病原体は通常、炭疽(たんそ)菌のように扱いが簡単で有効なワクチンや治療薬がなければならない。だが、インフルエンザウイルスは空気感染や飛沫(ひまつ)感染でウイルスをばらまくときに感染してしまう危険性が高いうえ、ワクチンで感染を完璧に防ぐことも難しい。
エボラ出血熱並みの毒性もウイルスの性質上、鳥のウイルスから人のウイルスに変異する過程で弱まる傾向がある。論文のもう一人の著者、オランダ・エラスムス医療センターのフーシェ博士が、実験で作られたH5N1ウイルスの毒性について「感染で人が死んでいくようなことは起きない」と説明している。河岡教授も日本学術会議の委員会で「3年前の新型と同等かそれ以下」と弱毒であることを明らかにした。つまりインフルエンザウイルスは、バイオテロには向かない病原体なのだ。デュアルユース問題の中でH5N1研究を論じるにはこの点に注意する必要がある。
それではなぜ、米国政府がこの時期に「テロに悪用される恐れがある」と論文掲載にストップをかけたのだろうか。何かの思惑があったのか。
関係者の間には「支持率が低下しているオバマ政権が、11月の大統領選を控え、国民の人気を少しでも得ようと、過剰に反応したらしい」との見方が広がっている。その見方を裏付けるかのように米国政府は再検討して最近、論文の掲載を認めた。(論説委員)
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ここに書かれている通りでテロに使用するためには基本的には「自らを守る術」がなくては話にならない。それが基本です。まぁ、炭疽が扱いが簡単で治療しやすいかは微妙なところですが。炭疽の致死率とかを知って書いているのかしらとちょっと思います。
- 皮膚炭疽症
- 炭疽菌が顔、首、手などの皮膚の小さな傷から侵入すると、1 - 7日後ニキビ様の小さな掻痒性または無痛性の丘疹が現れ、周囲には発疹と浮腫が現われる。丘疹は崩壊し潰瘍となり黒いかさぶたを形成し、高熱が出る。炭疽症の大部分はこれに含まれる。未治療の場合の致死率は10 - 20%
- 肺炭疽症
- 炭疽菌が空気とともに肺に吸入された場合、インフルエンザ様症状を示し高熱、咳、膿や血痰を出し呼吸困難となる。未治療での致死率は90%以上
- 腸炭疽症
- 炭疽菌が食物とともに口から入ると、頸部のリンパ節炎、腹水貯留、高熱、嘔吐、腹痛、膿や血の混じった下痢がおこる。致死率は25 - 50%
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ちなみにこの話を聞いたときは「ウイルスを変化させる技法」が悪用されるのを恐れたからだと思い、納得しました。僕だったら公表はワクチンの開発後にやるだろうなぁ・・・と。テロリストが仮にテロに使用するにも、ワクチンを先に作ってしまえば効果はなくなるので。
両方をおさえられたらどうしようもないですが。ワクチンをまず作る時間、それが公表までの時間かな~と思っていましたがどうなのでしょうね。
と、僕のような考えの人間もいるわけですが。僕はこの記事を読む前に感じたのは「アメリカがワクチンを先に開発して、知的財産権確保」…というようなストーリーでした。ある程度めどがついたあたりで公表させて、公表したデータを用いてワクチンを先に作り上げたことにしてしまえば…という可能性ですね。
そこまであくどくないかもしれませんけど。
インフルエンザウイルスがバイオテロに向くか向かないかは別として、わざわざ強毒性ウイルスを作成する暇があったらエボラを持ち込む努力をするかもしれません。そっちの方が簡単です。NBC兵器とは言いますが、生物剤は「安く」作れるのが特徴なのにわざわざお金をかけて作ってもねぇ・・・と。
そういうことをアメリカの偉い人たちが考え付かなかったとは思いませんので、やはりワクチンを先に作っているのかなぁ・・・・。政治的なものであれば「過剰反応」してテロとの戦いをイメージさせたという可能性もありますが、選挙前に認めてしまったら意味がないような気もします。
アメリカがこの後「ワクチン」を出したりしたら、作っていたのかなぁ・・・。
そういうことを思いました。